09
昨日と比べあまり人がいない冒険者ギルド
今日は受付に用事はないので札は取らなかった。
近くに居て、掲示板を見ている若い感じのお兄さんに話しかける。
「あの〜公式依頼の漸減作戦に参加したいのですが・・・」
「ああそれなら、裏手にある訓練場に行きな。あそこで馬車が待ってる。そこにいる職員にランクを告げれば割り振ってくれる。」
俺はお兄さんにお礼を言って、裏手にある訓練場に足早んk向かった。
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「あっカナデさん、おはようございます。」
「おはよございます。アイリさん」
俺は5台ある馬車のうちの1台の前で指揮をとっていた。
「漸減作戦に参加ですか?」
「はい、師匠が少しでも楽になればと思って!」
「そうですか。防具を装備してるとそれらしく見えるわね。無茶はしないようにね・・・カナデさんは「第三馬車」に乗ってください。行ってらっしゃい」
「ありとうございます。行ってきます。」
馬車は20人ほどが乗れる中型の幌馬車のものだった。
簡単な背もたれがある長椅子が両端に二本、その下に手荷物をいれる箱があり、既に18人乗っていて俺は19人目だった。
俺が乗り込むとすぐに、ロビーで話し掛けたお兄さんが乗り込んできて馬車が出発した。
舗装されていた道は気にならなかったが、門外に出ると、結構揺れてケツが・・・
「よーし注目!!俺がこの第三小隊を束ねるB級冒険者「 炎剣」のライズだ。よろしくな!」
それぞれ手を上げたり、口笛を鳴らしたりで返す。
「ここのパレードは久々だから、結構な数が出ると予想されてるが、まだ大膨張が起きてる訳でないので、今の間に俺らが先に行って数を減らす。それが作戦目標だ。」
みんな「わかってるよ!」みたいな顔をしている。
「漸減作戦に参加する冒険者の戦闘する小隊は合計4つだ。最後の一台には補給物資の運搬を頼んである。安心しろお前らの飯はちゃんと出るからな。それと女は出ないから我慢しよ」
そういった瞬間に笑いがでる。
「それでだ、この馬車・・・俺ら第3小隊は主に森の中央部から南西部を担当する事になった。それと、こちらで既に隊伍を組ませてもらった。」
少しブーイングが飛ぶ。
ライズは話しを続ける
「まだ確定情報ではないが、ゴーレムが出てるとの事なので魔法が使える奴に合わせた編成だ。了承してくれ。ここまでで質問は?」
するとブーイングが止んだ。
俺は一つ分からない事があるので挙手する。
「すいませんゴーレムってなんですか?」
みんな「はぁ?」みたいな顔してるが、知らないもんは知らない。
知らないで死ぬのは嫌だからな。
「そうかお前が・・・ゴーレムっていうのはな、魔物の一種で鉱物でできていて、なかなか刃筋が立たないんだ。だから魔法で魔核を砕くのが一般的な倒し方だ。わかったか?」
「ありがとうございます。」
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その後は、ローテーションや撤退の目安の統一や、緊急時の合図を確認した。
そして、昼過ぎに魔の森と(馬車の冒険者の会話で聞こえた)名高い「グワンナス樹海」到着した。
(師匠はこんな危ない所1人で住んでいたのか・・・)
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俺が入った隊伍には
B級冒険者 ライズ さん
C級冒険者 エニータさん
C級冒険者 クザラさん
D級冒険者 ソータ さん
そして
E級冒険者 カナデ の5人だ。
ちなみにエニータさんは女性の方で、残りは男。
(残念パーティーだよ)
まずは本営の設営をするため、全小隊全隊伍による周辺警戒を行う。
一発目は小隊長がいるって事で第一小隊の隊伍だ、二発目は第二小隊の隊長の隊伍、そして三発目が第三小隊の隊長の隊伍・・・俺の所属する隊伍だ。
周辺警戒が始まる前に隊長が口を開く。
「じゃあみんな自己紹介から行こうか。俺はさっき馬車でしたから・・・ランクが高い順で」
