表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
最終章6 救世少女編
1103/1136

第千四十九話 神を砕こう

『弓花、行こう。時間ないんだから一気に攻めて、削りきるよ!』

『了解。そんじゃあやるわよ!』


 二剣の黄金の巨人と二槍の巨大銀狼が一斉に駆け出し、竜を模した巨大な神機兵マキーニも両腕から光の剣を出して構えた。もはや形勢は逆転している。自身の能力は風音たちを上回っているし、このままアヴァドンの復活を待てばジルベールの勝利となる。アヴァドン復活後は勇者ガイエルを捧げることで世界は崩壊し、そして、その先にあるのは次代の創造神である己の姿だ。栄光まで後一歩というところにまで辿り着いていると認識しているジルベールが、余裕の声で風音たちへと尋ねる。


『やけくそか。それがしを倒すなど本当に可能と思っているのか?』

『思っているかどうかじゃないよ。倒すしかないんだよ。勇者が魔王に敗れたら当然大魔王アヴァドンの出番はないからね。だから、さっさと倒れなよ勇者様!』

『酔狂なことだな。あちらの世界で大人しくしていれば、死ぬこともなかったろうに』


 そう返したジルベールの言葉には、ある種の哀れみが込められていた。


『師匠たちを見捨てて? あっちで遊んでろとでも? ソレを冗談じゃないって思えるから私たちはここにいるのよ』

『そういうことっ!』


 しかしふたりの少女はジルベールの言葉を跳ね飛ばし、二槍と二剣を同時に叩き込む。


『チイッ』


 その一撃で装甲を破壊され衝撃によって吹き飛ぶジルベールだが、すぐさまブースターを噴射させて態勢を整え、風音たちへと再度突撃して光剣を振るう。その光の刃はあまりある魔力を刃に変換させたものだ。単純だが強力なその斬撃をロクテンくんが剣と剣をクロスして受け止める。


『クッ、やはり重いな。さすがは神というところか』

『けど旦那様。私だって負けてはいないんだからねっ』


 そう叫ぶ風音がスキル『神猿の剛腕』を発動させる。そのまま瞬間的に腕力を増大させてジルベールの剣を弾き返すと、足を動かして爪代わりのドラグホーントンファーをジルベールへと振るう。


『スキル・キリングレッグ!』

『食らうか!』

『絶対喰らわせる!』


 逆噴射ブースターで下がったジルベールだが、風音がバックパックブースターの勢いでさらに踏み込んで蹴りを届かせると、ジルベールの巨体は塔を覆う黒い光の壁まで吹き飛んでいった。


『やりましたか?』

『いや……けど、今までで一番ダメージは与えられたはず』


 そのキングと弓花の会話の通り、確かに攻撃は決まっていた。その証拠に、ジルベールはその体を震えさせながらなんとか立ち上がったという感じであった。


『ググ……やるな』


 しかし、ジルベールの声には未だに自信に満ち溢れている。今の風音の攻撃をものともしないだけの余裕がそこにはあった。


『しかし、次の我が神意威光の一撃に対して、お前たちは果たして保つかな?』


 一撃で形勢を逆転できるだけの大技がジルベールにはあるのだ。また今の風音の攻撃による損傷に対しても徐々に修復が始まっていた。全方位攻撃と再生能力。魔力の川ナーガラインの無制限の魔力供給により得ている力こそがジルベールの自信の源だ。しかし、風音と弓花の目の輝きもまた衰えてはいない。


『だったらその前に』

『倒せばいいだけだよ!』


 そして、風音と弓花が槍と剣を重ね合わせて『友情タッグ』を発動させながら突撃するが、それをジルベールは左右の光剣を交差させて受け止めた。その様子に風音が眉をひそめる。


『今のを受け止めた?』

『神を甘く見るな。そしてな。それがしの力は溜まったぞ』

『チッ、弓花は私の後ろに!』

『させると思うかッ』


 風音が叫ぶが、ジルベールがさらに一歩踏み出して、ロクテンくんへと全力で剣を振るった。それを風音は龍神の大剣で受け止めるが、威力を殺しきれずに吹き飛ばされて床を転げていく。


『うわぁああああ!』

『風音!?』

『不味い。これでは主様を守る手段がない!?』


 弓花に乗っているキングが危機感を伴った声を上げる。弓花だけでは神意威光は防ぎきれないのだ。初撃もバーンズ流奥義の『反鏡』で威力こそ軽減はさせられたが、防ぎきれずに随分とダメージを受けていた。故にもう一度喰らえば弓花の身は保たないし、キングの方も召喚解除されてしまうだろう。

