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第十話 ゴーレムを作ろう

「うおっりゃぁああ」

 親方のハルバードが舞う。鎧袖一触とはまさにこのことか、瞬く間にグレイゴーレムは蹴散らされていく。

「うわぁ、すごいねえ」

 風音の言葉に弓花も同意する。勢いに任せて振られているように見えるハルバードも実に的確にグレイゴーレムのコアストーンを狙って破壊している。

「ほとんどあの人一人で終わりそうだな」

 弓花は舌を巻いてそう口にする。もっとも、そうは言っても親方の背後のゴーレムは風音たちの受け持ちだ。ノンキに眺めていられる状況でもない。


「うりゃああ」

 風音が切り込み、よろけたところを弓花の槍で突く。

 弱点である胸のコアストーンを狙いつつ二人は危なげなく戦いを進める。


(ギコちなくはあるがよくやってる)

 感心していたのは風音たちだけではなかった。親方も戦いの中で後ろに対しても逐一気を配ってはいたが、それは完全に杞憂だったと思い知らされる。


(うん。やりやすいや)

 風音は剣を振り、斬りつけ、攻撃は的確によける。間違っても受けてはいけない。グレイゴーレムは遅いながらも力が強く風音の筋力では受けきることはできないのは分かっている。

(ゲーム通りとまではいかないけど、それを生かして戦えてる)

 風音は微笑む。そして弓花も同様に想像以上に闘えていることに興奮気味だった。

「いけるよ風音」

「うん、これでッ」

 風音が勢いをつけ両手剣を突き出す。

「終わりだッ!!」

 コアストーンが砕け散った。

「やった!」

「あと三体!…おりょ?」

「どうしたの風音?」

 風音がウィンドウを見ているのに気付き、声をかける。

(ゴーレムメーカー?)

 弓花の目にはスキル欄にそう書いてあるように見える。

「風音、それって!?」

「よしっ! スキル・ゴーレムメーカー!」

 風音は地面に手を当ててアクティブスキルを発動させる。


『ガォォオオオオオオン!!』


 途端に地面からもう一体のグレイゴーレムが現れる。

 いやサイズは他のグレイゴーレムよりも一回り大きく、より強そうな印象だ。

「うぉぉお、新手か!?」

「いや、味方だよ」

 突然のことに親方が慌てるが、息を切らしてる風音が声で制す。

「風音、これって」

「うん、グレイゴーレムから手に入れた召喚術のゴーレムメーカーだよ。注いだ魔力の分、大きくなるのも仕様通りみたい」

 そう口にする風音の魔力は0だった。すべての魔力をそそぎ込んだらしい。

「よーし、やれぃゴレムちゃん」

『ガッオォォオオオオン!!』

 パンチ一つでグレイゴーレムが吹き飛ぶ。

「うわ、完全に楽勝ムードだ」

 弓花はなんだかなーと口にしながら槍を構える。

 無論、戦闘が終わるまでそう長くはかからなかった。


「ガハハハ、大戦果じゃねえか」

 親方は上機嫌で戦利品を見ていた。

 風音たちはグレイゴーレム(大)を出した後、親方の指示に従って戦闘方針を変更した。弱点であるコアストーンを壊さず、他の部位を破壊することでコアストーンを無傷で手に入れることにしたのだ。

 グレイゴーレムで手に入る素材はコアストーンの欠片だ。そしてレア素材である無傷のコアストーンが目の前に2つある。それは大戦果と言って良かった。

「にしてもカザネが召喚術を使えるたぁよ。そういえば昨日も助太刀するときに飛んできてたっけ?」

「ええ、まあ」

 魔力切れの風音は若干だるそうにしながらも笑ってそう答える。


 ゴーレムメーカー。

 中級魔術ながら土のファクターを用いた術師ならゲーム終盤までお世話になる召喚術。戦闘でも攻撃してよし、守ってよし、囮にしてもよしの三拍子そろった術で、様々な用途に応じて使用が可能。

