腹が減っては戦は出来ぬと言いまして
さて、状況を確認しよう。
私たちプレイヤーは現在、VRMMOの世界に閉じ込められている。
新参プレイヤーが閉じこめられていることに気づいていない恐れがある。
そして、私の腹が減った。
「途中までシリアスだったのに、最後の一言でシリアルと化しているぞ。美味しく頂いてやろうか?」
「安心して、私もそう思ってる」
ともかく、腹が減ったのだ。これは由々しき事態である。
腹が減るということは、各種生理現象が発生することと同義。
つまりは、だ。
「キサラギみたいな人は、異性の生理現象になれていないから、むっちゃパニクると思うよ」
「正直、女性の生理が来るか来ないかが、一番の恐怖なんだけど」
女の子の生理は、重い人は動けないぐらいだからね。心配なるのも分かる。
だがしかし、早急に解決せねばならぬのは!
「食料問題だ!」
「いや、なんとかなるだろう」
いやいや、そうは問屋が下ろさないのだよ、キサラギ君。
ここに大きな問題があるのである!
「料理スキルの有無で結果どうなるんだろ?」
そう、スキルの有無で作れない可能性がなきにしもあらず!
「試しに作ればいいのでは?」
「いやまぁ、そうだけど。食材は?」
「ここに魚がある」
用意がいいなぁ。何故、こんなタイミングよく魚があるというんだ!
「メンテ前に採ってから、ボックスに入れっぱだったんだ」
「食べて大丈夫なの?」
「とれ立て新鮮のピチピチな状態だからセーフ」
……というわけで。
「キサラギ先生のお料理教室のお時間です!」
「どうしてそうなる」
今回の食材は、スノーフィッシュです!
「現実でいう鱈だな」
「安直なネーミングセンス……」
「分かりやすくていい」
まず、魚の基本的な下処理を行い(説明は割愛)、ぶつ切りにしていきます。
次に、切り身全体にグルテン粉をまぶして、事前にオーリブオイルをひき、熱しておいたフライパンでしっかり揚げ焼きにします。
「突っ込みどころ多くない?」
「多くはない。グルテン粉は小麦粉みたいなものだし、この町の南にある港町では、オーリブの生産がさかんだからな」
「いや、どうしてオーリブオイルとフライパン持ってるの」
「料理をゲーム内でも作るからだ」
「意外」「失礼な」
というわけで完成! スノーフィッシュの揚げ焼きです!
「普通に美味しそう」
「何故、一人分の木の皿とフォークとナイフの三点セットが用意されているんだい?」
「私の木材加工スキル」
「二人分作れよ」
「仕方ないなぁ」
「こっちは料理作ってるんだからギブアンドテイクだろ?」
そんなこんなでVRでの初の食事、いただきます!
「普通に美味しい」
「まぁ、現実にもあるような料理だしね」
「よくもまぁ、ちゃんと作れたね」
「確かになぁ」
「「まさか、川のへりで焚き火をコンロ代わりにして作れるとは」」
つまりは、案外楽だった。