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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
最終章6 救世少女編
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第千三十八話 師匠と分かれよう

※所用により明日の更新はお休みします。

『あの男、我が主の求愛を……なんという』


 弓花とジンライ、二人の様子を見守っていたキングがそう呟き、怒りを露わにしていた。

 師匠でもあり、確かな強者であるジンライでならば、弓花のつがいとして相応しいとキングは考えていた。強きオスが強きメスと繋がるのであれば、己の次代の主にふさわしい、それはそれは強いお子様が生まれるだろうと期待していた。

 だが、ジンライはそれを断った。極上の女を前に背を向けたのだ。故に、なんたる愚か者かとキングはいきり立ち、噛んだ下唇からは血が滲み出ていた。

 ならば主の無念を一太刀だけでも……とキングが腰を浮かしかけたところに「止めておきなさい」との声がかかった。その言葉にキングが少しばかり冷静になって、声の主へと視線を向けた。


『お……おや、ルイーズ様。目を覚まされたのですね』


 キングが表情を強張らせながらも元に近い形に戻しながら、己の横で倒れていたルイーズへと口を開く。


「まあねえ。一応、意識だけはあったのよね。私に限っては」


 ルイーズがゆっくりと上半身を起き上がらせる。そしてルイーズ本人の言葉通りに、彼女はエイジにイタズラされるために意識を残されたまま、身体を動かせないでいたのだ。だから、先ほどまでのやり取りも聞いていたし、何とも言えない顔になっていた。

 また、他のメンバーやシップーもセフィロトポーションの効果が出てきたのか、意識を取り戻しつつあるようだった。


「ハァ……ちょっと憂鬱だわ」

『ルイーズ様が憂鬱? 主の方ではなく?』


 この場で最も哀れであるのは己の主人である弓花だろうとキングは考えていた。むしろジンライに好意を寄せているルイーズにしてみれば悪くない話のはずだろうとも。しかし、ルイーズは肩をすくめて首を横に振る。


「何言ってんのよ、羨ましい限りじゃない。あの子はあたしたちの誰も手に入れられなかったものを手に入れているのよ」

『……それはどういうことで?』

「さてね。そういうのは自分で考えなさい」


 その言葉にキングが首を傾げるが、ルイーズは苦笑しながらジンライと弓花を見る。


「これはシンディには見せられないわね。あの子、嫉妬深いから」


 ジンライに恋いこがれた誰もが得られなかった、ジンライから求められる繋がり。それをまざまざと見せつけられてはルイーズも穏やかではいられなかった。

 シンディのときとは違う。あのときの自分との差は、子供の有無であって女としてのものではなかったとルイーズは理解していた。

 けれども弓花は違う。自分では決して得られないと分かるからこそ、目の前の関係はルイーズに眩すぎた。


「ああ、もう。見てらんないわね。ほら、ふたりともイチャイチャしてないの」


 立ち上がったルイーズがパンパンと手を叩きながら近付いていくと、弓花が顔を赤くしながら涙を拭い、ジンライはいつもと変わらぬ顔をしてルイーズを見た。


「ルイーズ姉さん、起きたのか」

「ええ。つい今ね。メフィルスやシップーたちもって、キャッ!?」

「なぁああああ!」


 可愛らしい悲鳴をあげるルイーズの横を巨猫が横切り、ジンライに飛びかかる。


「なーなーなーー」

「おい、シップー。ちょっと興奮し過ぎだ。先ほどは悪かった。だから手を噛み付くでない!?」


 シップーがジンライにゴロゴロと擦り寄りながら、右腕を噛んだり、爪で切り裂こうとしている。シップーにしてみれば、ジンライの右腕は悪いものなのだ。それを排除しようとするのは当然であった。


「ああ。なんか、こういう感覚、懐かしいかも」

「あたしもよユミカ。それとお帰りなさい」

「うん。戻ってきたわよルイーズさん」


 そう返す弓花にルイーズが腕を組んで尋ねる。


「それで、生きていたことは素直に嬉しいけれど、どういうことなのかしら? ゴーレムのカザネみたいに何かに宿って復活したってわけじゃないみたいだし」

「ええ、ゴーレムの風音の方は、今は本体と合流してひとつになってます」

「?……よく分からないけど、あの子も無事なのね」


 首を傾げるルイーズに、弓花は力強く頷いた。


「はい。風音もタツオも、レームも、エミリィもみんな戻ってきています。今は風音の転移魔術でミンシアナやツヴァーラとか色々な国に飛んで救助に入ってますけど」

「転移でって……そうか、カザネには魔力の川ナーガラインを操る力があるのだからそういうことも可能なわけね。けど今までどこに行ってたのよ? カザネとユミカが死んだって予言も神様からもらってたから、本当にもう駄目かと思っていたのだけれど」

