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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
最終章4 世界の中心にいる少女編

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第千一話 再戦を果たそう

 王城グリフォニアス。それはツヴァーラ王国の王都グリフォニアの中央に存在する八百年以上の伝統を誇る城であり、六百年前の英雄王によって一部魔改造もされている建造物である。とはいえ、すでにその仕掛けの多くが非活性状態であり、今は外見上ただの城にしか見えない。

 よく見れば塔の一部が変形しそうな形をしているのだが、風音たちも含めてそれに気付ける者もいなかった。

 そんな城の中へと風音はティアラを連れて、ちょいなと忍び込み、そして過去と同じようにアウディーンに再会したのである。

 それから城へと呼び出された仲間たちと共に再会したメフィルスは「なぜワシはここに?」状態であり、ジンライたちと同様に旅の記憶があるようだった。

 一方でアウディーンたちは出会った当時の状態であり、風音たちのことは覚えていなかった。

 その違いには弓花たちも首を傾げたが、けれどもそれを検証する時間的余裕はない。なぜならば、その夜にはひとつの事件が起きるのだ。その日の真夜中に一人の男が城の中に忍び込み、ツヴァーラ王メフィルスを殺害するはずであった。



◎ツヴァーラ王国 王都グリフォニアス 王の寝室


「警備がいない……ふむ。警戒網は前日と変わらないか。私が戻ってくると予想できないとしても、無用心ではあるな」


 真夜中。誰にも聞こえぬほどの声で呟きながら、その男はひとり城内の通路を歩いていた。

 男の名はブレア・デッカーマンという、王族のシェルキンの執事を務めていた者だ。もっともそれは仮の姿、その正体は七つの大罪のひとりに冠される最上位悪魔ディアボである。

 その日、彼は非常に荒れていた。表面こそ取り繕ってはいたが、その心中は全くもって穏やかではいられなかった。何しろ、何年も仕込んでいた活動が、いきなり現れたチンチクリンたちに台無しにされたのだ。それは何百年か昔に己をこき使った傍若無人な契約者に匹敵する怒りであった。

 もっとも、そのチンチクリンたちをどうこうする余裕も今のディアボにはない。

 ひとまずはまだ完成していないものの成果の回収をと彼は城に忍び込んでいた。途中で八つ当たりに中庭の兵でもいたぶってストレスを解消しようとも考えていたのだが、相手がなぜかいなかった。

 それには若干の違和感を感じたものの、他の兵たちは普通に動いているようなのを見て、ディアボはたまたまだと判断し、王の寝室まで辿り着いて部屋の中に入っていたのだ。


「ブレアか」


 そして、部屋の中で最初に声を出したのは、眠っているはずのメフィルスであった。そのことにディアボが少しだけ眉をひそめながら口を開く。


「おや、メフィルス王。起きておられましたか。こんな時分です。ご老体にあまり無理をかけるものではありませんな」


 ディアボの言葉に、メフィルスが「ふっ」と笑う。


「なるほど。すべて過去の通りに……というわけか。ここでそなたは余を殺し、紅玉獣の指輪を奪い、我が孫のティアラを使ってルビーを操ろうとするわけだな」


 まさしくその通りに動く予定であったディアボが、目を細めながら「ほぉ」と口にする。


「よくぞ、そこまで気付きましたな。或いは誰かの入れ知恵か。ですが、私がここまで来た以上はもう手遅れだと思いますが?」

「ふん。それはどう」

「チェストォォォオオオオオ!」

「ギャァアアアアアアアアアアアア」


 メフィルスがニヒルに「それはどうかな」と返そうとした途中で、弓花の不意打ちが決まった。メフィルスが「あ」という顔をしていたが、やれるときにやるのが一流の戦士というものだ。

 達良製の穢れなき聖女のケープのインビジブル効果はすこぶる強力であり、ディアボはまったく気付けていなかったのだ。その胸に突き刺さった傷も完全に致命傷だ。

 ただの槍であればまだしも、それは神域に届いた恐るべき槍ムータンだ。それが突き刺さり、流れ出る神気に侵される感覚に震えながら、ディアボは槍を抜いて後ろで構えている弓花を驚愕の眼差しで見ていた。


「お、お前は」

「さあ、勝負よディアボ!」

「何……も……」


 もっとも、その言葉を言い終える間も無くブレアと名乗っていた人の姿が崩れ、アストラル体の姿を現したディアボの体が崩れ落ちた。それを見て弓花が「あ、勝った」と口にし、メフィルスが呆れたような顔をしていた。


「いや、そりゃあその神槍で不意打ち食らえば最上位の悪魔でもイチコロではあるがな。しかし、ユミカよ。油断は」

『くそッ!?』


 メフィルスの言葉は再び遮られ、その場で爆発が起きた。弓花はとっさにメフィルスを庇ったが、それを後目に寝室の壁を破壊したディアボが外に飛び出していった。


『チッ、あの槍は危険だ。二度目はマズイ』


 ディアボが焦った顔で中庭に降り、そのまま逃走しようとしたが、空より雷の闘気でできた矢が降り注ぎ、その足を止めさせた。そして、ディアボの前には、雷の矢を放った本人、弓花が降り立った。


「まったく、しくじったわね。起き上がりが想像以上に速くてついて行けなかったか」


 そう口にした弓花を、ディアボが警戒心をあらわにしながら睨みつける。


『こいつ、人間か?』


 思わずディアボの口から出た言葉に弓花はムッとした顔をするが、ディアボがそう口にするのも無理はなかった。弓花は、最上位悪魔であるディアボに感知させぬほどの隠形を行い、まるで重さを感じさせぬような着地をし、何よりもディアボですら見ているだけで冷や汗をかきそうな槍を平然と握り、構えている。

 その発せられる神気から神霊の類ではないかともディアボは思ったが、弓花は未だ生身であり、変化すらしていない、エルフの一種とはいえ、ただの人間であった。


『くっ、ルビーグリフォン。その女をるぞ』

「はっ?」


 続くディアボの言葉に今度は弓花がギョッとなったが、その言葉の通りに赤と黒の混ざり合ったルビーグリフォンがその場に降りてきた。それには弓花も眉をひそめる。


(まさか……この気配はティアラがコアになってる?)


