わずらわしい広告は一切ありません
小説投稿サイト『小説家になりお』でお気に入り作品の続きを読もうとすると、こんな広告が現れた。
『やぁ、小説を楽しんでいるかい?』
俳優とは思えない、絶妙にブサイクな白人のおじさんが、全画面を占領して笑う。
『ところで新しい小説投稿サイトができたのをキミは知っているか?』
スキップしようとして「✕」ボタンを探したが、どこにも見当たらない。どうやらしばらく広告に付き合うしかなさそうだ。
『「ラストノベル・ハーバー」っていうんだけど、ぼくはこれを始めてから他の小説投稿サイトはぜんぶ退会しちゃった』
インスタントコーヒーを作って戻ってみると、広告はまだまだ続いていた。仕方なく頬杖をついて眺める。
『わずらわしい広告一切なし!』
こんなに鬱陶しい広告を打っている時点で説得力ゼロだな、と思う。
しかも面白い作品がなんと100万作以上も投稿されているんだ』
へぇ、それはすごいなと初めて思った。
確かに最近の『小説家になりお』の広告の多さとエロさには辟易しているところがあった。
こんな特別にクソ長い広告まで入ってくるし──
早くさっきの作品の続き、読みたいんだけど……
『キミもきっと気に入るよ!』
あ、漢字読み間違えた。
口の動きはちゃんと日本語に合っている。
このおじさんがAIだと判明した。
『しかも読むだけでなく、投稿もできちゃうんだ』
当たり前だろ、小説投稿サイトなんだから──と思いながら猫の頭を撫でた。
『しかも簡単! キミはプロンプトを入力するだけでいい。あとはAIが勝手に書いてくれる』
それだから100万作品以上も投稿されてるんだ? と思うしかなかった。
『めんどくさかったらすべてAIにお任せ! プロンプトもAIが作ってくれる。キミはなんにもする必要がないんだ』
それのどこが面白いんだろう? と思いながらフィナンシェをぱくぱく食べた。
『ワイファイも不要!』
いや小説読むのにも書くのにもワイファイ使ったことないし、と思いながら洗濯物を取り込んで戻ってきた。
『それじゃ、このボタンを押してダウンロードしてね。きっと素晴らしい体験がキミを侍ってるよ!』
音声は『まってる』だったけど文字表示が『侍ってる』だ。サムライってるって何だよ。誤字報告すんぞ。
ようやく終わったと思ったらまた一番最初から始まった。
右上にようやく「✕」が現れたので、それをクリックするとストアのダウンロード画面が現れた。
『戻る』ボタンを押すとまた広告が一番最初から始まった。
わぁ、抜け出せない……
この広告を見てダウンロードするやつ、いるのかな……