 しかし、盾役の風音の乗るロクテンくんは離され、さらにもうジルベールの身体は光り始めていた。その様子に黄金剣の中からナーガの慌てた声が響く。


『不味いぞカザネ。あれを撃たれれば、もう』

『分かってるよ旦那様。ここで私が防げても、弓花とキングがリタイアすればジルベールに敵わない。それで詰みになっちゃう』


 風音が目を細めながらそう答える。その言葉にジルベールがわずかに笑う。


『ふっ、そういうことだ。これですべてが』

『ま、撃たれたらだけどね』


 その風音の言葉にジルベールがわずかばかりの疑問を浮かべたときにはもう遅い。仕込みはすでに完了していた。風音はずっと待っていたのだ。ジルベールが神意威光に意識を集中させる瞬間を狙っていた。


『その前に全部脱ぎ散らかせ。スキル・神速の着脱! スッポンポンだ!!』

『はっ!?』


 間抜けな声を上げたジルベールだが、同時に神機兵マキーニのボディが勢いよくその場で分解していく。それにジルベールが『なんだ、これは!?』と叫んだがすでに手遅れである。こうなってはもう神意威光を撃つどころではない。

 そしてすべての装甲がその場でパージされると、スッポンポーンな殺魅がその場に荒ぶる鷹のポーズで飛び出した。


『どういうことだ、これは? ガイエル、まさか貴様なのか!?』


 外された神機兵マキーニの頭部の中からジルベールの声が響くが、殺魅ことガイエルの肩は震えていた。それは解放された喜びによるものではない。恥辱の怒りに身体が震えていたのだ。それからガイエルはジルベールが憑依しているのであろう神機兵マキーニの頭部を睨みつけて笑う。


『よぉ、ジルベール。愉快なことになってるだろ? なあ、俺も今過去最悪に愉快だよ』


 その瞳は怒りに染まっていた。その鬼気迫る顔にジルベールが思わず息を飲むような気持ちになっが、ガイエルの口は止まらない。


『悪魔どもに良いように使われた後で、まさかまだこれだけの屈辱を味わうとは思わなかったぜ。ああ、そうだ。あのチンチクリンは達良のバカの仲間だった。忘れていたわけじゃあないが甘かったぜ』

『なるほどね。ガイエルもジルベールへの怒りに打ち震えているようだね。ふふふ、今ならこれもいけるね。スキル・最速ゼンラー。さあ、やっておしまいなさい。私の下僕ガイエル!』

『オォォオオオオオオオオオ!!』


 叫び声をあげたガイエルが、足裏のブースターから炎を噴き出して全裸で突撃する。その瞳からは涙が流れ出ていた。そう、大人とて泣くのだ。悲しいときには涙を見せることもあるのだ。


『クッ、速い!?』


 空中で装甲を繋ぎ合わせて再び神機兵マキーニの形をとったジルベールだが、その動きは先程までと違って精彩を欠いていた。何しろ今のジルベールはただ鎧を繋ぎ合わせただけの存在、並べて無理やり動かしているに過ぎないのだ。ガイエルというコアがあった先程とは勝手がまるで違う。

 そのジルベールへと、ガイエルが文字通りの鉄拳を食らわせていく。


『はははははは、笑えよテメエ。あんなクソガキに服従を誓わテイムされた俺の姿を。俺は精神世界とはいえ、あのチンチクリンに強引に従わされたんだぞ。テイムの条件のためにな。靴を舐めて、風音様って叫んで土下座して、腹這いになって足で踏まれてワンと鳴いたんだぞ。お前にこの屈辱が分かるか!!』


 そのガイエルの言葉通り、今の彼は風音にテイムされた状態にあった。

 悪魔も魔物の一種として扱われている以上、相手がプレイヤーであってもテイムは可能なのだ。ただし、テイムをするためには条件が必要だ。なのでガイエルは手っ取り早く従属ポイントを稼ぐために、ありとあらゆる従属行為を風音に行ったのである。直樹にとってはご褒美以外の何物でもない行為だが、それはガイエルにとっては屈辱以外の何物でもなかった。特にお腹をあの小さな足でギュッと踏まれた際に生じた心の変化にガイエルはどうしようもなく怯えていた。チンチクリンの「んー、これでいいのかなぁ?」と首を傾げながら踏みつけてくる姿を見て、何かの覚醒を感じたのだ。その先へ行けば何かが終わってしまう予感があった。

 

『テイム? それに神速の着脱ってどういうこと?』


 それから、呆気にとられていた弓花がようやく正気に戻して風音に尋ねた。対して風音がドヤ顔で答える。


『ふふふふふ、私にはアイムの腕輪があるからね。テイムしてさえいれば魔力のパスは繋がるから、召喚体同様にガイエルにもスキルを使わせることもできるのさ』

『ああ、あのリザレクトの大闘技会で手に入れた魔法具か。すっかり忘れてたわ』


 弓花が『なるほど』と頷いた。アイムの腕輪、それはスペルやスキルを従属した魔物を通して使うことができる魔法具だ。それを通して風音は服を脱ぐことに特化したスキル『神速の着脱』をガイエルに使用させた。さらに続けて風音は『最速ゼンラー』を発動させていた。『神速の着脱』によって今のガイエルのゼンラー率は100パーセントに達している。デッドウェイトを外して全裸ネイキッドとなったガイエルは今や紛れもなく最速だ。もはやその姿すら見えぬほどの速度で飛び回り、ジルベールを殴りつけていた。


