第0問
コンコン
「はーい」
ガラガラ
準備室のドアがノックされた。
持っていた i Padを積まれた資料の上に置き、ドアを開ける。
そこには、男子生徒が二人いた。
真新しいスーツを着ているので、新入生だろう。
「あの、すみません。クイズ研究部は、ここでよろしいでしょうか?」
「……あぁ。わかりにくいよね。クイズ研究部は隣、向こうが視聴覚室のドアだよ」
「「ありがとうございます」」
今日は大学の入学式。二科生である俺は、授業もないので、朝から一人、部室でのんびりしていた。
そこへ、説明会を終えた新入生が、クイズ研と間違えて来たのだ。
俺は、新入生にクイズ研究部の場所を教え、
部屋に戻って椅子に座り、再び i Padを手に取ろうとしたとき、
ガヤガヤと廊下が騒がしい事に気付く。
「整合性がここまで取れているんだから、ぜったいそうだって!」
「でもでも、運動部の方も、バラバラだったけど、文章には、なってなかったし、たまたまじゃない、かなぁ?」
「そんな事ないって! じゃあ、この矢印はなんなの?」
「そ、それは……い、印刷ミスかなぁ?」
「ほら、アンタだって、私が正しいって思い始めてるじゃない! 行くわよ!」
壁を一枚隔てているので、声は聞き取れないが、また新入生だろう。
コンコン
またしても、ドアがノックされた。
どうやら今年は、晴さんのクイズ研は豊作らしい。これで4回目だ。
「ハイハイ」
ガラガラ
「クイズ研は隣ですよ」
「えっ? 私たち、ナゾトキ制作部に来たんですが」
「ほぅ。って事は、冊子の謎を解いたのか? やるねぇ」
予想外にも、今度の新入生は、ここナゾトキ制作部が目的だった。
「ハイッ! 圭太が冊子に違和感を見つけたんです」
「へぇ~」
「そ、そんな、迷が、頭文字に、気づいたから、ここまで来れたんです」
「なるほど。じゃ、自己紹介がてら、謎を解いた課程、教えてくれる? 俺は二科生の、甲斐 創」
「わかりました! 甲斐さん」
新入生の内、髪を腰まで伸ばした女子が、元気よく返事をして、話し始めた。
「私は、宮本 迷。そして、こちらが、貝木戸 圭太」
「ど、どうも」
「私たちは、部活動紹介の後、冊子を見ながら、順番がバラバラだったね~って話してたんです」
迷は、そう言って冊子を取り出して、あるページを指差す。
・
・
・
軟式野球部
文化部
造花(フラワーアレンジメント)同好会
登山部
奇術部
生物部
囲碁部
茶道部
クイズ研究部
ブラスバンド部
「そして、このページにある部活を頭文字だけ読んでいくと、な・ぞ・と・き・せ・い・さ・く・ぶ。ナゾトキ制作部となります。
さらに、このページの本の『ノド』部分に、見にくいですが、矢印がありました。
その矢印が指していたのが、ここ視聴覚準備室でした」