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第五十三話 ダンジョンに潜ろう

◎オルドロックの洞窟近辺 ゴーレムコテージ


「やっぱり欲しいわ、このこ」

 わりと本気の口調でルイーズは呟いた。

 結局、宿屋には泊まらず風音がゴーレムコテージを用意してそこで眠ることになった。あの仮設テントなら風音のゴーレムコテージの方がよいとティアラが主張し、興味の惹かれたルイーズもそれに賛同したためである。

 そして風音が作り出したゴーレムを元にした仮宿泊施設は以前に比べて数段にレベルアップしていた。寝室とキッチンと風呂場と厠ができてそれぞれの場所に水晶球に炎の入った『不滅の水晶灯』が配置されるように造られている。何故か屋上もあった。

「王城でずっと寝てたときにさ。ちょっと配置とかを変えてたらこんなんなってた」

「いや便利ならいいんじゃないの」

 弓花も呆れ顔だが、便利なものは使わにゃ損である。ちなみにゴーレムメーカーは今回でLv2になった。その効果はゴーレム解除後も形が維持されていることと継続時間が若干延びたこと。これ以上便利にしてどうするのだろうか。

 また風音は不滅の布団で造ったローブをルイーズに渡していた。神殿から余分に持ってきた掛け布団はこれで打ち止めで残りは敷き布団と掛け布団のセットが計5組、今のパーティなら十分に問題はないというか、ティアラが風音と一緒に寝ると主張するので実際には4組で足りた。


「さすがに魔力はそこそこ減るけど寝れば回復するし明日の夜も使うと考えれば問題ないよね」

「ああ。ここのダンジョンなら十分だろうし、お前はそもそも格闘戦メインだしな」

 風音の言葉にジンライがそう切り返す。風音はキリングレッグと空中跳びの併用で次第に蹴り技主体の格闘戦士と化していた。魔法どころか剣すらあまり使わない魔法剣士である。そもそも魔法を併用しながら剣を振るったことがないので嘘職業だと思われる。

「よしっ、なんか気合い入ってきた!」

 パンッと右手の平に左のグーで殴りつけ、ふんぬと立ち上がると風音はキッチンへと向かっていった。

「今日はパスタを作る。それもタラスパだッ」

「ガンバレー」

 弓花が応援する。小麦を練ったその食べ物はこちらにおいては主食の一つだ。

 風音はツヴァーラ王国で購入した不思議なポーチのなかから冷凍袋を取り出す。これは長期間冷凍保存ができるエンチャントアイテム。

(こういう点は元の世界よりも優れてるよねえ。魔術万歳)

 もっとも高額なので購入できる層が限られているという難点はあるのだが、ティアラを救った風音は褒賞としてもらったお金をこのポーチと装備品にほぼ全部つぎ込んでいた。ちなみにウィンラードを救った際の褒賞金は親方に作成依頼した狂鬼の甲冑靴とあるアイテムにつぎ込んでいる。故に風音の手持ち金はもうあまりなかったが反対に弓花はあまり使わないので結構な小金持ちであった。なので風音は何かあったら弓花に借りればいいか等と危険な考えを持っていた。


 そんなこんなで風音が冷凍袋から温泉街で買ったタラコを取り出す。

 鍋を取り出し、水を入れ、塩を摘まんでパスタをゆで上げる。牛乳少々にバターをひとかけら、マヨネーズとタラコを混ぜて、フライパンでオリーブオイルをしいてからゆでたパスタと混ぜ合わせた。

 タラコとパスタの組み合わせはこの地方ではないらしく、中々に好評だった。

 そして就寝、不滅の布団の寝心地に驚愕したルイーズは再度「カザネ欲しいわー」と口にしたことでティアラが警戒心を増しつつ風音を抱き締めて眠りについた。


 こうして一日が終わった。



◎オルドロックの洞窟 入り口 朝

 

「さってと」

 伸びをしている風音にジンライが尋ねる。

「魔力の回復はどうだ」

「うん、問題ないよ。あのコテージもそこまで消費するもんじゃないしね」

 操ることを考慮に入れずゴーレム作成プロセスを利用して建物を建造しただけである。もっとも普通は建造の構成を頭の中でやるため、複雑なものを作ることは難しいはずなのだがゴーレムメーカーのクリエイターモードはそうした複雑な処理を容易にこなしてしまう。

「今日は絶好調。バンバン魔術撃っても問題ないね」

 すでに紅の聖柩の魔力も満タンである。申し分ない状態だった。


「おーい、待ったー?」

 入り口から弓花とティアラ、ルイーズがやってくる。

「いや準備体操してたところだから。なんかあったの?」

「いやー、ティアラがランクFだったのを見咎められちゃってさあ」

 各ダンジョンの入り口には冒険者ギルドの管理官が常駐している。中から魔物を出さぬためと、外からの冒険者が入るのを監視するためである。

 ダンジョンについての運営は基本的には国家が運営し、ギルドはそれの下請けとして運営に携わっている。ダンジョンに入るには冒険者ギルドの登録が必須であり、入れるのはランクD以上だが、D以上の同行者がいる場合に限りランクに関係なく中にはいることが許されている。

