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Sと群像  作者: ぱすこ
17/18

Sと贖罪

「Sと群像」シリーズ#19

「三頭」

「誠都!」

「三頭……三頭なのか?」

「何を言ってるのよ、当たり前じゃない」

「この間は幻だったんだ」

「でも今はここに居るわ」

そう言うと三頭は内外を隔てる透明の仕切りに手を当てた。誠都もそれに重ねるようにしたが、手は触れ合うことはない。それは冷たかった。

「…………全部、言ったの」

こく、と誠都は頷いた。

「あの事件も……?」

そうだ、と言った。そしてまた、ごめん、と呟いた。

三頭はしばらく俯いていた。失望された、もう、会えることはないだろうと思った。しかし顔を上げ彼女が発したのは意外な言葉だった。

「待っててあげる。」

「え」

「誠都は待っててくれてたもの。私も待っててあげるわ。だから」

耳を壁の穴に当てるよう指示する仕草をすると、口を近づけてぽそりと呟いた。


「私が去ったら、死になさい」


ちょうど横を向いているので、三頭の顔は見えない。けれど選択肢は誠都には無かった。

「わかった、よ」

「良い子。……じゃあ、またね」

見張りをしている男は、そろそろ時間ですが、などと言って三頭に退出を促した。

「誠都。…………大好きよ」

車椅子の車輪は回り、カタカタという音は閉じたドアに阻まれて聞こえなくなった。

誠都は両手を広げてそれをじっと見つめた。

死。

三頭のためなら、三頭が言うなら、死ぬことなど厭わないと思っていた。死ぬのは、あっけない。誠都は自身の経験からそれが分かっていた。

だが、いざ自分がその目の前に立っていると理解した時、膝も震え、今すぐ逃げ出したいような感情に襲われた。


俺は死ねない。死ぬ勇気がない。


「ごめんなさい」


ごめんなさい、ごめんなさいと嗚咽交じりに懺悔した。許されることなど望んではいなかった。これが罰だ。罪を知らずにのうのうと生きた罰なのだ。しかしどれだけ謝ろうと、罪を悔いても、何にも、もう戻れない。

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