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まぐろとチェリー

「えー……若葉ちえりさん。VBAやマクロを組んだことは…?」


いわゆるバー●ードと呼ばれる商品データを読み込むあの画期的な黒線を頭部に掲げた中年男性が古びた眼鏡を指先で持ち上げながら私に問う。


バーコー●゛の彼の前にはしっかりと"専務"という文字が煌めいていた。


画期的な頭部に目を奪われていたちえりを専門用語がのしかかってくる。


ぶいびーえー? ……ま、まぐろ?


もはや後半の部分はちえりの知る魚の名前と化してしまったが、人間聞き慣れない言葉を耳にすると自分が知るものに置き換えてしまうのは仕方ないのかもしれない。


「い、いえ……っ! ぶ、ぶいびーえーもっっっまぐろも解体したことはございませんっっっ」


何を思ったか、ガバっと勢いよく頭を下げたちえり。声の大きさと比例してパイプ椅子がガターン!! と吹き飛んだ。


すると、面接を一緒に受けている残りの四人のピチピチヤングたちがクスクスと嘲笑うように盛り上がっている。恥ずかしくて周りを見渡す余裕などないが、ひとりだけ…やけに爽やかに笑う男の声が耳に残る。


「ははっ! なんだそれっ!!」


その言葉がそいつの口から飛び出したとたん、ちえりの顔が羞恥で燃え上がる。



「……っ!!」



「……は、はぁ……。ではお次の方…」



頼りなさそうな専務がちえりの履歴書を一番下に差し込むと、それが不合格の意味であることは恐らく間違いない。



終わった! 私の人生終わった!!!!




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