『オラァ。神意威光も俺のコアを通して放つものだからな。ただ鎧に宿ってるだけじゃあ使えやしねえだろ。今のお前は鎧を強引につなぎ合わせるだけで精一杯ってわけだ。はは、ざまあみやがれ!』

『馬鹿な。こんなフザケた方法でそれがしがやられるだと? それがしは新たな世界を生み出す創造神に』

『うるっっせぇええええ!!』


 ガイエルの怒りのアッパーが決まり、ジルベールが吹き飛ぶ。


『おら、やれ。風……ご主人様!』

『あいよ。カザネバズーカいっくよぉお!!』


 すでに準備をしていた風音は上空に上がっていて、ロクテンくんの巨体を使って己の最強の蹴り技を発動させる。足元にジュエルカザネを集め、スキルで『ドリル化』し『爆裂鉄鋼弾』が付与し、ロクテンくんに設置されたスラスターとブースターの火を噴かせ、さらには加速系統のスキルも併用することで凄まじい速度でジルベールへと直進し、


『キリングレェエエエエエエッグ!』

『ガァアアアアッ』


 放たれた風音の渾身の一撃はジルベールの宿った鎧を打ち砕いていく。


『グガァア、クッ……だがまだ完全にはやられては』


 しかし、打ち砕かれてなおジルベールは鎧に宿っていた。勢いが強すぎたのも幸いしたのだろう。砕けた鎧の破片は大きく、ジルベールは再びひとつに纏まろうと欠片を集めたところで、


『それじゃあ、これで終いね』

『貴様はっ!?』


 その場に巨大な銀狼の姿の弓花がいることに気付いた。そう、弓花はジルベールの動きをすでに読んでいた。さらには弓花の左右の腕に握られた槍もすでに神気が集中して準備は整っていた。それを見たジルベールが驚愕するが、もはや対処するには遅きに失した。


『バーンズ流奥義『七閃』二連!』


 そして、十四の流星の如き突きがジルベールの宿った鎧の欠片たちを粉々に打ち砕き、その場で細かな破片が飛び散り、消えていったのであった。

名前:由比浜 風音

職業:竜と獣統べる天魔之王(見習い)

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター・守護者


装備:風音の虹杖・ドラグホーントンファー×2・鬼皇の竜鎧・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩(柩に飾るローゼ)・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・金翅鳥の腕輪・プラチナケープ・守護天使の聖金貨・金色の蓄魔器


レベル:66

体力:225+35

魔力:722+950

筋力:162+70

俊敏力:210+80

持久力:109+40

知力:155+10

器用さ:151+10


スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』『テレポート』『カイザーサンダーバード』


スキル:『見習い解除』『無の理』『技の手[8]』『光輪:Lv2』『進化の手[5]』『キックの悪魔:Lv2』『怒りの波動』『蹴斬波』『爆神掌』『コンセントレーション:Lv3』『ゾーン』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv6』『イージスシールド:Lv2』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス:Lv2』『インビジブルナイツ』『タイガーアイ』『Wall Run』『直感:Lv3』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv3』『情報連携:Lv4』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv5[竜系統][飛属]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv4』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv3[竜系統]』『魔王の威圧:Lv3』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv3』『真・空間拡張:Lv2』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv5』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『神猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス:Lv2』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』『魔力吸収:Lv3』『白金体化』『友情タッグ』『戦艦トンファー召喚:Lv2』『カルラ炎』『魔物創造』『ウィングスライサー』『フェザーアタック』『ビースティング』『弾力』『イーグルアイ:Lv2』『ソードレイン:Lv4』『空中跳び[竜系統]』『暴風の加護:Lv2』『最速ゼンラー』『ソルダード流王剣術・極』『タイタンウェーブ:Lv2』『宝石化』『ハウリングボイス:Lv2』『影世界の住人』『知恵の実』『死体ごっこ』『ハイパーバックダッシュ』『ドリル化:Lv3』『毛根殺し』『ハイパータートルネック』『爆裂鉄鋼弾』『ウィングアーム』『Roach Vitality』『黒曜角[竜系統]』『空身[竜系統]』『神の雷:Lv5』『雷神の盾:Lv5』『Inflammable Gas』『神速の着脱』『触手パラダイス:Lv2』『ハイライダー』『リーヴレント化:Lv3』『DXひよこライダー召喚+:Lv5』『ミラーシールド』『由比浜 風音:Lv4』『硬化』『極限耐性』『ダンジョンメーカー:Lv4』『神之眼』『明鏡止水』『お供え物を強要する能力』『後光』『お賽銭箱』『天之岩戸』『ゴーレム守護兵装カザネハート』『共生進化』


風音「今度こそ勝ったかな」

弓花「いや、ちょっと……待って」

風音「むむ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