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はじまり

 大型アップデート後のMMORPGは、大体のものは多くの人が一斉にログインすると思う。

 それは、時代が進んで主流がVRになっても、不変の事実だった。

 あるVRMMORPG「Empty Dream Online」でも変わらなかった。去年に告知され、まだかまだかと待ちわびた大型アップデート。運営は集客を見込んでか、夏休み直前にメンテを行い、夏休みのはじまりとともに、メンテを終了した。結果として、古参から新参者まで、多くの人々がログインした──それが、今までの世界との「さよなら」だと知らずに。


──まぁ、私もなんだけどね!(泣)


「泣きたい……まさか、ネットやラノベでよくあるデスゲーム展開になるとは……私は滅多に死なないけど、死ぬときは死ぬしなぁ……リスポーンするといいんだけど。まぁでも、リスポーンしたらしたで、命を軽く見ちゃうだろうしなぁ……閉じ込められた側だし、この世界で死んだら、現実も終わりとか本当に勘弁してよ……さっさと出せって、話ではあるけど……」

 そんな風にぐちぐち独り言を呟いていると、突如コール音が聞こえて驚いた。盛大に変な声を上げて、少し恥ずかしくなったが、コール音がフレンド通信のものであると気づいた私は、ゲームと同じように、片手を耳にあてて、答える。

《もしもしサツキ?私だ、キサラギだ。そっちは無事か?》

「はいはい、キサラギ。私は無事だよ、そっちは?」

《無事なはずがない。》

「あっ……(察し)」

 リア友でもあるキサラギとのフレンド通信で、キサラギの無事……生きてるという意味では無事であるとわかった。無事でありながら無事とは言えないのは、すべてを知っている私はすでに察している。

 念のため私は、どこで集合するか相談する。結論からいうと、ゲーム時代からいつも使っていた集合場所である、ロイゼン王国の噴水広場になった。

 少し不安ではあったが、長距離転移魔法「リープ」──分かりやすい例でいうと某国民的RPGのルから始まるあの魔法──が使えたので、即座に私は飛んだ。ちなみに移動方法は、単純に瞬間移動だった。特に空中に飛ぶとかはなかった。大昔からの謎が解けたような気がした。


 ……で、集合した訳なんだけど……一言、言わせて欲しい。

「ちょっwwwまじでwwwまじで女の子なんだけどwwwしかも自分の性癖全部晒してるアバターでとかwwwはぁぁぁ腹筋割れちゃうんだけどwww」

「……まぁ、覚悟はしてたし、本気で言ってないことは分かっているから許す……」

「はぁー、一生分笑ったかもしれない」

「それは言い過ぎだろう……」

 まぁ、薄々お分かりのように、キサラギ──本名、如月燈火(きさらぎ とうか)は、私のリア友で、本来は男である。因みに姿は彼の性癖の塊である、女アバターである。はじめは、自分と同じ性別しかアバターは作れなかったが、最近になってその規制がゆるくなった──結果として彼のような被害者は、結構いる。多分二割は確実。いかんせん、VRゲームは出来るだけ自分の体とアバターが似かよっていることが望ましいので──過去のMMORPGと比べれば、異性のアバターを使う人は少ない。もちろん、彼のようにいないわけではないのだが。


「そんなことよりも、これから俺たちはどうするのか。これが問題だ」

「確かに、その通りだね……」

 ゲームの中に閉じ込められた私たちは、理由も脱出方法も、まして、この世界で死んでも無事であるかどうかすら分からない。

 様々な謎が散乱するなか、閉じ込められた私たちは、どうにかしてこの世界に適応し、生き抜く必要がある。強いていうなら、私も彼も古参プレイヤーなので、死ぬことは滅多にないのだが。むしろ、ここで問題になるのは──

「新参者がどれだけログインしているのかが問題になる」

「事前にキャラクリしていたら、ログインしている筈だしね……」

 新参プレイヤーの存在。それが問題になる。

 彼らにとって、この世界は未知の世界。下手に動いて、その身を危険にさらすかもしれないし、マナーも知らずに破るかもしれない。まして、問題を起こして排斥されたり、逆に、問題に巻き込まれるかもしれない。しかも、彼らはそもそも、自分がゲームの中に閉じ込められたことに気づかないかもしれない。

 なんせ、大型アップデート後なので、過去と比べることが出来ない新参プレイヤーにとっては、肌に感じるこの感覚が、ゲーム本来の感覚だと誤解する可能性が、十二分に孕んでいるのだ。

「それと、もうひとつ。問題があるの」

「それはなんだ?」

 数刻ほど前から、私にはあるひとつの問題が主張してきたのである。

 それを無視するのは、今後の行動に支障がでるし、これからにも関わってくる話であるので、不可能である。

 つまりは──


「お腹すいた。どうしよう」

「私に言われても困る」


 私、絶賛空腹状態である。

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