「エニータよ。獲物は弓を使うわ。それ以外は短剣も使うわね。レベルは53で、魔法は火元素と水元素を少しだけ使えるわ。みんなよろしくね。」
大人の女性って感じだ。赤毛で癖っ毛だが、それがまたマッチしていてイイ。ムチとか似合いそう。
「・・・クザラだ・・・主に両手直剣を使ってる。レベルは・・・45だ。得意な魔法は火元素・・・よろしく・・・」
なんか暗い人だな。でも鍛えられた身体は、しなやかで機能美すら感じる程だ。怒らせたら殺しちゃうタイプの人だな。たぶんz
「うぃっす。俺はソータッいうっす。主に短剣と短槍を使うっす。レベルは31っす。魔法はあんまり得意じゃないっす。少しだけ風元素を使えるっす。よろしくお願いしますっす。」
なんかチャラい喋り方してるけど、髪を刈り上げてるのでなんとも愉快だ。
最後は俺の番だ。
「俺はカナデだ。よく女顔言われるけど男です、間違えないでください。武器は山刀使う。レベルは20。魔法は「火」「水」「金」の三つ。迷惑をかけないように頑張ります。よろしくお願いします!」
「「三属性持ち!しかもその顔で男のコ!!!」」
(えっ、そこに驚くの)
「三属性使いか・・・」
クザラさんはぶれ無いな・・・
「でも「金」なんて魔法元素無いわよ。」
え?エニータさんマジですか?
ええ「マジ」です。てへっ
・・・元居
「一般的な属性ではないが、記録上は存在している。主に錬金術の分野で活躍していたと」
よかった〜俺ボッチじゃないんだ。
「ああーそれであんまり知られたないっすね。連中は内輪で仕事しますからね。情報が漏れて来ないっすね」
「そう言った面もある。それによってカナデくんは三つの属性を持っているが恐らく火力が出せない。」
(いや結構強いぞあれ、水球とか使えば鎌熊もイチコロだし・・・当たればだけど)
「なので、後衛をエニータとカナデ、前衛をクザラと俺とソータの三人にやってもらう。だが戦闘の基本は臨機応変に、だ。」
「「「了解」」」
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少し周辺を見て回っていると、小鬼の10体ぐらいの集団が見えた。
俺らは少し高さのある場所から見下ろしてる形だ。
まだ、こちらに気付いてない。
なにやらライズさんとクザラさんエニータさんが話してる。聞き取れないな
(「よし、いい機会だ。カナデとソータの実力をみる。二人でどこまで倒せるかやってみろ。」)
(「わかったわ、万が一備えてるわ。」)
(「・・・了解だ」)
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「ゴブリンはパーティ戦闘では入門用としてよく狩られている」
とエニータさん談
「すまないが俺らは少し詰めたい話があってな・・・ゴブリンどもをやってきてくれないか?周囲には他に気配がないから奇襲はないだろう。全力で頼む。」
とライズさん談
「・・・頼む」
とクザラさん談
まぁ上役の人は忙しいんだろうな
「了解です。」
俺が返事をして、意識を切り替えてる間にソータさんは早速短槍を持って高所から踊り出した。
「了解っす。俺の実力みせてやるっす!」
俺も慌てて続く。
まず一体を不意打ちでソータさんの短槍がゴブリンを絶命させる。
「どうっすか!これがD級の力っすよ!」
俺も負けじと山刀を抜き、火をイメージする。
山刀に魔術回路を延長させ、流した。
(五行錬成 有効化します。)
「炎よあれ、疾くあれ、我が剣に、強くあれ、双撃とともにあれ!」
あの時のような両刃の剣になる。
後ろで息を飲む声が聞こえたような気がしたが気にしてはいけない。
集中が乱れる。油断で鎌熊にやられそうになったんだ。二度目はしない。
まず手前の方の三体が泡食っているので
「突破」
と言い放ち三体を串刺しにする。
なぜか「突破」は口にするだけで、やれる様な気がしていたから試したら出来た。
でも、出来きなくても高さのアドバンテージの分で刺し殺す事が出来たと思う。
(よし一つ勉強になった。フゥッーっ、次!!)
