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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
達良くんの番外編

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第三話 楽しいドラゴン退治

※この物語はまのわより600年前にあたる剣井 達良の物語です。

いくつかの設定、キャラクターなどがまのわに連動しているまのわの番外編としての掲載となります。またこの物語は4話掲載。以降はまのわ本編に戻ります。

 この世界のドラゴンという存在は場合によっては親しき隣人であるが、場合によっては最悪の害獣ともなる。育つ環境によって彼らの性質や性格が大きく変動するのがその原因だ。

 その親しき友人の側にあった西の竜の里ラグナが滅びたのは今より10年ほど前のこと。ジルベリア帝国の竜帝ガイエルが盟約を結んだ黒竜ハガスとともに里の長である金翼竜ゴーラを襲い殺害したのだ。

 それにより昨今では人間への怒りを燃やす竜や、長の支配力が消え人里を襲い出す竜による被害が大陸の西を中心に増え続けていた。

 対して人間側も黙って指をくわえているわけもなく、被害が出ては討伐隊が組まれ、害竜と呼ばれるそれを駆逐していった。討伐隊は100人編成以上が普通で、戦闘後は1/4は戦闘不能、つまり死亡していることも多い過酷なものだということだ。だが、それだけの価値が竜退治にはある。

 まず竜がため込んだ財宝の所有権は退治した人間のモノとなる。また竜自身の角や骨、内臓から肉、鱗の一つに至るまですべてが貴重なレア素材であり一体倒せば素材の換金だけでも莫大な金が手に入る。中でも竜の心臓と呼ばれる稀少水晶には絶大な換金額がついていた。つまり竜を一人で退治すれば、それだけで人生を楽に生きられるだけの財産が手にはいるのだ。


 が、無論ドラゴンに一人で挑もうなどと言うバカはいない。そんなにはいない。いや、例外的に何人かはいるのだが、その一人がここバラモ山の近くに来ていた。


「うん。あれがそうですね」

 バラモ山の真横にあるシライ山の岩場に達良は立っていた。手に持っているレンズのようなものは遠眼鏡という、つまりはこの世界の望遠鏡だった。

 それに映る存在を達良は見ていた。


 黒岩竜ジーヴェ。西の竜の里の抑制が利かなくなった野良竜ではなく、れっきとした名ありの200年ものの竜である。達良は討伐竜リストに載っているその名を見て、思ったよりも大物だったことに驚いた。

「こりゃあ、ちょっとやそっとじゃ勝てないかもしれませんね」

 すこしだるそうにそう口にする。

「ご主人、ミンティアがやるか? ルビーと一緒にいってもよいのじゃぞ?」

 ミンティアが指輪を出してそう口にする。

「ルビーはまだ子供です。ミンティアもまだ子供です。大人しくしててください」

 達良の言葉にミンティアが「ブー」と言う。

「ルビーには終わったら竜の肉をあげますから、しっかりミンティアを護ってくださいよ」

 達良の言葉に指輪がきらきらと反応する。「この裏切り者めが」と指輪に言うミンティアを無視して達良は短剣を取り出す。

「アイテム:短剣をアイテム:飛剣Gホークに変更」

 MODツールを使い、短剣を細身の羽の生えた剣に変更。これを地面に突き立て、同じことを4度ほど繰り返し5本用意。そして最後にジャベリンという槍を作成した。

「ふむ。距離的にはこんなものでしょぅかね」

 そう言って達良は飛剣を一本とり、構える。

「なにかあったら逃げるように。いいですねミンティア?」

「やじゃ」

 いつも通りのやり取りにため息をきつつ達良は言う相手を代える。

「ルビーよろしく」

 指輪が光る。「だめじゃ」とミンティアが言うが達良は無視して隣の山の竜を遠眼鏡で見ながら

「設定完了。射出」

 と口にして剣を投げる。

 達良の手から投げられた剣は空中で一旦とどまると、向きを変え、凄まじい勢いで飛んでいった。

「命中」

 遠眼鏡に立ち上がる竜を見る。恐らく右腕に刺さったはずだがよくは見えない。

「二撃目。射出」

 再度投げ、再び飛んでいくと遠眼鏡にドラゴンの顔が凄い勢いで振られているのが見えた。

(指定通りに眼に刺さったようですね。良し)