「どこというと……まあ予定通り通りに自分たちの世界に戻れはしたんだけどねえ。けど、出入り口を悪魔に壊されて、新しい入り口をつい先ほど開通させたの。死んだ予言ってのは分からないけど、なんとなく予想は付くわよルイーズさん」


 風音と弓花が死んだと予言があったとしても、それがあちらの世界の……であるならば、確かにそれは事実なのだ。

 それからルイーズやジンライの反応を見てから弓花が首を傾げる。


「あれ、もしかして全然伝わってない? あっちの神様を通じて、こっちに戻る伝言をお願いしてるはずなんだけど……その、ノーマン様も「神々のお言葉、決して間違うことなく我らに届いておる」って返事が返ってきてたって連絡があったし、てっきりもう私たちが戻ってくることを知っているものと思ってたんだけど。師匠も……聞いてないみたいですね?」


 弓花の言葉に、ジンライとルイーズが首を傾げる。なお、ジンライは弓花の言葉をどこかで聞いた気がしたのだが、大したことではなかろうと思いすぐに忘れた。

 それから弓花がメフィルスたちを介抱しながら、かいつまんで状況を説明していく。そして、それはジンライやルイーズにとっては驚愕すべき事実であった。




  **********




「なるほど、世界と世界の繋がりを断ち切られた……と。今回の世界の滅亡といい、無駄にスケールを大きくしたがるわね。あの悪魔の王様は」


 そうルイーズが唸る。

 弓花から聞いた話は、ルイーズの常識を揺るがす話ばかりであった。

 簡単に弓花の話を纏めれば、金翅鳥こんじちょう神殿であちらの世界に落とされた上に元の世界への帰還を封じられた弓花たちは、大魔王アヴァドン復活の陰謀を知り、それを止めるべく戦力を増強しながら、元の世界へと戻るために新たにダンジョンを生み出した……という内容であった。

 それからジンライが感慨深い顔をして、天井を仰ぐ。


「そうか。カザネはやはり暴れおったか。相変わらずということだな」

「はい。あの子はなんも変わってません。とりあえずメールで現在の状況報告が来たんですが、各国の獣海の掃討の目処はひとまず立ったそうです。外ではハガスとガイエル、それにユキトたちと風音二号や冒険者たちが戦っています。風音三号は、直樹たちと一緒に地下のオロチさんたちを助けに向かってます。指令を失ったキメラたちが暴れているみたいで、けどミナカも見つかってそっちもどうにかなりそうです。それで風音一号は頂上に向かってます」

「ふむ。カザネが何人もいるように聞こえたのだが」

「ええ、ついさっき三人に増えたみたいですよ」


 弓花の返しに、ジンライたちが変な顔をした。

 何を言ってるんだこいつは……そう言いたそうな顔であったし、弓花もジンライたちが何を考えているかも分かったが、実際に見てもらうのが一番早いと考え、弓花は説明をスルーした。


「ま、まあ、良い……かは分からぬが、方針は決まっておるようだな。それで弓花よ、お前はどうする?」

「私は風音一号の向かっている頂上に行こうと思います。そこにアヴァドン召喚の儀式台があると風音の『神之眼』が発見しましたので」


 その言葉にジンライが頷く。


「分かった。であれば、ワシはユキトを倒しに行こう」

「ユキトをですか?」


 一緒に来てくれると思っていた弓花が「むぅ」という顔をするが、ジンライは言葉を重ねる。


「お前が言うたのであろう。ユキトなんてサクッと倒して、悪魔の陰謀なんてサクッと止めてこいとな」

「え? それって、夢の……ああ、そうですね。そう言いました。あれ、ということは?」


 夢の中で過ごしたジンライとの濃密な修行の日々、願望の産物だと思っていた師匠が本物だったと弓花はここでようやく知ったのだ。


(ってことは……ああ、夢だからって、ハメ外さないで良かった)


 同時に心底安堵もしていた。

 多感な年頃である弓花は、夢の中のジンライとウッフンアッハーンなひと夢のアヴァンチュールを過ごしてもいいんではないか……とずっと葛藤し続けていたし、夢から戻ってきても逃したチャンスに身悶えし時々夜中に足をジタバタさせてもいたのである。

 だが、今は己の自制ヘタレ心に感謝していた。でなければ、夢の中でアッハンウッフーンできていたとしても、できなかったとしても弓花はこの場から逃げ出していたことだろう。だが、その弓花の心の裏を察した人物がこの場にひとりいた。ルイーズである。


