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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
水晶竜編

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第百四十一話 水晶化を解こう

「はいはーい。じゃあこっちもいくよー」

 風音が手のひらをクリスタル化した人に当て「スキル・水晶化・解除」と唱えると水晶であった人型が解凍されるように透明な姿から色を取り戻し、中の人が「ぶはぁ」と息を吹き返す。戻るときに骨やら筋肉やら内臓やらが透けて見えてビジュアル的にはかなりアレな感じだったが、まあ元に戻ったようだった。

 それを見てエイブラたちが再び驚きの歓声を上げる。これですでに5人目。エイブラも最初の態度とは打って変わって風音に感謝の言葉を投げかけていた。

 あのクリスタル化とは本来解ける者がほとんどいない呪いのような状態異常だ。通常であればたとえ回収できたとしてもその後は解呪できる人間を捜し出し、高額の解呪代を支払ってクリスタル化を解いてもらうことになる。その金額を貯めないといけないし、何年もクリスタル化されたまま放置ということも少なくはないのだ。それを無償で行う風音は彼らにとってまさしく救いの女神だった。


「しかし、あんな圧倒できるんなら、救出隊を設ける必要なかったんじゃねえの?」

 遠目でその様子を見ているヨークが横にいる直樹に尋ねる。

「あの場で姉貴たちが勝てるかはやってみるまでは分からなかったからな。準備できるならしておいた方がいい」

 そう直樹は返す。もっとも戦力外の人間が気まぐれで戦闘に参加しないように別の役目を与えたという面もある。そしてそれは直樹に『対して』も、ということでもあった。

 硬度のある魔物相手では直樹の魔剣を飛ばす技では威力が不足している。ブレスによって魔剣が腐食、或いは破壊される危険もあった。実は今回、風音が手に入れた水晶化のスキルでなくとも無限の鍵の解除機能を使えば水晶化を解くことはできるのだが、腐食した武器までは修復はできない。また接近戦は直樹の回避力ではクリスタルブレスを避け切れないと判断されていた。これは正確にいえば、神狼化弓花とジンライだけが接近戦を許可されたというべきだろう。風音も例外ではなく必殺技を当てられる状況になるまで姿を見せなかったのも、風音自身がブレスを避けられないと判断したからだった。

 そうした判断は戦闘の前の時点で直樹にも伝えられている。下手に誤魔化されなかったことは信頼の証と考えるが、己の実力不足を痛感せざるを得なかったのも確かなことだった。

「実力不足を痛感するな」

 鍛えなければと直樹は感じた。その言葉にヨークが首を傾げる。ヨークにしてみれば直樹も風音たちと同じカテゴリの存在だ。直樹の思いはヨークには理解できないものだった。


「おおお、これがあの伝説の宝石レインボーハートなのね」

「わたくし、生まれてこの方、ここまで輝く水晶を見たことがありませんわ」

「私は宝石自体ほとんど見たことないけど……これは凄いわねえ」

 ルイーズとティアラ、弓花はレインボーハートの観賞会である。ティアラ、ルイーズが騒いでいる通り、これは王族の人間でも滅多に見ることができないシロモノだ。手に入るのは精々が欠片を加工した装飾品で完全な形であるこれは売れば一生笑って暮らせるほどのものなのだ。

 そしてルイーズたちの横にはヒッポーくんクリアと名付けられた、クリスタルドラゴンから取れた竜晶石でできたヒッポーくんが、ヒッポーくんハイと並んで立っていた。見た目は大理石の馬と水晶の馬とが並び立っているという感じでどちらも芸術性の高い出で立ちだった。それとヒッポーくんクリアの動力は地竜の竜の心臓を使用した。竜気を帯びているため、能力の低い魔物では近付きさえしないだろうと予測された。

 残りのクリスタルドラゴンの素材も不思議な倉庫に仕舞い、三分の二くらいは換金する予定だ。ちなみに素材のランクとしては黒岩竜には及ばないため、黒岩竜の素材がある限りは用途は限定される。どちらといえば装飾としての要素を出したい場合に使用するものとなるだろう。また今回は竜の首が完全な形で手に入ったのも風音には嬉しい話だった。前回は破壊してしまったので。

 なお、今回のクリスタルドラゴンは基本無機物であり、ユッコネエは食べてパワーアップとかはできない。試しに竜晶石をおいてみたが「ふにゃあ」と言って顔を背けていた。


 そして治療も終え、帰る支度を整えて全員で街への帰還となった。



◎モロゴ山 山道


 帰り道である。風音たちの周囲は行きとは違い、非常に賑やかなものとなっていた。風音たちの旅の話もエイブラたちを沸かせたが、エイブラたちの竜退治の話も風音にとっては大変興味深いものだったのだ。特に飛竜との戦闘はいずれ挑むかも知れないことを考えれば非常に参考になった。

