06
予約投稿の偉大さをしりました。
さて冒頭部分は、師匠視点です。
お楽しみ下さい。
門が見えてきて、一回の跳躍でいけるなと思い、瞬間的に魔力を放出し飛び上がる。
そして、爆音とともに着地。着地で発生したクレーターは、土行で修復済みだ。
「止まれ!フードをとって、ステータスカードをみせろ!見せれないのなら、詰所に連行。。。場合によってはここで始末する。いいな!はやくしろ!!」
と槍を構えた門番が怒鳴る。
(毎度毎度うるさい。。。)
ここは、「ブーフォマール」の外周門である。
大抵の街は三枚の壁を持っており、突然の魔獣魔物の襲来にあっても、一番内側で1週間は籠城出来る防御力を有している。
だがどの壁でも出入りが出来る門が設置されている。
外周壁と中間壁は二箇所、内壁は一箇所だ。
そしてここは、開いている門の一つで警備や哨戒は幾重にも張られている。
ここを破られたら、中間壁より中は大丈夫だが、外周地区に住む民は蹂躙される。
だから、下の者ほど職務に真面目になる。
魔物の類は、時に「人の皮」をきていたり、寄生したりするので門番は必ずステータスカードを確認する。
ましては、「魔の森」と名高い、グワンナス樹海から未確認物体が落ちてくれば。
ちなみにステータスカードは特殊なミスリル合金に自分の血を垂らす事で作れる身分証明品だ。大抵は生まれた時に一枚、冒険者はギルドに入った時にさらに一枚つくる。
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私は自分の冒険者ステータスカードを見せる。
「っ!!マスミ殿、顔を見せてもらっても?いくらあんたでもルールなんだ」
私はフードを少し下げ、門番に見せる
「ありがとうございます。入って大丈夫です。本日は一体なんの御用で?」
私の金髪はこの世界では普通だが、碧眼だけは別だ。碧眼は八切家の者である証明だ。
私はすぐにフードを被り門番に
「今から森の報告にゆく。すまぬが赤色狼煙を焚いてくれないか?」
と頼む。
赤色狼煙とは緊急の連絡要員を最速で領主に謁見するための狼煙である。
他にも警戒の黄色、大軍勢の出現の兆候の黒色などがある。
グワンナス樹海の独立警備隊たいちょう3の「真澄」が直接来て、赤色狼煙を焚く・・・それは門の活性化の兆候を示す黒色狼煙と同じ。
即ち、「魔獣魔物の大量出現の兆候」
「りょ、了解しました。」
事の重大さがわかった門番は最敬礼後、部下と同僚に指示を出し上司に報告しに行った。
暫くすると赤い玉が尾を引いて上がって行き、各所で続いて上がった。
「ありがとう。皆、無事でな。」
「マスミ殿も」
別れを告げ魔力回路を活性化させ駆け出す。
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コンコン
「領主様、例の家の者がお見えです。」
若い執事が扉の前でそう告げた。
「わかった。今準備する。」
「ブーフォマール」領主 三森 カイセイ はそう言うと、書類に向けていた筆を下ろして、カップを傾けた。いい感じに集中していたので、少しイラっとしてしまった。
(まったく気が利かん連中だな。定期報告は来週なはずだ。その報告もこちらが送って聞いてやっている・・・)
そこで思考を打ち切った。
その答えは報告を受けた方が早いと思ったからだ。
机に広がっていた陳情書や税理の書類を片付け終わったタイミングで執事が、領主の身分を表すマントを後ろから持って来た。
受け取り羽織りふと机を見てみると新しいお茶が出ていた。
流石である。
「お前はよくしてくれている。例の家の奴らにも見習って欲しいものだ」
「ご領主様、私どもは快適の生活を提供するのが仕事故。ですが例の家は戦うばかりの粗雑もの、求めるのは酷かと」
「それもそうだな。」
そこで外からのノックが響いてた。
「八切家のマスミ様をお連れしました!」
「入れ」
「失礼する」
いくら私でも相手は領主なので外套は預けあり、一応警備隊の正装をしている。
「私は時間がない。早く要件を言え。さては食料が尽きそうなのか?くれt・・・」
「樹海の深部から魔獣が流れてきています。」
淡々と私は報告する。変な事で突っかかられても困るからだ。それに私は奴が嫌いだ。そして逆も
「なっなんと言った!!深部からだと!!はぐれではないのか!!!」
領主は机から乗り出し凄い剣幕で聞いてくる。
