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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
最終章3 ガードブレイク編

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第九百八十八話 山の中を進もう

※明日は所用によりお休みします。

「ふむ」


 死霊騎士たちとの戦闘を終え、早々にその場を立ち去る一行であったが、途中ジンライが空を見上げて訝しげな顔をしていた。その様子に並走していた風音が何事かと首を傾げる。


『どったのジンライさん。なんか見えた?』


 すぐさまみょーんと目玉を伸ばして上空を見る風音だが、見えるのは雷雲ばかりで、すぐにでも雨が降りそうな雰囲気ではあった。もっとも、それ以外に何かは見えない。そして、その目玉が飛び出している風音の姿にジンライがなんとも言えない顔をしながら「見られていたな」と返す。


『誰に?』

「分からん……が、恐らくは先ほどの死霊騎士たちと繋がっている者だろう。今はおらぬが、先ほどわずかにだがこちらに戦意を向けてきたのを感じた。やはり、連中にはバレていると見て間違いあるまい」

『うーん、まったく見えないけどね。まあ、ジンライさんの感覚なら間違いないとは思うけど。で、どうするの?』

「相手がどう出ようが、やることは変わらんよ。我々には時間がないのだからな」


 ジンライの言葉に、前にいて騎士団長の馬に乗っているヨハンが頷いた。


『そうだね。悪魔にバレているならば、それを意識して進むしかないよ。最悪は誰か生き残って結果が報告できればいい』

『……ヨハンさん』


 風音が渋い顔をする。そのことにヨハンは苦笑しつつも『僕も死ぬつもりはないよ』と返した。


『ただ、それだけ重要な任務なんだ。魔物の対処で各国は動けないし、タイムリミットはもう半月を切ってる。だからこそ、もっとも生存確率の高いであろう黒き一団が選ばれたんだしね』


 ヨハンの言葉に、周囲の者たちが頷く。アバドンの復活を前に、今は立ち止まってはいられない。彼らは世界の終わりを防がなければならないという使命感があった。


『死なせないよ。大丈夫』


 対してそうはっきりと言う風音に全員が頷く。誰も彼も生きて戻る。その風音の誓いに、彼らは力強さを感じていた。それからジローが挙手して尋ねる。


「意気込みはいいんだけどさ。今さら逃げようとは思わないけど、ただ無策ってのはヤバいだろ。この先はそのまま進むのか? 罠とか多そうだけど」

『道なりはそのまま進まないし、迂回ルートを通ってはいくよ。シュミ山の構造は、オロチさんから細かいところまで聞いているし悪魔の裏をかくことはできると思う』

『オロチさんから?』

『うん。さすが攻略サイトの管理人だよね。このシュミ山の構造は結構複雑だし、監視があったとしても途中で撒けるとは思う。そういうルートを教えてもらってる 。その道を通って、ひとまずは頂上まで向かうつもりだよ』


 ヨハンがそう言って胸を叩き『任せてよ』と言った。

 そして、ヨハンに知恵を授けたのはプレイヤーのひとりであるオロチであった。ゼクシアハーツ攻略サイト『ひめ蛇子のダンシングオール攻略イェーイェー』の管理人であった彼は、この状況においては己の知識を総動員して、様々な対処に当たっていたのである。なお、今オロチはウォンバードの街で竜船改造の指揮を取っていた。

 それから風音たちは、ヨハンの先導で山道を離れ、オロチから指定された洞窟の中へと入っていった。だが、その中にいたのは巨大なドラゴンゾンビの群れであった。



◎シュミ山 中腹 洞窟内


『任せてよ?』

『上手くいかないもんだねえ』


 風音とヨハンがそう言い合いながら、ドラゴンゾンビが放つ腐敗ガスを避けていく。食らえば金属も肉も腐ってしまう。それはゴーレムである風音に取っても油断できない攻撃であった。


『よっと』


 それから風音はハンマーくんを操り、器用に岩場を移動しながら反転して、ドラゴンゾンビへと攻撃を仕掛けていく。

 今風音たちがいるシュミ山の中にある洞窟は、何度となく起きた噴火の影響により蜘蛛の巣のようにできたものだ。ヨハンは、オロチより悪魔の裏をかくべくこのルートを教えられたのだが、結果として彼らは無数のドラゴンゾンビと交戦することとなっていた。