「三撃目……む?」

 遠眼鏡に竜がこちらを向いたのが分かった。

「バレましたか。なかなか勘が鋭いようだ」

 とはいえ、やることは変わらない。

「三撃目。射出」

 投げつけた。

「命中。あ、飛んだ」

 今度は左腕に刺さったはずだが、竜が翼を広げて飛び上がった。

「まあ距離的には問題なしかな」

 そう言って4本目の飛剣をとる。

「四撃目。射出ッ!?」

 投げたところで達良の顔色が変わる。四撃目が飛び立ち、竜に命中する。それはいい。だが竜の飛ぶ速度が想像以上に速い。

「5撃目は……諦めますかね」

 そういって今度はジャベリンと呼んだ槍を持ち、

「じゃあ戦闘開始です」

 一気に投げつけた。


 そしてジャベリンは空高く舞い上がり、雷光を伴って飛んでいる竜に真上から直線に突き刺さる。


『グギャアアアアアアアアア!!!!!』


 その悲鳴は達良のもとにまで響きわたる。

「それじゃあ行ってきます」

「すぐ追いつくのじゃ」

 グッとミンティアが顔を近付けて言う。

「待ってます」


 そう言って達良は体の防具をフューチャーズウォーの強化スーツに変更させて、崖から飛び立った。


「いいいい、やっほおおおおおお!!!」

 達良が叫ぶ。それは普段の彼にはない開放的な雄叫び。以前はゲームの中にだけに見られた彼の闘争の顔だった。


「ルビー、いくぞ」

 ミンティアがそう言うと指輪から炎があふれ、ミンティアと同程度の大きさのルビーグリフォンの子供が現れた。

 ミンティアはそれに乗って飛び立つ。達良に追いつくために。


 もっとも達良はミンティアが追いつく前にはカタをつけるつもりだ。そのための準備であり、あとはもう実行するだけのこと。

 そして達良は戦場へと降り立ちドラゴンを見る。

 空から落とされ、苦しそうに、だがふてぶてしく達良を睨む竜の姿がそこにはあった。

『貴様が我に弓引く愚か者か』

「はい。すみません」

 竜の猛りの問いにも達良は平然と謝り、そして手に持つ大翼の剣を

「モードチェンジ・綺翼の弓へ」

 翼を組み替え、弓へと変化させる。そして光の矢が現出する。

「このまま倒されていただけることを願います」

『抜かせっ』

 黒岩竜ジーヴェはその手を達良に降り下ろす。

「狙いはっと」

 スーツのブーストを使い爪をよけ突進。矢を一発、二発と腹に命中させる。ジーヴェがうなる。さらに懐に飛び込んだ達良は弓を槍に変え、

「刺しますッ!!」

 槍が刺さる。

「至翼の槍、解放モード」

 そして槍の先の翼が広がり、光があふれる。

「食らってくださいッ」

『グギャアアアアアア』

 ジーヴェが凄まじい苦痛の声を上げる。腹の内側が焼かれているのだ。無理もない。

『ギザマアア』

「Gホーク、一番から四番目まで解放」

 怒りの咆哮を上げるジーヴェにさらなる衝撃が走る。

 左目と両腕、右足に刺さったさきほどの剣が爆発したのだ。


『ガァアアアアアアアアアアア!??』


 あまりの痛みにジーヴェの意識が飛びかかる。だが頭部が地面に激突し、その衝撃で目を覚ました。それはジーヴェにとっては不運なことだっただろう。ここで意識を失っていればこれ以上の苦痛はなかったろうに。

『ぐっふ…』

 吐きでる血に咽せながらジーヴェが残った右目を見開く。

 そこには大翼の剣を持ち上げている達良の姿があった。

『おい、止めッ』

 そして一気に振り下ろされる。それがジーヴェというドラゴンが見た最後の光景。200年生きた竜が死ぬにはあまりにもあっけない終わりであった。



「終わってしまったとな」

「ええ、ミンティアが出てくるほどの相手ではなかったということですね」

 戦闘終了後、ルビーに乗ってやってきたミンティアにそう告げながら達良はドラゴンの素材取りを行なっていた。足や腕などを分けて切り取り、不思議な倉庫という不思議な袋の上位シリーズのなかに放り込む。肉や骨などはそのまま専門のところに持っていって解体をしてもらうのだ。

「むむむむ、残念じゃったのお。妾とルビーが大活躍をする予定じゃったのにのお」

 がっくりとうなだれるミンティアに対し、ルビーグリフォンはご満悦の顔で竜の肉を頬張っていた。種族は違えど上位種の肉である。モリモリと力が付いていくのが分かり歓喜の声を「クエエエ」と上げた。

「ま、ここまでの竜だとため込んでいるお宝も相当でしょうから、ミンティアには一緒に片づけてもらいますよ」

「おおー、お宝か。ざっくざくなのかー!?」

「ええ、恐らくは」

 そう達良は返事を返し、作業に戻っていく。ミンティアはくるくると回りながらルビーに抱きつく。ルビーが一瞬咽せたがまた肉を食うのを再開した。

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