 その状況に弓花は困惑するが、それがジンライのいう、過去の通りの形に戻されるということだろうと認識すると、腰に差した片手斧に手をかけた。


(このときのルビーグリフォンは本調子ではなかったはず。滅の炎も出せないんだから、キングなら十分に押さえられるか?)


 そう考えた弓花であったが、その必要はなかった。弓花がキングを召喚するよりも前に、ルビーグリフォンに向かって飛び出した人影がふたつあったのだ。


「ユミカ、こちらは任せよ。カザネ、お前がティアラを目覚めさせるのだ」

「うん。けど、ジンライさん。本当に弓花ひとりで大丈夫なの?」

「ワシの弟子だ。問題はない」


 それは風音とジンライであった。また、城の中からは風音たち以外にもツヴァーラの兵たちが現れ、アウディーンの指揮の元、ルビーグリフォンに向かって駆けていった。


『チッ、対応が早い。やはりバレていたか』


 それらの様子に舌打ちするディアボに、弓花が槍を向けて笑う。


「どうやら、あっちは師匠たちに任せていいみたいね。正直言って、あんたって私にとってはターニングポイントみたいなものだったからこうして再戦できるのは願ったり叶ったりではあるんだけどね」

『何?』


 訝しげな顔をするディアボに、弓花が足をにじりよらせながらも槍を握る手に力を入れる。


「まあ、アンタが理解する必要はないわよ。ここで、私は何もできない無力さを感じたってだけのこと」

『分からぬことをっ』


 そういってディアボが両手を前に出して仕掛ける。

 ディアボの基本的な戦術は、鉄壁である魔法障壁を攻守に使い分けるものだ。

 己にも魔法防御を全面に張っているために、その障壁を突破できねば、ディアボに対処することはそもそも不可能。元来、戦闘を得意としていないディアボだが、そのやり方では、彼は今まで負けたことがなかった。


「ふんっ」


 対して弓花は攻撃に転換された障壁をムータンで弾いて突き進み、そのまま槍術『振』をディアボに対して放つ。


『クッ、重いな!?』


 その威力に障壁がわずかにヒビいり、ディアボが一瞬驚愕するが、続けての弓花の突きを受けて少しばかりの心の余裕が生まれた。


『確かに攻撃は強力だが、この障壁は我が魔力によってすぐさま回復する。残念だったな。お前の攻撃では私には届かないぞ!』


 ディアボの言葉に弓花が目を細める。相手の言葉に動揺したのではない。ただ、相手の底を理解して、手ごたえのなさを感じて、微妙に落胆したのだ。それから妙に冷めた目で弓花はディアボを見据えた。


「いや、まあ……やってみればこんなものか。そりゃあ、戦闘に特化してないってのは聞いてたけど。ジークも大翼の剣だと威力が足りなかったからああなったってだけってことなのね。結局アンタの攻略って、その盾が突破できるか否かってだけじゃない」


 そうぼやく弓花に、ディアボの顔が歪む。

 言っている意味が分からなかった。魔法障壁は問題なく動いている。予想よりも相手の攻撃は強力ではあったが、それでもディアボの有利は揺るいでいない。

 例え『盾が突破できるか否かってだけ』であっても、それはつまり突破できねば、どうしようもないということなのだ。

 だが弓花がすぐさまチャイルドストーンからクロマルを召喚したことで、ディアボの危機感がさらに増した。


『召喚獣? それで手数を増やすつもりか?』


 ディアボの声に恐れが生まれたが、それは弓花の心をさらに萎えさせるだけであった。致命の救済も使用済みなので、もう復活もないだろう。キングと雷火を咥えさせたクロマルと共に押し切れば、勝てる相手ではあった。だが、今回はそうしない。それでも最上位の悪魔ではあるのだ。試しの案山子としての価値はある。

 それから弓花はクロマルに続いて指示を与えた。


「クロマル、聖槍形態モード・ホーリースピア


 そして、クロマルの体が光り輝き、それは銀色に輝く槍へと変化していった。

名前:立木 弓花

職業:化生の巫女

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・・解放者リベレイター・守護者・バーンズ流槍術皆伝


装備:神槍ムータン・神狼の甲冑・シルフィンブーツ・強奪の魔手・雷飛竜の手袋・英霊召喚の指輪・神狼の腕輪・紅蝶のアミュレット・不滅のマント・穢れなき聖女のケープ・龍神の片手斧キング・龍神刀雷火


レベル:56

体力:299+120

魔力:156

筋力:371+120

俊敏力:314+165

持久力:162

知力:55

器用さ:87


スペル:『調息』

スキル:『天賦の才:槍:Lv7』『贄の擬魂』『化生の加護:Lv4』『深化:Lv5』『槍術まとめ[>CLICK]』『その他スキルまとめ[>CLICK]』


弓花「うーん。ジークも決戦仕様の本気モードだと相当違うらしいんだけど、セーブ時のデータはタンク仕様で攻撃力はそれほどでもないってことだし、ディアボとは相性が悪かったのね」

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