その反応はどうかと思う。長たるものは常に冷静に、だ。
「はい、深部からサイスベアが流れてきております。」
領主は絶句した。
これが中部に存在する小鬼や赤大蛇なら問題ない。
餌場(魔力的な)を少し表部に変えただけであろう。
だが、森の筆頭であるサイスベアは別だ。奴はあの巨体で群れを作り、森の最奥で陣取り「門」の魔力を一身に受けているので餌には困らない。たまに中部に来て蹂躙して帰るが、奴の管轄は表部だ。
これは餌が無くなるか、餌を「取られている」可能性しか考えられない。
そして、餌は「門」から出てくる錬金だ。それが無くなると言う事は、厄災を振りまいてきた門が閉じた事になる・・・絶対にないであろう、他の者たちも騒ぎたて、近隣からも伝令が来ているだろう。
では、「取られている」場合
それは、「門」より「魔物」が出てきている事以外にあり得ない。それも、サイスベアの群れより強力なのが出現しているのは確実だ。
最後に三森領で開いたのが約80年前、待機期間50年ぐらいでおおよそ1万5千の魔物が出現し、三森の領地で2万人の死者がでた。それでも少ないと言われていた。
勿論、そのために冒険者ギルドの増設や鍛冶の奨励などで武力を蓄える政策は行なってきたが。
見積もりでも二万5千人以上の被害が出る・・・
「なんで私の任期中に・・・」
領主は青責めてなにか口の中でいっていた。
大方三森家の当代に文句でもいっていたのだろう。
少しすると元の「領主」としての顔に戻った。
「バラド、本家に連絡後に冒険者ギルドに行き緊急依頼を出して来い。ブラハールは鍛冶組合に行き、協力を仰げ。マスミ殿には、八切家として従軍してもらいたい。一旦帰り八切家と連絡を取ってくれ。いいな?」
「「はい、わかりました」」
と言って若い執事二人は駆け出していった。
部屋にいるのは私と領主と老年の執事になった。
「わかった。一応八切本家には連絡をする。だが他領も警戒してる。援軍は来れないと思うぞ。」
「それでもだ」
「・・・了解した。それでは失礼する」
ばたん
「領主さま・・・」
老年の執事が珍しく心配そうな顔をしている。
「・・・妻と娘たちは他領に逃がす。手配頼む。それと、息子は私と共に出るやもしれん。私の有核武装を用意しておいてくれ。息子のもだ。」
私は毅然として答えた。私は領主だからだ。
「ご下命いただきました。」
老年の執事は気を取り直し、恭しく頭を下げた。
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私が帰ったのは、綺麗な夕焼けの頃だった。
「・・・ただいま」
前誰も居なかったが今は弟子がいる
結構いいものだな。一人では味わえない日常が生まれる。
奥の元物置から、「すーすーすー」と聞こえてきた。
なぜか無性に嬉しい。悪戯をする子供のような気分だ。
ニヤニヤしてしまいながら扉をあけた
「奏は一体いつまで寝ている・・・の、だ?」
たしかに寝てはいた。
しかし、輝いていた・・・
正しくは、全身から身に纏うオーラ発生させていた。
(これが五色持ちの吸魔の光・・・)
吸魔とは急激に消費した魔力を吸収しようと空気中の錬金を取り込む際の発光現象で適正が多いほど輝きを増す。なので適正が多いものほど温存する傾向にある。逆に一気に使用する時も然り。
一色ではろうそく
二色で燭台
三色でシャンデリア
四色では昼間のように明るくなる
そして、五色は
(太陽のようだ・・・なんと暖かい)
私は奏が起きるまで待っている事にした。少しでも長くこの光景を見たいと思ったからだ。
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俺が起きると師匠がそばに椅子を持ってきて座って、こちらを見ていた。
「しっ、師匠いつからそこに!!」
「なに、ほんの半刻ほどだ」
「なっ、なんでまた!」
(一刻とは二時間・・・一時間も!!)
「ちょっとあってな・・・それは置いといて、すまぬが奏よ、お前にも話がある」
師匠がはにかんだ様な顔からキリッとした顔になる。
「なんですか?まっまさか!」
(告白か!?)
勘違い系DTパワー全開だ!!
「すまんが修行は一時休止だ。パレード・・・魔獣魔物の大量発生がはじまる。ここも危ないので街に移動する。」
今朝の心配っぷりは・・・師弟愛か。二文字も多い。
元居
そういうば、鎌熊に遭遇したと言ったら驚いていたもんなー・・・!!
