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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
獣の数字編

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第六百五十三話 成長を見せよう

※書籍版のまのわ2巻が2015年1月10日に出ます。

※活動報告にて『まのわ2巻の表紙と、Web版と書籍版の違いについて』を投稿しました。


 エミリィから射られた矢が洞窟内を一直線に飛んでいく。その矢には竜気を込めた振動破壊の竜弓術『滅竜』が込められている。それが骸骨の集合体の正面へと直撃し貫かれた骨は砕かれ、同時に後を追うように飛ばした四つのファイア・ヴォーテックスが直撃して爆発を起こす。


「やった……けど」


 エミリィが難しい顔をしてそれを見る。

 今のエミリィの攻撃で飛び出してきた骸骨の集合体の先頭部分は粉砕できた。だが残された部位は蠢いていて、さらに岩の穴からはズルズルと残りの部分が長々と這い出てきていた。


「効いてはいるようだが」

「こりゃあ、厄介な相手ですね」


 ジンライの呟きに弓花が眉をひそめて言葉を返す。確かにダメージは与えているのだが、それは魔物の集合体の一部に対してだけのようであった。


「そうか。あれはスカルスセンチピードか。面倒な相手だな」

「師匠。知ってるんですか?」


 弓花の問いにジンライが頷く。


「見た目通りのスケルトンの集合体でな。長細い形を取り、その姿がムカデに似ておることから百足センチピードと呼ばれておるのよ」

「集合体というと……あれ、チャイルドストーン持ちではないってことですか?」


 チャイルドストーン持ちの中ボスクラスと見ていた弓花の問いにジンライが首を横に振る。


「いいや。あのクラスの魔物でここに出現しておる以上はチャイルドストーン持ちの、中心となる魔物がおるはずだ。とはいえ、あの集合体の中から探すのは至難の業だがな」

「文字通りに骨が折れそうですね。じゃあ、ひとまずは大穴を狙わずに周りを削ってく方向で行きます?」

「ああ、そうするのが定石だろう」


 弓花の提案にジンライが頷く。そして方針が決まれば、ジンライと弓花の行動は早い。それぞれの相棒に目配せするとすぐさま動き出した。


「それじゃあ行くよクロマル!」

「ワシらもだシップー! ライルたちも続けッ」


 弓花がクロマルと共に飛び出していくとジンライがシップーに乗り、続いて駆けていく。


「チッ、彗星の投槍で華麗に一撃ってわけにゃあいかないか。アレも相当な威力なはずなんだけどな」


 ライルがジーヴェの槍を背から抜きながら直樹にぼやいた。


「愚痴っても仕方ないさ。俺らも行くぞ」


 対して直樹は腰に下げていた業魔王剣と夜王の剣のふた振りを鞘から抜いて、後ろにいるエミリィへと声をかける。


「エミリィはガードを黒ミノくんに任せて、ともかく打ち続けてくれ。まずは削るのを最優先に動くってことだからな」

「了解、ナオキ」


 エミリィの返事に頷きながら直樹が走り出した。履いているイダテンの脚甲が緑色に輝き、走る速度を徐々に上げていく。そこに膨大な竜気を身にまとったライルが併走する。


「つうか、俺らの出番あるかね。前のふたりだけで片付かないか?」

「それはないだろ。ほら見ろよライル」


 ふたりの視線の先にはシップーに乗ったジンライがスカルスセンチピードへと斬り掛かっていく姿があった。


「ヌォオオオオオオッ!」


 そしてジンライがスカルスセンチピードの表面をふたつの槍で切り裂いていく。さらに弓花とクロマルも続いて攻撃を仕掛けるがどちらも正面からと言うわけにはいかない。スカルスセンチピードの速度は速く、重量差もあって正面から当たるのはジンライや変化していない弓花では無謀過ぎた。なのでまずは表面の骸骨たちを彼らは削っていたのである。


「ああ、こっちにも来るのかよ」

「そういうことだッ」


 そしてジンライと弓花の攻撃を抜けたスカルスセンチピードは勢いもそのままに、続けて直樹とライルへと突撃してくる。それを見ながら直樹が口を開く。


「気を付けろよライル。巻き込まれたらただじゃ済まなさそうだ」

「そっちこそ気を付けな。俺と違って脆いんだからよ」


 ライルがそう言い返しながらスカルスセンチピードに突撃していく。


「行け『牙炎』『虹角』ッ!」


 そのライルをフォローすべく直樹は魔剣を変化させた飛竜二匹を骸骨たちへと直撃させ、その威力にスカルスセンチピードの動きがわずかに鈍った瞬間を狙ってライルが攻撃を仕掛ける。