抜く時間がもったいないので、魔力の供給を止め、元に戻す。
その間に立て直したゴブリンが4体こっちに踊りかかってくる。
(心眼 回避 を選択 。有効化します。)
奴らは連携もなしに同時に殴りかかって来ている事が「回避」によりスローモーションでわかる。
また「心眼」によって、残りの2体はまだ驚いていて行動出来ていないのがわかった。
右前方に逃げれる空間がある。
そこに体を滑り込ませながら、すれ違いざまに一体の首を右手でもった山刀で切り落とす。
残り右に一体、左に二体。
その残り三体も何が起こったか理解出来てないようで立ち止まってしまった。
正しくは立ち止まっているかの様に遅く見えた。
そこをすかさずソータさんが、ナイフで左の一体の頭を刺した。
「食らえっす!」
(ナイスアシスト!)
俺はその間に左手のプロテクトの鉄を少しだけ「金行」で分離させ、手に集める。
そして水を集め左手に水球を形成させ、楕円形に変形させる。
「ブースト!」
回転速度が上がり威力が増した「水球」と山刀を同時に振り抜く。
さほど抵抗も無く、二体の首が落ちた。
それを皮切りに最後の二体が逃走を図った。
逃がさない!と思い、振り抜いた状態から「瞬足」使おうとした。
だが瞬きをした瞬間に、絶命していた。
エニータさんの弓矢によるものだった。
こちらにはウィンクを飛ばしてくる。
(様になってるな〜。師匠を見てなければ惚れそうだったよ)
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「カナデくん・・・いやカナデ。先ほどは火力が出ないと言ってしまい申し訳ない。あれ程の腕前とは梅雨知らず、本当に申し訳ない。」
戦闘が終わり、みんなでの魔核を剥ぎ取り終わった頃、ライズさんが謝りにきた。
俺は何を言っているか理解出来てない。
とりあえずごまかす。
「大丈夫ですよ。気にしていませんよ。」
「なんと器の大きい事だ。ありがとう。改めてカナデ、ソータ歓迎するよ。それと今更言いにくいのだが・・・」
「ありがとうございます。」
「よかったっす。頑張りまっす!」
「「??」」
「実はクザラとエニータとはパーティーを組む事もあってな・・・重ねて謝る。すまん試す様な事をしてしまって。」
「いえ、把握するのも仕事ですしね。しょうがないですよ。」
「気にしないっす。隊長さんは隊長さんの仕事あるっすから!」
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その後俺らは警戒を引き継いで設営に加わる。
俺らは、テントの周りに木製の柵を設置するのが仕事だ。
「いやーカナデさん強いっすね!びっくりしました!!あっという間で
したっす!!!」
「ソータくんのナイフのアシスト助かったよ。ありがとう。」
「そっ、そうっすか!」
「・・・お疲れさま」
「クザラさんも後ろで魔法を待機させてましたよね?心配してくださってありがとうございます。」
「!!気にするな、後進の子守りも先輩の役目だ・・・」
「カナデくんは何処で修行したの?お姉さんびっくりしちゃったよ」
「いやー身体が勝手に動いちゃって・・・実は俺、三日前以前の記憶がないんですよね。あっはは」
「「「・・・」」」
「す、っすまないっす。」
「いやカナデくんすまない。」
「・・・すまない」
「お、お姉さんグンタイアリの巣を踏み抜いちゃったいね・・・ごめんなさい」
(こっちが地雷踏んだ気分だよ!!)
「いえ、あまり気にしている事ではないので。」
「でっ、では引き続き設置して行こうか。」
ライズさんは無理やりな笑顔でみんなを引っ張っていく。
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今日の夕飯は干し肉と黒パン、野菜が少し入った塩味のスープだった。
食事の後、少し友好を深めようと火の回りに集まり、会話を楽しんでいた
突然の来訪者が陣地に現れる。
魔獣に騎乗しての来訪で、一瞬剣呑な雰囲気になったがすぐに解ける
高価なドラゴン製の革鎧やミスリル直剣・・・なにより白旗を振っていたから領主からの伝令とすぐに分かった。
伝令は降りるなり警戒中以外の全小隊を集め、こう告げた。
「ミヨウチョウヨリ ワレハ シングンス、ユウモウナルモノタチハ サキンジテ テキヲ ゲキメツ セヨ」
俺らは急いでテントに入る。
第三小隊は八時間後より
作戦を開始する。
二日更新目指します。