「えっ!!じゃあ今朝のは・・・」
「そうだ、あれが前兆だったのだ。・・・奏には申し訳ないがサイスベアと遭遇したお陰で早く知ることが出来た。」
師匠は本当に申し訳ない顔でそう言った。顔色も少し悪いようにも見えるし・・・
「いえ、そんな・・・」
「本当にすまない。修行も一日で中断してしまった・・・終わったら、しっかり稽古つけてやるからな」
(あってしまったのはしょうがないよな。なんでそんなに気にするんだ?まぁいいや)
「ありがとうござます師匠」
「それで街に行くのにはステータスカードがいるが持っているか?」
「ステータスカード?・・・いえ、持ってないと思います。」
師匠はすこし思巡した。
「では、私のカードを「金行」で変化させて使え」
と言って師匠がマントから名刺サイズの板を放ってきた。
師匠の名前や性別などが書いてある。
「金行で表面だけ均す様に変化させるんだ。内面には核があるからな」
「はい師匠。やってみます。」
まず指先の魔力回路を開き、板へ流していく。
思ったよりスムーズに出来た。
次に砂を均すようなイメージで粒子を移動させていく。
溝が上手く埋った。
そして、移動させた分も含めて均一になるようにイメージする。・・・良し!
「師匠できました!」
「やはり、上達が早いな。次はだな、手をだせ。少し血がいる。」
俺は師匠に右手を伸ばす。師匠がナイフを取り出し、指先をすこし切った。
結構痛い。
師匠が俺の指先で血を絞る。血はやがて止まった。
カードに垂らし、師匠がなにやらブツブツ唱える。
(これもレベルの影響か?すごいな異世界 )
数秒後
カードが少し輝き
カードに
「名:カナデ・ヤマグチ 」
「年齢:20」
「性別:男」
「器:20 」
と刻みこまれた。
師匠は満足そうな顔をした。
「成功だな。それでは荷物を纏めろ。」
「俺はバックと山刀だけなので直ぐいけますよ」
「そうだったな・・・じゃあ行くぞ」
師匠と俺は魔力回路を活性化させて街まで走っていった。
(あれ?こんなに俺早かったっけ?)
・・・
・・・・・・
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門で身分確認で一悶着あったが、
師匠の知り合いと言う事で一応は解決した。
そして今は内壁の方に向かって、一番大きな通り・・・表一番通り「ケンセイ通り」を歩いている。
幅は大人が10人も手を広げる横に並べるほど広い。
「こんなに大きな壁があと二枚もあるなんて・・・大丈夫なのでは?」
なんせ10m以上は確実にあり、もしかしたら20mにも届くかも知れない程だ。
超大型魔人が来たら蹴りで終わりだが・・・
「魔物の軍団には時間稼ぎにしかならん。それに空から来るタイプもいるからな。壁の中も安全ではない。すでに金を持ってる者は他領に疎開しているぐらいにな。」
師匠曰く、門は幾ら補強していても、構造的に脆いため、一枚目は確実に破られるそうだ。
なので入ったところで纏めて倒す作戦が多い多いそうだ。
「それを食い止めるため私も従軍するのだ。安心して待っていろ。」
師匠は微笑みながらいった。
なぜか悲しそうに見える・・・
このままじゃ・・・
「そんな師匠・・・俺も連れて行ってください!!お願いします!!」
俺は力が足りないかもしれないが、数が多ければ多い程有利な筈だ。
しかし、師匠は困った顔をしながら
「私は首級と呼ばれるリーダーを私たちは獲りに行く。お前ではまだまだ実力が足りないから待っていろ。すぐに片付けて修行に戻るから安心して待っていろ。」
(たしかに援護に限れば今からレベル上げをさせても、いい戦力になるだろう。だが、七護武家の連中に五行使いを見せるのはまずい・・・せめて、もう一年間あれば)
「じゃあ俺も従軍します!!それだったら・・・」
師匠は深く考え混んでいる。
けど、俺は引かない
これは「フラグ」だ。
いけないんだ引いては・・・
「従軍は認められん。従軍するなら破門する。だが、冒険者として漸減作戦に加わるなら許そう。これが最大の妥協だ。」
(この目は言っても聞かないであろうな・・・昔の私みたいだ)
漸減作戦とは、街に接触するであろう外敵を少しずつ削り、最終的な決戦戦力を減らす目的の作戦である
いわば、積極的な防衛行動だ。だがあくまで減らすだけで倒す事が目的ではない。
「・・・わかりました。それで師匠の助けになるかもしれませんし。」
((それでも心配だ・・・))
「そうか、私も安心だ。初弟子に死なれるのは夢見が悪いからな。漸減でも気をつけろよ。」
「わかってますよ。師匠も無理だけはしないで下さいよ。」
「勿論だ・・・それでは宿を取った後、ギルドに行くぞ。登録せねば参加も出来んからな。確かこっちの方にいい宿があったはずだ」
俺と師匠は一番表通りから外れ、二番表通りに向かった。
次回は師匠と一旦わかれ、新キャラ登場回です。