「うぉっりゃあぁああ」

「こっちも行くぞッ」


 ライルの竜気をまとった攻撃に続き、直樹も二刀流で斬り掛かる。どちらもスカルスセンチピードの特攻の直撃は避けながら、掠める形で周囲にダメージを与えていく。それは確実にスカルスセンチピードの表面を削ってはいるが、やはり削り切るには至らない。


「これ以上は無理かッ」


 直樹がそう言って一歩退き、ライルは勢いに押し負けて「うわぁっ」と叫びながら弾かれて、スカルスセンチピードは続けて奥のエミリィへと突撃していく。


「黒ミノくん、エミリィを守れッ」


 その直樹の声に呼応し、黒ミノくんが突撃してくるスカルスセンチピードを正面から受け止めた。激突の衝撃で接触面に火花が散り、黒ミノくんとスカルスセンチピードの動きが止まる。しかし黒ミノくんはズリズリと押し込まれていて、拮抗が崩れるのは時間の問題だった。


「……駄目か」


 押さえきれない。そう判断した直樹はすぐさま業魔王剣の柄に嵌めている帰還の楔リターナーズ・ステイカーを発動させると、短距離転移でエミリィの横へと飛んだ。


「ナオキ!?」

「エミリィ。真横に飛ぶ。射る用意を」

「え、うん。了解ッ」


 素早い直樹の指示にエミリィも即座に反応して弓を構える。それから直樹はエミリィの肩を掴んで再度短距離転移を行い、次の瞬間には黒ミノくんと組み合っているスカルスセンチピードの横側に出た。


「やれッ!」

「行きますっ!」


 そして続く直樹の声に従って、エミリィが矢と共にチャージを終えたファイア・ヴォーテックス四連を放つと、スカルスセンチピードの長い胴体の真ん中に直撃して貫いた。


「やった!」


 エミリィが会心の笑みを浮かべ、直樹も頷きながらスカルスセンチピードを観察し続ける。


「分かれた前半分がバラバラと崩れていく……だとすれば」


 直樹はそう呟き、分断された途端に崩れていったスカルスセンチピードの前半分から未だに形を保っている後ろ半分へと視線を移しながら声を上げた。


「弓花、ジンライ師匠。本体は後ろだッ」

「任せよッ!」

「了解ッ!」


 直樹の言葉を聞いてジンライたちが駆け出していく。


「ユミカ。サービスだ。先に削っておくぞ」

「お願いします」


 ジンライの言葉に弓花が頷くと、ジンライの乗っているシップーが「なー」と鳴き声を上げながら加速し、スカルスセンチピードの後ろ半分へと突撃を仕掛け、再度ジンライがスカルスセンチピードを削っていく。


「それじゃあ、一気に決めますッ」


 そう叫んだ弓花の身体が虹色の光に包まれると、光の中から人と同サイズの青い水晶竜が出現した。それは竜結の腕輪にチャージされていた風音の竜気で変化した完全竜化弓花だ。


『イッケェエエエッ!!』


 そして、文字通り裂けた口を広げながら叫ぶ完全竜化弓花が突撃する。


「あ、俺の竜閃」


 それを見て自分の十八番を奪われたと思ったライルが情けない声を上げたが、弓花は止まらない。七色の光帯びた突撃がスカルスセンチピードの後ろ半分へと正面から突き刺さり、


『貫けぇええ!!』


 その巨体を一気に貫いた。そして通り抜けた弓花の変化が解かれていく。竜結の腕輪の竜気だけでライルと同じ『竜閃』を放ったのだから、それは当然の結果ではあった。もっとも目的は果たしたのだから、これはこれで問題はない。元の姿に戻った弓花も満足そうな顔をしていた。


「やったッ」


 それを見ていたエミリィが喜びの声を上げた。ライルも拳を振り上げている……が、直樹の表情はまだ固いままだった。


「いや、まだだな」


 直樹はそう言って両手の魔剣を鞘に仕舞う。エミリィはそれを不思議そうに見ているが、直樹の『察知』スキルは明確に敵の存在を告げていた。それから直樹は神速の鞘に納めた業魔王の剣を握り締め、ゆっくりと踏み込む。


