第5回〜俺が少しだけ主人公感を出した件について〜
フード野郎と一緒に謎の武装集団に取り囲まれてしまう俺。
狙いは俺ではないのは明白なのだが……。
「さぁ、一緒に来てもらいましょうか」
「嫌です……わたくしは己に課せられた使命を果たします⁉︎」
なんか、とんでもなく修羅場な予感……。
……はぁ〜しゃあないか。
「あー⁉︎ あそこにいるのはなんだ⁉︎」
いままで蚊帳の外にされていた俺が突然大声を上げ、明後日の方向を指差す。
すると、まんまと俺の作戦に吊られた武装野郎共が一斉に明後日の方向を向き、一瞬だか隙ができる。
「おいっ、逃げるぞ!」
そのチャンスを見逃さず、俺はフード野郎の手を握り、わずかに空いた包囲網の穴から脱出する。
「貴様っ⁉︎」
しかし、一番近くにいた武装男が俺の逃走をいち早く察知し反射的に手を伸ばしてくる。
その手は空を掴むことはなかったが、俺が手を引くフード野郎のフードを大きく手繰り寄せ、そのまま物を剥ぎ取ってしまった。
ふわり、と金色のなにかが舞う。
それはフードの中に隠されていた真実の姿で長い長い金色の髪だった。
勇者の剣を手にした者の正体はなんと女、しかも俺と同い年くらいかそれよりも若い女の子だった!
いや、声の細さからなんとなく察しはついていたから、驚き慄くなんてことはしないけどそれでもある程度の衝撃はあった。
「このまま逃げるぞ!」
「はい!」
だが、そんなことを気にしている余裕はない。
いまはあの武装集団から逃げなければ!
女の子の走る速さに合わせている暇なんてない!
俺は全速力で疾走しながら女の子を無理矢理その速度へと合わせる。
「まずは集団を撒かないと、な」
最悪なことに村の面積は狭い。
逃げ隠れる場所なんてそう多くはないだろう。
だから、ここは狭い家と家の隙間なんかを利用する!
俺は速度を落とさぬまま人が一人通れるくらいのスペースしかない家と家の間の路地へと逃げ込む。
すると予想通り、ガチガチの武装をした野郎共は一斉に路地へ突っ込もうとしたため、つっかえ行動が遅れる。
この隙にどこかの家へ逃げ込めば……。
「おいっ、そこのあんた!」
と、路地を抜けた先に待っていたのは……。
「こっちに金髪の女性を連れた男が走ってこなかったか?」
路地を抜けた少し開けた空間。
武装集団はそこの中心に立つおばさんへと問いかける。
「それならあっちに行ったよ」
おばさんは、武装した男たちに俺たちがいるのとは全くの逆方向を指差し、質問に答える。
「ありがとう」
短くお礼をいい、武装集団はおばさんが指差した方角へと一斉に走っていく。
そして、姿が見えなくなったところで樽の裏側に隠れていた俺と少女が姿を現わす。
「ありがとうございました。でも、どうして」
庇ってくれたおばさんに失礼だとは思うけど挨拶と一緒に疑問を投げかける。
「なぁに、世界を救う勇者様を怪しい集団から守るのは当然じゃないか」
「あの、庇っていただき本当にありがとうございます」
俺に続き、金髪の少女も頭を下げる。
「なぁに、お礼なら世界を平和にしてくれることでいいよ」
おばさんは笑顔でそういうと、そくそくとその場を立ち去っていく。
残される俺と金髪少女。
「あの……どうしてわたくしを助けてくださったのですか?」
金髪少女は大きな碧色の瞳を一心に俺に向けながら尋ねる。
「……いや、おまえ(の持つ剣)が必要だったから?」
「そ、そうですか……」
いや、普通に可愛すぎるやろこの子。
金髪碧眼で、顔も童顔で美少女。
おまけに小柄だけどすごくスラっとしていて、胸もしっかりとわかる膨らみがある!
やばい俺の好みどストライクだわ。
というかなんでちょっと頬赤くしちゃってるの!
白い肌を赤く染めるとか目立つからやめて、俺が恋しちゃう!
「あの、もしよろしければわたくしの……」
「そこにいましたか、姫⁉︎」
「ーーっ⁉︎」
金髪少女がなにかを言いかけようとしたそのとき、突如背後から何者かの声が響き渡る。
「誰だっ⁉︎」
慌てて振り返る俺。
そこに立っていたのは、赤い軍服に身を包んだ高身長の青年だった。
「お兄様⁉︎」
俺より早く隣にいる金髪少女が反応する。
えっ、まじかよ‼︎
ていうかまた面倒な展開になる予感がするんですけど……。