小さな幸せ
時計を見ると針はもう24時半を指していた。
私は読んでいた本にしおりを挿んで机の一番角の所にそれを置いて、キッチンへ向かった。仕事を終えて帰ってくる恭介さんにご飯を作ってあげるのが、私の日課になっていた。と、言っても、今私は夏休みを利用して一週間だけ恭介さんの家に遊びに来ているので、この日課も一週間限定の日課である。
「よし、出来た~!うん。今日もなかなかの出来!」
今日のメニューは白いご飯とお味噌汁と豆腐ハンバーグ。もちろんお味噌汁には恭介さんの好きなネギと油揚げがたっぷり入っている。
全てのメニューの準備が完了したところで、もう一度時間を確認したら針は1時を指そうとしていた。そろそろ恭介さんが帰ってくる時間である。私は余ったご飯を冷凍保存するためにラップに包む作業を始めた。
ブーブーブー・・・
包み終わったご飯を冷凍庫に入れようとして、冷凍庫のトビラを開けた時、突然リビングの机の上の私のスマホがバイブ音を発した。私は急いで手に持っていたご飯を冷凍庫に入れ、リビングのスマホを手に取った。受話器マークの上には、『恭介さん』と表示されていた。
「恭介さんだ!どうしたんだろう??」
恭介さんが電話をかけてくるときはいつも、急な用件があるときである。恭介さんの転勤が決まった時も、突然電話がきた。なのでちょっとドキドキしながら、右手の人差指で通話ボタンを押した。
「もしもし…??」
転勤の話みたいに悪い知らせだったら…と思っていたせいで、少し声が小さくなってしまった。
「あ!悠希??今帰ってきたんだけどさ、ちょっと下来て!!」
「んぇ?」
いきなりそんな事を言われるので変な声を出してしまった。
「いいから!来て!!あ、眼鏡ちゃんとしてくるんだよ!」
「??…う、うん。分かった。今から行く!」
そう私が答えると同時に通話が切れた。
なにがなんだか訳が分からないけど、とりあえず眼鏡をかけてパジャマの上からパーカーを羽織って、急いで下の駐車場へ行った。外はもう真っ暗で少し風が吹いていて肌寒かった。パーカーを羽織ってきたのは正解だったようだ。駐車場を見渡すと、真っ暗闇の中に立っている恭介さんの姿を発見した。
「恭介さーん!」
私の声に気が付いた恭介さんは、「こっちこっちー」と私を手招きした。私は小走りで恭介さんの所へ行った。
「どうしたんですかー??」
私がそう言うと、恭介さんは「ほら、見て」と言いながら、上を指差した。
「え、なにー・・・うわぁ!!!」
恭介さんの指さす先には、満天の星空が広がっていた。この辺りは街灯も少ないので、いつもは気が付かないような小さな星まではっきり見えて、いつか見た北海道の函館の夜景に勝るくらい綺麗だった。
「綺麗でしょ~??これ見せたかったんだよ~」
そう得意げに言う恭介さんは目の下に線を作ってにひひっと笑った。
「うん!!すっごい綺麗!!こんな綺麗な星空久しぶりーっ!ありがとね!!」
そう言いながら私も、にひひっと笑った。
その後しばらく、手をつなぎながら二人で星を眺めた。
こうやって、星空を見て一緒に感動するような小さなことも、私はすごく幸せです。いつもいつも幸せをありがとう。
はい!始まりました。「虹色」!
第1話目は「小さな幸せ」深夜、二人で星を見る話でありましたが…楽しんでいただけましたでしょうか??悠希の恭介に対する口調ですが、付き合い始めた当初は敬語だったので、今もまだちょっと敬語が混ざるって感じです。文章力が無くて読みづらいところもあったかと思います…。゜(>□<)゜。感想などありましたら、気軽にコメントしてください!