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終わる夜
何事もなく朝が来て、夜が終わる。
その繰り返し。
変わらないルール。
等しく支配されるルール。
夜。
一人。
暗い夜道。
あの夜、そのルールが崩れた。
支配の手から離れた。
繰り返した夜。
だが、あっけなく朝は訪れた。
そして、平然と次の夜を迎えた。
そして。そして私は。
静かに夜の下で寝そべっている。
だが、一人ではない。
私は黒に呼び掛けた。
「……助かるよ」
「だから」
「分かってる。でも……そうとしか……言えない」
「あなた、疲れすぎだよ。ほんと」
濡れた手を見つめる。
真っ赤な血がべったり。
月光の下にかざしてみれば、なるほど。綺麗、かもしれない。
「終わるかな、夜」
「そうであって欲しいが」
夜が終わらない理由。
私の命のせいかもしれない。
夜は私の命を拒んでいるのかもしれない。
生きていれば超えられた夜。
殺されれば阻まれた夜。
私は夜を、超えられるのだろうか。
私はルールから逃れられるのだろうか。
私は、ゆっくり目を閉じた。




