Sと自供
「Sと群像」シリーズ #18
「芹沢が…………死んだ」
誠都はその刑事の言葉に驚いたように向き直った。
「自殺に見せかけた他殺かと思ったが、防犯カメラの映像で自殺と分かった。」
「どうして…………」
「現場は、…………山上公園。喉を裂いたのち、首を吊っている」
嘘だ。
それは、まるでーーー
「そうよ、誠都。」
振り返ると、そこにはいるはずもない彼女がいた。
「さ、三頭…………?」
「あの事件そっくりでしょ?」
「あぁ、よかった…………よかった!!俺、三頭が居なかったら…………!!」
「何を言ってるんだ?」
肩を叩かれ振り返ると、取調室の灰色の椅子に座った刑事がいた。
「い、いま…………」
「何にもなかったぞ、気のせいじゃないのか?」
「!ほ、ほら……後ろだよ!!」
三頭はナイフを目の前の刑事に振り下ろそうとしていた。
後ろ、と言われて刑事が振り返った瞬間、俺の腕はもう1人の刑事にがっしりと掴まれた。
「何をやってる!!」
「え……」
掴まれた右手には、刑事がメモするために机に置かれていたボールペンが握られていた。
「何で、俺が」
「何でも何もないだろう!!お前、…………これは殺人未遂だぞ!!」
「俺は、止めようとして、」
「待て、話を聞こう」
怒りに震えている片方をたしなめるように座っている刑事が言った。
「そこに、三頭が居て……ナイフを振り上げてて、何で、止めなかったんだよ、て、だから、言った、のに」
誠都は正気を失ったようにぽつ、ぽつと言葉を繋ごうとしたが、それは上手く伝わるわけもなく、2人は顔をしかめていた。
しばらくしてようやく落ち着くと、刑事は言った。それは全てを終わらせるにはあまりにも短い問いかけだった。
「境、お前は何を知ってるんだ」
「俺は…………俺は、何も知らなかったんだ…………今も、知らないんだ!俺は一番の当事者だっていうのに………………」
「…………」
刑事は黙って誠都の顔をじっと見た。
「三頭は生きてる……?」
「ああ、生きてるよ。傷は多いが、命に別状はない。骨折してるから歩けないが、治らないものではないらしい」
「そうか、…………そうか。」
「言うよ、俺は…………」