「しかし、中途半端に斑黒いな。操られている風ではないが」

「もしかすると、こいつら悪魔の実験体なんじゃねえの?」

「考察なんぞいいから手を動かさんかい」

『ぬぉぉおおおおっ』


 ギュネスとギャオに叱咤しながら、ジンライとメカジンライがドラゴンゾンビを攻撃していく。騎士団もジンライのフォローにと、周囲を奔走して牽制の攻撃をしかけていた。威力こそそれほどではないが、集中できないドラゴンゾンビたちはジンライの攻撃にいいようにやられていた。彼らもハイヴァーンの騎士らしく対竜戦闘は得意であったのだ。

 そして、一方では風音がドラゴンゾンビの一体を追い詰めていた。ミニダンナ様がクリスタルシールドを展開して岩壁にドラゴンゾンビを押さえつけ、そこに赤い流星となった風音が突撃していく。


『ミニダンナ様。クリスタルシールドを解除。そんで、ここで一気にドーンだ!』


 クリスタルシールドが解けたと同時に風音の竜閃が突き刺さり、ドラゴンゾンビのコアである『竜の心臓』が崩れていく。


『勿体無いけど、今はそんなことも言ってられないしね』


 破壊してしまっては貴重な動力である『竜の心臓』は使えないが、今は先を急いでいる。回収にこだわってはいられなかった。

 さらに他のドラゴンゾンビは、ジンライとメカジンライ、それにマーゴの拳とヨハンの操るスケルトンナイトがそれぞれ倒していた。その中でも風音が目を向けたのはヨハンのスケルトンナイトであった。先の死霊騎士戦では離れていてあまり見られなかったのだが、その姿は以前とは大きく違い、非常に強そうになっていた。


『おお、スケルトンを上手く使ってるみたいだねえ。前は普通の骸骨兵二体だったけど、今は騎士と馬なんだ』


 風音の言葉にヨハンが頷く。ヨハンが今操作しているのは、以前に風音が渡したアダマンスカルアシュラの骨と上級スケルトンコアで構成された骸骨の騎士で、アダマンチウムの人骨でできた馬に乗っていた。

 また、騎士にも馬にもかなり豪奢な装備で着飾られていたようで、持っているのも大剣に大盾。スケルトンナイトは馬に乗りながらそれらを存分に振るっていた。


『ホーリースカルレギオンのようなものも考えたんだけど、小回りの利きやすいほうが良かったのでこうなったよ。ホーリースカルパラディンとホーリースカルホース。パラディン・ジョージ、周囲の警戒を』


 ヨハンの言葉に、パラディン・ジョージと呼ばれた骸骨騎士が頷き、手綱を握って馬を走らせて周囲の偵察に向かい始めた。


「ふむ、装備は神聖物質ホーリークレイだな。あんな量の神聖物質ホーリークレイの装備などそうそうあるものでは無いぞ。どうやって手に入れたのだ?」


 戦闘を終えて戻ってきたジンライの言葉に、ヨハンが肩をすくめる。


『聖神アトモスより頂いたよ。今の僕はミュールの司祭であると同時に、浄化の聖神アトモスの使徒でもあるからね』

「この亡国領にあった崩れ落ちた祠の中で偶然見つけたのよね。死霊も寄り付かないセーフゾーンだから何かはあると思ってたのだけれど。あのときのことは凄かったわよ」


 続くマーゴの言葉に風音とジンライが「ほー」と感心した声をあげた。


『なんだか、楽しそうなことをしてたみたいだね』

『そうかな? 風音たちに比べればまだまだ派手な話ではないと思うけど。それにアレ以降、悪魔たちに目を付けられたから良し悪しかなって気もするしさ』


 そう言って、ヨハンが肩をすくめる。ともあれ、ヨハンもプレイヤーらしく、ここまでに色々なことがあったようである。そのことに風音も感心しつつ、さらに一行は先へと進んでいく。

 また、洞窟自体はオロチより与えられた情報通りのルートを通れたが、その間に野生の魔物こそ何度か相対したが、悪魔絡みの魔物は出現しなかった。その状況を不気味に感じつつも、風音たちは洞窟を抜け地上へと出て、山頂の近くまで辿り着いたのであった。

>圏外です


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