表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sと群像  作者: ぱすこ
10/18

Sと勝機

「Sと群像」シリーズ #10

三頭はゆっくりと起き上がった。私はソファーに座り、それを眺めていた。

「どうして、殺さないの」

私は返事ができなかった。彼女を哀れとは思わない。自分が招いた結果だ。目の前で娘を殺しておきながら、一対一の密室で格好の餌になると考えもしないわけはない。けれども、私はあと一歩を踏み留まった。

「ねえ、抱いてよ。」

「どうして」

「そしたら、自殺してあげる。目の前で」

「意味が、分からない」

「捕まりたくないんでしょ、私を殺したことで」

いいや、と言おうとした。しかし私は女の主張を聞いてやることにした。

「いいの。満足したから……私はいずれ死のうと思っていたし、殺されることが本来の想定だった。けれど、……そう、先生が私を殺さないならそれでも構わない。」

ああ、これだ。私は自分がこの女の考え通りに動いているのではないか?という疑問がよぎったのだ。だから私は殺さなかった。理解した今、私は逆らおう。

「いや、お前は生きるよ、三頭」

え、と声を漏らし彼女は私の目をじっと見た。

「お前は生きる。」

私は復唱した。

「どうやって、そんなこと言えるの?先生が去れば、私は舌を噛み切ってでも死ねる。だけど先生は私とずっと一緒にいるつもりなんて、ないでしょう?!私を管理することは不可能よ!!」

甲高い声は私に苛立っているようだった。


「肉体の死だけか」


私は携帯を取り出し、カメラモードに切り替えるとそれを彼女に向けた。

そして、私は彼女の腹を蹴った。

「ヴッ…………!!」

苦しそうに噎せる三頭。何かを言おうとしたのを遮るように顔を殴る。殴る。蹴る。

痛みに悶える悲鳴は小さくなっていった。私は彼女を見下ろした。

「何、何で……撮ってる、の?」

私は答えずに彼女の足を、彼女のナイフで刺した。

「アアッ?!!!?」

訳がわからないようだった。楽しい。つまりこれが彼女の感情だったのか。私は今まで彼女を理解できないものだと思っていた。だが、今は理解できる!苦しめるということは、苦しめてもいいということは、たまらなく楽しいのだ。これは悪ではない。罰だ。断罪だ。

私は勝ったのだ。この女の思い通りにはさせない。何度も何度も何度も目が合う。もはや彼女の張り付いた笑顔は消えていた。

「Sと群像」シリーズ#11はこちらです。


https://ncode.syosetu.com/n1528ei/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