「鎖か。確かに巨大な魔物を相手にするときには必要かもしれないねえ」

「あんたのあのバケモノみたいな蹴りも当たらなきゃ意味ないからな」

 馬車の御者席に座る風音の言葉に併走して馬に乗っているエイブラも頷いて答える。

「ただ、そういう道具を使うにはそれこそ人数が必要だよね」

 風音の言葉にエイブラも顎をさすりながら「そうだな」と言う。

「確かに何人もかけずり回って木や岩に括り付けて使うからな。緩いと外れるし自分の身体に絡まったりでもすれば千切れちまうこともある。ソレ専門のチェーンマスターって鎖をかける連中もいるんだが、中でもジャパネスから来たオロチってヤツはたったひとりで成竜も捕縛するらしいな」

「そりゃあ凄いね」

 平均的な成竜の実力は今回戦ったクリスタルドラゴンと同等ぐらいと言ったところだ。もっともクリスタルドラゴンにはクリスタルブレスという成功確率の極めて高い状態異常攻撃があるので実際に戦闘になった場合にはクリスタルドラゴンの方が厄介ではあるのだが。

 ともあれ、それを一人で捕らえるというのは尋常ならざる技量の持ち主であるには違いない。

「なんでもどこからともなく黄金の鎖を呼び出して竜を捕らえたらしいな」

 そしてエイブラの続きの言葉を聞いて風音はその人物の正体に見当が付いた。

(それは制約の黄金鎖ギアス・ゴルディチェーン……だね。多分)

 黄金の鎖というならば恐らく1vs1ならば最強と考えられている捕縛を目的としたアーティファクトのことだろう。つまりオロチとはプレイヤーだと風音は推測した。

「後は竜を拳で倒す女とかの話を聞いたが、どこでだったかなあ。ここじゃなくてオルトの北の方にある竜狩りの街だともっと実力のある連中も多いんだけどな。ま、俺はこっちの方が性に合ってるんだが」

 そう口にするエイブラだが、風音の判断ではクリスタルドラゴン戦ではギリギリ戦力外だった。ただこれはクリスタルブレス回避を前提として考えた場合の判断であるためで、実のところ、エイブラは回避を考えなければ戦闘力は素の弓花に近い、直樹と同等程度の実力は持っている人物ではあったのだ。

「ところでエイブラさん、ちょっとお尋ねしたいんだけど」

「なんだよ?」

 すっかり風音と気の知れたエイブラは、即尋ね返す。後ろでそれを見ている直樹がヤキモキしていた。

「このヒポ丸くんの先にあるこれ、どう思う?」

「すごく……大きいです」

 エイブラも思わず丁寧語で答えてしまった。それぐらいに立派なものだった。視線の先にあるのは黒岩竜の角だ。10メートルクラスの成竜の中でも頭部のデカい巨頭竜でしか取れないようなサイズの角が今、風音を悩ませているものだった。

「これの加工をしたいんだよね。でもどこ行っても無理って言われるんだよ」

 風音の言葉を聞きながらエイブラはその角をコンッと叩いてみる。すると凶悪な竜気が反射的に飛んでくるのを感じた。

「すげえ硬いな。あと元の持ち主の竜の凶暴そうな気配が竜気を通して感じられる」

 さすがに竜の扱いのスペシャリストと言ったところか。成竜狩りにも出たことのあるエイブラはその角の価値をすぐさま理解した。

「こいつが噂に聞いた黒岩竜の角か。名ありがいちパーティに倒されたって聞いたときには、何かの間違いなんじゃねぇかと思ったが、相当酷い相手だったみたいだな」

「まあ、ね」

 エイブラはその角を見て、少し探査の魔術などで調べてもみたようだが、だが風音の方を向いて首を横に振った。

「こりゃ成竜の中でも防御に特化したタイプのさらに突き詰めた奴の角だ。もしかすると素材保管人なら知ってるかもしれないが」

「ああ、その可能性は気付かなかった」

 冒険者ギルド御用達の巨大魔物の素材をいち早く保管する彼らならば確かに知っているかもしれない。

「だがあんま期待しない方がいいな。人間でどうにかなるか微妙そうだ。こいつは」

「人間では?」

 エイブラの言葉に引っかかりを覚えた風音が尋ね返す。その風音の問いにエイブラも頷いて返した。

「ああ、この手のことを一番よく知ってるのは人間よりも竜の方だ。お前等もドラゴンスレイヤーの称号持ちなら竜の里に行って尋ねることもできるんじゃないのか?」

「なるほど」

 竜の里でも尋ねてはみる予定だったが、どうもそれが正解のようである。ちなみにレインボーハートも同じように加工するなら竜に聞いた方がよいと聞かされた。あそこまで完全な形で手に入った例はあまりなく、手にいれてもそのまま飾るかカットして装飾品とするか、どの道人間の手で使用目的で加工されること自体がほとんどないのが理由だ。

 そしてそれ以外の素材はドルムーの街の魔具工房でなら加工が可能だろうという事だった。どうやらその街にハイヴァーンの匠がいるらしい。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:30

体力:107

魔力:181+420

筋力:52+10

俊敏力:43+4

持久力:29

知力:57

器用さ:38

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv2』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『頑丈な歯』『水晶化』


風音「水晶化ってのは物体を透明に出来るスキルなんだよ」

弓花「つまり?」

風音「コテージに窓ガラスが設置できる!」

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