Sと崇拝
「Sと偶像」シリーズ #5
目が覚めた。まだ頭ががんがんとする。私は、椅子にガムテープで縛られて居たが、手そのものは固定されておらず、拘束にしては粗末なものだった。
「何をするんだ?!はやくこれを解け!!」
私は眼前の2人の男女に向かって尋ねた。三頭は黙っていたが、それなりに機嫌は良さそうだった。横の男ーー誠都が、代わりに口を開いた。
「おっさん、本出したろ?」
「は?……?ああ、三頭の……」
「そう。実はな、あれの中身は嘘っぱちなんだよ」
「…………え?」
「こいつはな、」
そう言って三頭を親指で指すと、言った。
「俺の代わりに捕まったんだよ」
どういうことなのか、私にはすぐには分からなかった。この男の代わりに三頭が捕まった?確かに、三頭は警察に出頭したことで捕まった。しかし、その後証拠が出てきたはずだ。それに、今よりも捜査能力が低い20年前だったとしても、子供が友達を庇って証言して、矛盾が出るに違いないのを見逃すとは思えない。
「何を言ってるんだ、早くこれを
「解いて何になるんだよ?……お前の娘、もう死んだのに」
「な…………」
「お前なぁ、ちょっとばかだな。人質は死ぬのが定石だろ?顔も見られてるし、生かすメリットなんてねーよ。こっちからすれば、人質も人質のおかげで釣れたーーお前みたいなやつも殺すのが一番安全。」
悪びれもせず語る男。怒り。憎しみ。苦しみ。その全てが私の心を覆う。唐突に、高い女の声が響いた。
「ねぇ。」
そちらを見ると、三頭は笑顔だった。
「ねぇ。苦しいよね。」
「憎いよね。怒ってるよね。」
私は三頭の目を睨んだ。
「私ね、それが嬉しいの。先生が酷い目に遭っているのを見るのが、たまらなく楽しい。…………私は、同じクラスだった誠都が近所の子供を殺す計画を立てていることを知っていたの。止める気は無かった。だけど、気になって見に行ったの。」
三頭は穏やかな声で、事件について語り始めた。
「そうしたら、誠都、どうしてたと思う?血だらけで立ってた。……それはたまらなく可愛かった。だから、私は……誠都に話しかけた。」
彼女は俯いた。座っている私にはその表情が見えた。いや、見えてしまった。