「あれ、パーティ組んでれば問題ないんだよね?」

 なのでこの風音の認識は正しく、ティアラもそれには頷いた。

「そう言って無理に通ってきましたの。ですが、なかなかにお熱い方でして」

 ティアラが苦笑して答える。

「無理に入ってレベル上げなんて危険だって説得されましたのよ」

「で、最終的にあたしが出て問題なしって言って連れてきたわけ」

 ルイーズがそう言って笑う。

『あの者、次にあったら燃やし尽くしてくれるわ』

「お爺さま、あの方もわたくしの身を案じていってくれたのですから」

 ティアラはそう言うがメフィルスの炎は猛るばかりだった。

「そういえば中級召喚師ならランクCになれるはずだけど、ティアラのそのレイピアで呼び出せるのは違うの?」

「いえ、確かに中級に位置する召喚ですけど、ランクCに昇格するにはランクD資格が必要のようでして」

「そういえばそんなこと言ってたっけ」

 風音は自分の時にそう言われたのを思い出した。

「んーレア素材を持ってけば早くランク上がるんだったよね?」

「しかし早々ないからレア素材なのだがな」

 風音の言葉にジンライがそう答える。

「コアストーン狩りする?」

 弓花が風音の意図を察して尋ねる。コアストーン狩りもまたずいぶん昔のことのように思えるがまだ一ヶ月くらい前の話だった。

「うーん、それは状況見てから考えよっか。ティアラが単独で依頼を受けるわけでもないんだし、今のままでも問題はないしね」

「それじゃあ入りましょう。入り口付近はそれほど異界化してないから普通の洞窟のはずよ」

(異界化ねえ)

 風音は内部構造が広大になる異界化というものがどうしたものか未だにピンとは来ていないが、百聞は一見に如かずということらしく、進めば分かると言われている。なお最深部に異界が繋がってることがあるという噂は、実際には正しくは異世界と呼ぶそうで、どうも風音は混同して誤った知識を持っていたらしかった。


 そうして一行は洞窟の中を歩き始める。

「お爺ちゃんがいれば明かりいらずだねえ」

『そうであろう。そうであろう』

 明かりは風音の持つ不滅の水晶灯と背後にいるメフィルス本人である。

「いくつかの場所から魔物の臭いがしてきてるね」

「近い?」

 弓花の言葉に風音が首を横に振る。

「このまま進む分には問題ないかな。どっかのパーティが一つ戦ってるけど」

 今日も『犬の嗅覚』は絶好調だった。だがジンライがそれに注意をする。

「あまり鼻ばかりにも頼るな。ダンジョンにはアストラル系の敵も出るし近距離で発生すると気付く前に攻められる可能性もある」

「了解」

 風音は経験者の指摘に素直に従う。

「だからといって頼るなということでもないからな。使えるものは使う。ソレ自体は正しい発想だ」

「分かったよジンライさん。ところで左側の通路から何体か急に現れたのは『発生した』って事?」

 風音が左側を凝視しながら尋ねる。

「本当によく利く鼻だ。間違いないだろう。こちらに来るか?」

 ジンライも、他のみんなも戦闘態勢に移す。

「うん。くるね。あっと、さらに増えた。併せて8体」

「この深さでか。珍しいな」

 低層での戦闘難易度は低いと相場は決まっているのだが……とジンライはぼやく。

「知らない臭いだ。なんだろう?」

 風音が疑問に思っていると奥からガサガサガサと黒い物体がやってくる。そこそこの速さで迫るその存在に内心ビビりつつも風音は杖を前に突き出した。

「ええと、アリ?」 

 やってきたのはシビルアント、巨大なアリの化け物だった。

「カザネ、やっちゃうわよ?」

 ルイーズが杖を構える。

「いつでもどうぞ」

 そう返す声とともに

「雷よ。雲の中を走れ!」

 ルイーズの口からスペルが発せられると、杖から白い稲光が放たれた。

 雷の理:第三章に該当する範囲魔術のサンダーストームがシビルアントたちを直撃する。


「2、3匹殺ったかな」

 風音は臭いでそれを認識し、ティアラに指示を出す。

「ティアラ、召喚騎士を出せる?」

「任せてくださいまし!」

 ティアラは抜いたレイピアを前に掲げると

「お出でませ、フレイムナイト!」

 その場で炎の柱があがり炎の騎士を形作った。

(どういうのかは聞いていたけど)

 なかなか強力そうな召喚騎士だった。ランスと大盾を持っており、突進と防御力を重視した作りであることが分かる。

「残りは5か」

「一人1匹か2匹片付けよう。食べ残しはなしだよ」

「アリって酸っぱいって聞くけどホントかなぁ」

 弓花のとぼけた質問に風音は「さあ?」と言いつつ、走り出す。

 その後ろをジンライと弓花と炎の騎士が続く。

 それぞれがほぼ一撃でシビルアントを仕留め、最後の一匹も風音のキリングレッグによって即死、そして風音のスキルリストに『壁歩き』が追加された。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・白銀の胸当て・白銀の小手・銀羊の服・甲殻牛のズボン・狂鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪

レベル:20

体力:70

魔力:114+300

筋力:27

俊敏力:22

持久力:16

知力:27

器用さ:19

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』

スキル:『ゴブリン語』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:二章』『癒しの理:二章』『空中跳び』『キリングレッグ』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』


風音「久々にスキル手に入ったけどなんか便利そう」

弓花「スパイディ的なヤツだね」

風音「ちなみに魔術の呪文だけど、本来はルイーズさんのようなスペルを唱えて撃つのが普通なんだけどスペル自体は人それぞれだから私のようにスペル・ファイアとかでもおかしくはないんだって」

弓花「本人のイメージに合わせた言葉の方が出しやすいってのはあるみたいね」


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