「あら、ユミカ。すごい汗よ。何か思い出したことでもあったのかしら? ほら、夢の中のこととか。もしかしてエロいことかしら? エロカさんって呼んだ方がいいかしら?」

「いやいや。な、何を言ってるのかなルイーズさんは!?」


 ニタリと獲物を見定めた蛇の目で笑うルイーズにブワッと冷たい汗を流しながら弓花が首を横に振る。

 夢の中で共にいたルイーズは、当然弓花の考えに気付いていた。当時は夢の中だったし、出てきた弓花も夢の人物だと思っていたが、そうではなかったとルイーズも察している。

 それから弓花が誤魔化すように、窓の外を見て口を開く。


「え、えーと師匠。ユキトですけど。あいつ、今すごい数の亡霊騎士を召喚してるみたいです。数千か、万を超えるか……師匠なら問題ないとは思いますが気を付けて下さい」

「ふ、分かっておる。お前の師匠だぞ。何も心配はいらぬさ」

「ふふ、分かってます」


 ジンライの言葉に弓花が笑う。

 その横でルイーズがジンライの頭を小突いていた。それにジンライが首を傾げながら「何をするルイーズ姉さん」と真顔で尋ねる。女の機微に気付けないのもまたジンライであった。


「何でもないわ。少しムカついただけだから。それよりジンライくん、とっとと行くわよ。ユミカ、あなたも頑張りなさい!」

「はい、ルイーズさん!」


 弓花がガッツポーズを取って頷き、それからメフィルスやカルティ、レゾンも目を覚ましたところで、彼らはこの場でそれぞれの目的地に向かって移動を開始した。

 そして戦いは最終局面へと突入し始めていたのである。

名前:由比浜 風音

職業:竜と獣統べる天魔之王(見習い)

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター・守護者


装備:風音の虹杖・ドラグホーントンファー×2・鬼皇の竜鎧・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩(柩に飾るローゼ)・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・金翅鳥の腕輪・プラチナケープ・守護天使の聖金貨・金色の蓄魔器


レベル:66

体力:225+35

魔力:722+950

筋力:162+70

俊敏力:210+80

持久力:109+40

知力:155+10

器用さ:151+10


スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』『テレポート』『カイザーサンダーバード』


スキル:『見習い解除』『無の理』『技の手[8]』『光輪:Lv2』『進化の手[5]』『キックの悪魔:Lv2』『怒りの波動』『蹴斬波』『爆神掌』『コンセントレーション:Lv3』『ゾーン』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv6』『イージスシールド:Lv2』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス:Lv2』『インビジブルナイツ』『タイガーアイ』『Wall Run』『直感:Lv3』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv3』『情報連携:Lv4』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv5[竜系統][飛属]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv4』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv3[竜系統]』『魔王の威圧:Lv3』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv3』『真・空間拡張:Lv2』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv5』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『神猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス:Lv2』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』『魔力吸収:Lv3』『白金体化』『友情タッグ』『戦艦トンファー召喚:Lv2』『カルラ炎』『魔物創造』『ウィングスライサー』『フェザーアタック』『ビースティング』『弾力』『イーグルアイ:Lv2』『ソードレイン:Lv4』『空中跳び[竜系統]』『暴風の加護:Lv2』『最速ゼンラー』『ソルダード流王剣術・極』『タイタンウェーブ:Lv2』『宝石化』『ハウリングボイス:Lv2』『影世界の住人』『知恵の実』『死体ごっこ』『ハイパーバックダッシュ』『ドリル化:Lv3』『毛根殺し』『ハイパータートルネック』『爆裂鉄鋼弾』『ウィングアーム』『Roach Vitality』『黒曜角[竜系統]』『空身[竜系統]』『神の雷:Lv5』『雷神の盾:Lv5』『Inflammable Gas』『神速の着脱』『触手パラダイス:Lv2』『ハイライダー』『リーヴレント化:Lv3』『DXひよこライダー召喚+:Lv5』『ミラーシールド』『由比浜 風音:Lv4』『硬化』『極限耐性』『ダンジョンメーカー:Lv4』『神之眼』『明鏡止水』『お供え物を強要する能力』『後光』『お賽銭箱』『天之岩戸』『ゴーレム守護兵装カザネハート』『共生進化』


弓花「ハァ……師匠よりいい男なんているわけがないから、せめて顔は上回ってる相手を探すわ」

風音「イケメン志向がより顕著に!?」

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