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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
神炎の資格者編

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第八百二十六話 執筆を任せよう

「ゴーレムメーカー・フライくん。ナビ、魔力多めで」

『了解しました』


 風音が風音の虹杖を地面に立て、土塊に魔力を込めていく。すると土が盛り上がって、羽が水晶化で透明になり、形をデフォルメ化された小さなハエのゴーレムが出現したのである。やすがそれを見て首を傾げる。


「なんだ、それは? なんかハエっぽいが?」

「んー、本物はグロいから顔可愛くしてるけど、ハエ型ゴーレムだよ。フライだけに」

「そうか」

「フライだけにね」

「…………」

「…………」


 風音とやすの視線が交差し合い、一瞬時が止まったようにも見えたが、風音はすぐさままるで何事もなかったように話を続けた。恐るべき胆力である。


「まあ、フライの魔術を付与してるから羽で飛ぶわけじゃあないけどね。遠隔視があるから出番はなかったけど、いちおう偵察用にと用意はしてたんだよ」


 そう言って風音が「行け」と指示すると、フライくんは宙に浮かんで森の奥へと飛んでいった。


「上に昇らずに、森の奥に行っちまったぞ?」

「闇の森から魔物が飛び出してくる可能性もあるからね。少し離れた位置から上昇させる予定だよ」


 そう言いながら風音はフライくんを飛ばし続け、スキル『情報連携』により視覚を同調させながらゴーレムの視界で周囲を眺める。


(ふーむ。こうしてみると……)


 ようやく距離も取ったのでフライくんを上昇させると、遙か先に人里らしきものが見えた。そちらは海の方に面した人間の暮らす領域で、反対側の大陸の内側は森が続いている。それこそが闇の森を中心とした魔物の領域。そうした光景を見れば、この大陸を支配しているのは事実上魔物なのだと理解もできる。


(人間の住んでる場所ってやっぱり狭いんだよねえ)


 風音がそうぼやく。ゼクシアハーツの設定でも人間が生息できる場所など、せいぜいが大陸の3割程度ということだった。

 ゲームと同じ時代から千年は経っているが、状況が変わっている様子はあまりない。今も魔素の濃い地域にダンジョンを植え付けて魔素を吸わせ、徐々に人間の生存域を増やし続けてはいる。それでも逆に魔物に土地を奪われるケースも多く、現状のペースでは、例え千年単位でも、人間が大陸中を自由に行き来するのは難しそうだった。


(ま、私が気にしても仕方ないけど。それよりも……と)


 風音が『知恵の実』を食べて知覚力を上げ、スキル『イーグルアイ』で周囲を確認していく。『コンセントレーション』を発動させて細かな状況も逃がさず、探っていく。


(アレと……あっちもそうかな。と)


 風音が龍神の鱗が落ちていそうだと認識できたのは二ヶ所。そして、その次を確認しようとしたとき、唐突に風音の視界がブラックアウトして、同時に空で爆発が起きた。


「風音ッ!」


 風音がふらつき、その状況に弓花が声を上げる。対して風音は踏みとどまり、手を前に出して弓花を制した。


「大丈夫。けど、やっぱりやられたか。魔物は来てる?」


 そう口にした風音の視界に巨大な影が映り、フライくんが撃墜された場所へと降下していくのが見えた。


「蝙蝠?」


 風音がそう呟く。どうやら巨大な蝙蝠の化け物が、闇の森から飛び出てきたようであった。


『ああ、アレ。グレーターバットだね』


 その言葉に、風音たちの視線がJINJINに集まる。


「見えたの?」

『目、いいからねえ』


 メガネをかけた腐女子がそう返す。漫画描きとして必須のブレない線引きのために『直感』や『コンセントレーション』、その他諸々のスキルを得ている上に、悪魔の身体になってJINJINの地力は大幅に底上げされている。現在のJINJINのスペックは、この中ではダントツで高かったのだ。


「な、なんです。アレは?」


 そうした中で、やすの曾孫のカダスの怯えようは異常であった。いや、それが本来の闇の森の魔物と遭遇した人間の正しい反応と言うべきではあるが。


「やす君。カダスくんの目をアレに向けさせないで。今は空身とインビジブルナイツで隠れていても、下手したらバレるかもしれないし」

「お、悪い。カダス、顔を隠せ」

「は、はい」


 カダスは涙目のままやすに抱きついていた。

 そして風音たちが静かに隠れていると、グレーターバットは周囲を探るように移動し、その場にいたのだろうフォレストロブスターを咥えて闇の森へと戻っていった。その姿が離れていくのを見ながら、弓花が風音に尋ねる。


「倒せなくはなかったんじゃないの?」

「かもしれないけど、フライくんを落としたのはアイツじゃなくて他の魔物だよ。グレーターバットに遠距離攻撃なんてないしね。それに、他にも注目してたのがいたみたいだったから、多分戦ったらボスラッシュになってたと思う」


 その言葉には、弓花が「あー」と声を上げ、他のメンバーもゾッとした顔をした。


「それにあの様子じゃあ、戻ったグレーターバットも無事で済むかどうか分からないよ」


 何しろ、他の魔物が注目する中で、一匹だけ現地に向かってそれから戻ったのだ。であれば当然待ちかまえているだろう……と風音が考えていると、すぐさま闇の森の中から戦闘音が響いてきた。案の定というべきか、グレーターバットが他の魔物たちと戦闘に入ったようである。

