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P12

競技が始まった。

どの競技も、基本的に強いのは5~8組。

9~17組は、中学から継続して同じ種目の運動部に所属している生徒が多い。

その種目の部活に所属している生徒は選手になる事はできないため、畑違いの種目に出場する事になるし、

真面目に取り組むのは格好悪いという、アウトローな雰囲気がある。

1~4組には中学でしっかり運動部で活動していた者は少なく、特に球技は苦手な生徒がほとんど。

中学はその種目の部活をしていて、現在は文化部か無所属、

クラスマッチに一所懸命参加する真面目な生徒が多いのが、5~8組といえた。


だけど、今年の一組には経験者が二人いる。

身長183cmの湊のストレートに叩き込む力強いスパイクと、

守備範囲が広く、正確にレシーブを拾ってパスを返してくれる須貝君の技術力は心強い。

クラスマッチ特有の公式と違ったルールがいくつかあって、ポジションのローテーションはない。

前衛レフトがエースの湊、セッターを任された僕、ライトが未経験者では一番上手な伊月、

後衛両脇の2人はなかなか練習時間が取れなくて、真ん中の須貝君がほぼレシーブを引き受けてくれる。


一戦目の対11組戦は、比較的に余裕で勝てた。

選手達も自信が持てたし、応援してくれていたクラスメイトたちもすごく盛り上がった。

二戦目は他の競技に比べて開始時間が遅く、

その頃に一組は、女子バスケと最終種目の大縄跳び以外全滅状態。

自然と男子バレーボールへの期待が高まった。

次の対戦相手は7組。

選手6人のうち、力の差はあるものの4人が経験者で、一試合目を大差で勝ち進んできた強敵だ。

一試合勝てただけでも、と諦めムードが漂うのを、湊が一喝した。


「そういうのは、やるだけやった後で言おうや。

 練習なら精一杯してきた。せっかくの舞台、全力出して思いっきり楽しんで来ようぜ。」


湊の言葉に、元気が湧いてくるのを感じた。

クラスのみんなも、前向きな言葉をかけて応援してくれている。

ダメで元々と思うと、逆に緊張もほぐれた。

すごくいいテンションで、二戦目のコートへ向かった。


試合は始めから苦戦を強いられた。

相手からの返球もサーブも、後衛両サイドのラインぎりぎりを狙ってくる。

これは須貝君が守備位置を大きく下げて、できる限りのフォローをしてくれている。

問題は、攻撃。

セッターの僕は、トスが上達したとはいえライトの伊月側へあげるのはまだ苦手だったし、

伊月もスパイクの成功率が高いとはいえない。

自然と湊にばかりトスが集中してしまうけれど、得意のストレートへのスパイクがあっさり拾われてしまった。

椎野先生が審判にタイムを告げる。

みんなでコートサイドに集まると、悔しそうに湊がつぶやく。


「あいつ、真柴中の山崎だ。」


「え、知り合い?」


「レシーブで気が付いた。

 中学最後の市総体、あいつにスパイク拾われまくって負けたんだ。

 くそ、なんだって高校でバレー続けてないんだよ。」


つまり、それが湊の引退試合になったってわけだ。

後半は理不尽な八つ当たりだけど、中学時代の再現で動揺しているようだ。

まあ、気持ち切り替えていけ、という、正直どうしていいかわからない先生のアドバイスをもらい、コートに戻った。


試合再開。相手のサーブを、須貝君がふわりと拾って僕に繋いでくれた。

今度こそ、と、祈りつつ湊にトスをあげる。

トスの位置も、湊のスパイクも、今できる限り最高のものに近かったはずなのに、

やっぱり山崎君に拾われてしまった。

それだけでなく、そのレシーブはきれいにセッターに返り、逆にスパイクを決められてしまう。


「次、サーブカット、慎重にいこうぜ!」


湊が明るくそうみんなに声をかける前の一瞬、

くちびるを噛んで、握ったこぶしに力を入れたのがわかった。

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