2dead
「ん?」
暗がりに道。
そして一人。
周りを見渡す。
やはり一人。
しかし、腑に落ちない。誰かが一緒にいたような気がする。
いる、ではない。いた。
その感覚も不思議だ。
腕時計に目を落とす。時刻は深夜二時。
おや?
なんだ?
つい先程も私はこうやって時刻を確認したような気がした。
気のせいか。
……本当に気のせいなのか?
胸のつかえは取れぬまま、私は暗がりを歩いた。
こつ。こつ。こつ。こつ。
一人。
私は一人。
視界に入る家々に灯りはない。皆寝ている。
皆寝ている。私は起きている。
……ん?
まただ。またあの感覚だ。
なんだ、この感覚は?
この初めてとは思えない感覚は、なんだ?
分からない。分からないが、ともかく私は疲れている。
家に帰るという選択肢は変わらないので、私は歩みを続ける。
こつ。こつ。こつ。こつ。
――――――――こっ。
「……」
私は歩みを止めた。後ろを振り向く。
歩み過ぎた暗い夜道と寝静まった家。そして、何かの気配。
一人ではない。
私以外に、誰かがいる。妙な気配。
「……」
だが、結局誰も見つからない。
首を前に戻す。
いや、いるはずだ。
私は体ごと後ろを振り向いた。
「――なっ」
体がびくっと敏感に震えた。
振り向いた先。黒の塊が、私に猛然と迫っていた。
そして、そのまま。
どっ。
「ぐぅっ……!」
黒の猛突進を受け止め、全身の凄まじい衝撃と共に、私は地面に倒れ伏した。
勢いのあまり、そのまま私は後頭部をがちんとアスファルトに打ちつけた。
目の前に星が散らばった。脳天からひんやりとした鋭い痛みが下りてきた。
「……んんっ……」
私はひとまず起き上がろうとした。
が。
うまく体に力が入らない。
首をぐっと自分の腹の方に向ける。
赤い。
白かったはずのシャツが、赤い。赤い。赤い。
ぬめっとした赤がシャツも身体も濡らしていく。
またか。
また。
また?
自然と浮かんだ、また。
妙な感覚の正体。
なるほど。
そうか
また刺されたのか。私は。
そうか。
そうなのか。
だから、まただったのか。