 あえて弱点があるとすれば土や岩などの使う素材によって強さが変わることぐらいだろうという万能スキルだ。


「うふふふふ」

「風音、気持ち悪い」

「むう」

 風音はさきほどからニマニマとスキルウィンドウを見ている。どうも召喚して仲間を呼ぶことが出来る術は風音のツボな能力らしかった。

「まあただカザネよ。お前、ちょいと使い時には気をつけた方がいいぜ」

「むう。親方、なんか文句がおありで」

「いやなあ。昨日の戦闘でもお前さん、魔力切れで横になってただろう。戦闘は一回とは限らねえんだから消費を抑える努力も必要だろう」

「ぐ…そうだねえ。フライもゴーレムメーカーも本来中級魔術だから魔力食うんだよね」

 中級魔術の習得目安はレベル25程度と言われている。風音のように低レベルでの習得も可能だが初級レベルで扱うには非常に燃費が悪い。

「つっても今回の依頼はコアストーンの欠片だったってのに、コアストーンそのものが手に入ったわけだから万々歳ではあるんだけどよ。戦果的には十分過ぎらあな」

 親方がそう言うと風音が質問する。

「するともう街に戻るの?」

「そうだなあ。本来であれば後数回グレイゴーレムと戦ってから夜営して、明日にでも帰る予定だったんだが」

 親方は顎髭をさすりながら話を続ける。

「といってもお前等に冒険のイロハを教えるつもりではあったし、一旦山を下りてレイダードッグかホーンドラビットでも狩って皮のはぎ方とかやってみっか?」

 風音も弓花も皮のはぎ方という言葉に一瞬こわばるが、そこは避けては冒険者はやれぬのも承知なので拒否の言葉をグッと呑み込んで頷いた。

「じゃあそうすっか」

「お願いします。あ、でもその狩りって依頼を受けてはいないんだよね」

 風音の懸念に親方は大丈夫だと答える。

「指定魔物の討伐は事後報告でいいんだ。素材とか証拠物を提出すりゃいい。依頼主はミンシアナ王国で害獣退治として数に応じて金がもらえるってわけだな」

 ミンシアナ王国はここら一帯を治める小国だ。建国500年程度なので風音はその名に聞き覚えがなかった。

「それとお前等みたいにランクFでも戦闘としての依頼を受けられるのも利点だろう。通常の魔獣討伐はDからだからな。ランクよりも高い能力を持ってるならそっちで稼ぐ方がいいだろうよ」

 風音は「なるほど」と頷いた。

「ちなみにランクFクラスは街内の何でも屋さんという感じなの。大掃除とかに人呼んだり引っ越しに使ったりね。バイト感覚ってのが近いかもしれないわね」

 横から弓花がそう口にする。

「まあ、ありがちな話だね」

 風音は身も蓋もない言い方をする。

「奇抜である必要もないしね。そこらへんは」

 弓花は肩を竦めて答える。

「とりあえずは一週間くらいここらで狩り続けて無理がないようだったらDランク申請をするべきだな」

「Eランクにではなく?」

「使えるヤツを遊ばせる理由もない。俺の方から推薦状を出しておくからよ。その気があるなら申請しちまいな。元々魔物退治メインのパーティならそこらへんの融通はギルドでも利かせるのが普通だしな」

「うん。頑張ってみるよ」

「おう、頑張れ!」


名前:由比浜 風音

職業:冒険者

装備:鋼鉄の両手剣・レザージャケット・鉄の小手・布の服・皮のズボン・革の靴・ポーチ

レベル:15

体力:38

魔力:45

筋力:15

俊敏力:11

持久力:10

知力:23

器用さ:12

スペル:『フライ』

スキル:『ゴブリン語』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー』


風音「召喚術ゲット!」

弓花「あれ、召喚術なのにスキル扱いなの?」

風音「効果は同じなんだけどね。スキルのゴーレムメーカーが源流でスペルのゴーレムメーカーはそれを模したものらしいよ」

弓花「そういうものなんだ。あ、ちなみに私レベル11になったからね」

風音「おめでとー!」

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