 その音にもカダスがガクガクブルブルと震えていたが、こればかりはどうしようもないので、落ち着くのを待ってから風音が口を開いた。


「とりあえず、これ以上は調べるの止めとこう。一応目星も付いたしね」

「本当か?」


 やすの確認に風音が頷く。


「着弾したっぽい場所をふたつ見つけたよ。この森に人間が来ることはあまりないだろうけど、以前通りなら鱗を所持した魔物はいるかもしれないから戦闘にはなりそうかも」

『よし、分かった。私はコテージに篭もってるから。なにかあったら呼んで。そんじゃ』

「おい。いきなり引きこもるのか?」


 やすの言葉にJINJINが肩をすくめながら『だってぇ、森ってジメジメしてるしー』と返す。


『それにほら、直樹とライルのおかげで私の頭の中では今、凄まじいアイディアが湧き続けているんだよ。私の描く物語を読者が待ってくれてるわけなのさ。やす、あんただって早く見たいでしょ?』

「いや、見たくねえ」


 やすが全力で首を横に振った。

 何しろ、JINJINの描く漫画の内容はといえば、基本的に男同士の非生産的なお肌の触れ合い会話をメインとしたものだったのだ。

 そして今、JINJINの頭の中では、闇に支配された無口な美少年と、若きドラゴンの化身であるワンパク少年が愛を育みながら旅をしていく壮大なラヴロマンスストーリーが展開されていた。タイトルは『ドラゴンを魔王剣で貫いて』といい、プロット上では槍使いのイケメン師匠やドワーフのイケメンヒゲ親父も出てくるらしく、やすは心の底から見たくはないと感じていた。


「んー、まあJINJINに期待してるのは、戦闘だしねえ。呼んだら来てもらいたいけど、ひとまずはカダスくんと一緒にコテージで待っててくれても問題はないよ」


 そう口にした風音の言葉にJINJINが「よっしゃ」と言いながら、カダスを抱えて「ショータを枕に執筆業ー」と不穏な創作歌を歌いながら、コテージへと続く隠し入口の中へ入っていった。


「いいのか?」

「カダスくんをひとり置いとけないし、隠密行動中にあんなテンションで騒がれるよりは……」

「なんか……スマン」


 やすは実に厄介な女に惚れていたのであった。

 それから風音たちは、ひとまず近い方の龍神の鱗の着弾地点へと進むことにして、その場に辿り着いたのは、コテージを出てから三十分後のことであった。



◎メゾトルの森 第一鱗着弾ポイント


「で、辿り着いたわけだが」

「まあ、想定はしてたけどね」


 落胆しているやすの言葉に、風音がそう返す。もっともやすとは違い、風音の声色にはまだ落胆の色はない。

 そして、そんな彼らの目の前にあるのは、大量の魔物の死骸であった。すでに時間が経っているものがほとんどだが、妙に巨大で腐っているものから、普通に戦闘で殺されたものもいるようだった。しかし、肝心の龍神の鱗はその場にはなかった。


「もうひとつの方に行くか?」


 やすの問いに、風音は首を横に振る。


「これはこれで想定内っちゃー想定内なんだよ。まあ任せてよ。臭いを辿っていけば、龍神の鱗を持っていった相手も捕まえられるかもしれないし、これからが勝負ってもんだよ」


 そう言って風音はトコトコと着弾地点へと向かい、鼻をひくつかせ『犬の嗅覚』を発動させる。周囲の腐っている死骸をスルーし、龍神の鱗のアストラル体の臭いを選択し、その移動ルートを探っていく。

 そして、少ししてから風音は眉をひそめた。


『どうしました母上?』

「いや、うーん」


 横からのタツオの問いに、風音が少し考えてから口を開く。


「ふたつめの鱗のある方に臭いが向かってるみたい。これって偶然かなぁ?」


名前:由比浜 風音

職業:竜と獣統べる天魔之王(見習い)

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター・守護者


装備:風音の虹杖・ドラグホーントンファー×2・鬼皇の竜鎧・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩(柩に飾るローゼ)・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・金翅鳥の腕輪・プラチナケープ


レベル:51

体力:175+35

魔力:489+750

筋力:102+70

俊敏力:134+80

持久力:68+40

知力:111+10

器用さ:92+10


スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』『テレポート』『カイザーサンダーバード』


スキル:『見習い解除』『無の理』『技の手[0]』『光輪:Lv2』『進化の手[7]』『キックの悪魔:Lv2』『怒りの波動』『蹴斬波』『爆神掌』『コンセントレーション』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv6』『イージスシールド:Lv2』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス:Lv2』『インビジブルナイツ』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv3』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv3』『情報連携:Lv3』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv5[竜系統][飛属]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv3』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv3[竜系統]』『魔王の威圧:Lv3』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv3』『真・空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv4』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス:Lv2』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』『魔力吸収』『白金体化』『友情タッグ』『戦艦トンファー召喚:Lv2』『カルラ炎』『魔物創造』『ウィングスライサー』『フェザーアタック』『ビースティング』『弾力』『イーグルアイ』『ソードレイン:Lv4』『空中跳び[竜系統]』『暴風の加護:Lv2』『最速ゼンラー』『ソルダード流王剣術』『タイタンウェーブ:Lv2』『宝石化』『ハウリングボイス:Lv2』『影世界の住人』『知恵の実』『死体ごっこ』『ハイパーバックダッシュ』『ドリル化:Lv2』『毛根殺し』『ハイパータートルネック』『爆裂鉄鋼弾』『ウィングアーム』『Roach Vitality』『黒曜角[竜系統]』『空身[竜系統]』


風音「実は……ゆっこ姉はああいうの嫌いではないみたいなんだよね。本人は嗜む程度って言ってたけど」

弓花「え、そうなの?」

やす「俺が言うのもなんだが、あいつと付き合っていけるってだけでゆっこも相当なもんなんだぜ?」


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