「ナオキ?」


 エミリィから疑問の声が発せられたが、直樹は答えず脚甲に魔力を注いでいく。

 直樹の持つ『察知』スキルは『直感』スキルほどレスポンスはよくない。だが意識を集中し観察することで、文字通りに『直感』を超える『察知』力を発揮するスキルでもある。


「左側のあの山か」


 直樹がスキルの反応を感じながら、その視線を崩れた骸骨の山のひとつに向けると、同時にガルーダスカルの残骸の中から一体のスケルトンが飛び出してきた。それは装飾で彩られた豪奢な、明らかにガルーダとは違う人型のスケルトンだった。また、その胸には強力な魔力を放つ宝玉、チャイルドストーンが存在しているのを直樹は確認した。


「ナオキ、そやつがボスだ。お前を狙っているぞ」

「はい」


 ジンライの言葉に直樹はしっかりと頷きながら一気に駆け出した。イダテンの脚甲から爆発的な緑の光が放たれ、直樹の速度は弾丸の如きものへと変わる。


『グギャアアアッ』


 迫る直樹を見てスケルトンが叫んだ。しかし、スケルトンが攻撃を仕掛ける前に、直樹は一瞬でスケルトンの横を通過した。


「なんだ?」


 ライルが疑問の声を上げた。ただ通り過ぎただけ、そのように見えたのだ。それに直樹の神速の鞘には通り抜ける前と変わらず業魔王剣が収まっていた。しかし、その場ではある変化が起きていた。


「ふむ。面白い成長をしたな」


 ジンライがそう言って感心した顔をする。

 そしてスケルトンは……と言えば、その上半身が宙を舞っていた。


「え、アレが飛んで?」


 ライルの顔が驚きに染まっている。なぜならば宙を舞うスケルトンの断面は明らかに斬撃によるもの。

 それはイダテンの脚甲による加速からの神速の鞘を用いた居合い切り。目にも留まらぬ早業。人型のドラゴンとなったライルですら目で追えぬほどの速さの斬撃によりスケルトンは防御する間もなく胴体が切り裂かれていたのだ。


「よし、チャイルドストーンは斬るなよエクス!」

「ガカカカカカッ」


 それから直樹は落ちてくるスケルトンの上半身へと業魔王剣を抜いて斬り上げると、さらに上半身を左右にまっぷたつに切り裂いた。そして笑う業魔王剣の口にはチャイルドストーンが咥えられていた。


「やりおるわい」


 それを見てジンライが「フッ」と笑う。弓花も、ライルも、エミリィも目を見張るほどの直樹の成長を見て、頬を綻ばせていた。だが次の瞬間に、その場の全員の顔が凍りついた。


「ガカカカカカ……ゴックン」


「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」


 それはあまりにも唐突で、目の前にいた直樹でも反応ができなかった。

 そう、手に入れたチャイルドストーンは業魔王剣が飲み込んでしまったのである。


名前:由比浜 風音

職業:竜と獣統べる天魔之王(見習い)

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター・守護者


装備:杖『白炎』・ドラグホーントンファー×2・竜喰らいし鬼軍の鎧(真)・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・金翅鳥の腕輪


レベル:43

体力:160+20

魔力:416+520

筋力:87+45

俊敏力:96+39

持久力:52+20

知力:90

器用さ:68


スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』『テレポート』『カイザーサンダーバード』


スキル:『見習い解除』『無の理』『技の手[1]』『光輪:Lv2』『進化の手[1]』『キックの悪魔:Lv2』『怒りの波動』『蹴斬波』『爆神掌』『コンセントレーション』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv5』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス:Lv2』『インビジブルナイツ』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv3』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv3』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv4[竜系統][飛属]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv3』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv3[竜系統]』『魔王の威圧:Lv2』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『真・空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv3』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』『魔力吸収』『赤体化』『友情タッグ』『戦艦トンファー召喚』『カルラ炎』『魔物創造』『ウィングスライサー』『フェザーアタック』『ビースティング』『弾力』『イーグルアイ』『ソードレイン:Lv2』『空中跳び[竜系統]』『暴風の加護』『最速ゼンラー』『ソルダード流王剣術』


風音「あーあ。50階層クラスのチャイルドストーンなんて色々と使えそうなものなのに」

弓花「は、吐き出せないかな?」

風音「あれには前科があるからねえ」

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