野宮先輩
人間失格を購入してから、ちょうど1週間が過ぎた。
結局、10ページも読まないうちに放置してしまった。
そして、毎週のことだが土曜日は本当に暇な曜日だ。
特にやることがない。
バイトでもすればいいのだが、やりたいことが見つからず何もやっていない。
そして、趣味もない僕は本当にこうした休みの日にはやることがなく、積んでいる。
家の中でゆっくりとするのもいいが、それでは何も変わらないと思う。
やることが限られてしまう。
自分で思うがままにできてしまう。
それでは、何もおもしろくない。
だから、家の外には出るようにしている。
ちょうど夏の暑さも終わり、涼しくなってきたので心地の良い天気だ。
それでも「いい天気ですね」と会話をすることもないのだろう。
天気すら話すことができない外の世界。
友達がいれば、友達と遊びにいったりもするだろう。
だけど、僕にはそんなプライベートの日まで遊ぶ友達はいない。
大学生になってからは、プライベートも何も、普通に友達ができていない。
どうして、こうも大学とうのは友達ができにくい環境なんだ。
サークルに入らないと作れないものなのか?
でも、そこまで親しくもない友達ができても厄介なだけな気がするから、別に今更友達がほしいとか思わない。
それでも、昔からの友達、いわば幼馴染といえる人物はほしいと思っている。
幼馴染の女子とか、それぐらいの女子がいないと女子と話すことなんてないだろう。
男友達ですら、なかなか作れないというのにましてや、女友達なんて作れるわけがない。
接点がない。
公園のベンチに座り、空を見て、思わず「はぁ~」とため息をついてしまった。
「こんないい天気の日にため息ですか」
声の主を見ると、かつて同じ塾にいた1つ上の先輩である野宮先輩だった。
「久しぶりですね」
空に向けてた視線を戻して挨拶をした。
「なんか悩みでもあるのか?」
ため息をしたからであろう。先輩は心配そうに訊いてきた。
「やることがなくて、途方に暮れていただけですよ。働けって話ですけどね」
幼馴染に女の子がいたら、なんて妄想をしていたことは言わなかった。
「そうか。暇なんだな」
「はい、暇です」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
会話に詰まってしまった。
先輩に気を遣わせるのもよくないと思い尋ねてみた。
「先輩は今から何をするんですか?」
「デートだよ」
なんか、負けた気がする答えだった。
「付き合ってるんですね。」
「まぁね。ちょうどここの公園で待ち合わせなんだ」
「だったら、僕ここ出た方がいいんじゃないですか?」
「なぁに。別に構わんよ」
「だって、待ち合わせしているんですよね?」
絶対に僕は邪魔じゃないか。
「だって、待ち合わせなら、もう終わっているし」
「えっ、もう来てるんですか?」
公園内を見渡すがそれらしき人はいないような気がする。
まさか、あそこにいる大人なのか?
キョロキョロしていると先輩は僕の顔を優しく持ち、先輩の顔の方を向かされた。
「待ち合わせ時間遅れてごめんね」
そういって先輩は優しくキスをした。
という、妄想をしていても幼馴染の女子の妄想も結局は同じようなことだ。
結局は公園にきたところで何も起こりはしないのだ。
第一、さっきの妄想では、最初の方は男の先輩をイメージしていたのに、後半から都合のいいように女の先輩へとチェンジをしてしまっていた。
妄想だから何でもありってことだ。
だいたい、野宮先輩って誰だよ。
塾にも通っていたことなんてないよ。
再び空を見上げて、「はぁ~」とため息をついた僕であった。