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これが運命ではなかったとしても  作者: gacchi(がっち)


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57.新しい国へ

目が覚めたら、すぐそばでアルフレッド様が眠っていた。

そのこと自体はいつものことだけど、

アルフレッド様も私も服を着ていなくて、その上抱きしめられた状態だった。


ふれあっている素肌の感触がいつもとはまったく違っていた。

ゆっくりと昨日のことを思い出し、妻になれたことを実感する。


よかった……ちゃんとアルフレッド様の妻になれた。

うれしくて、アルフレッド様の胸に頬寄せたら、起こしてしまったらしい。


「……ああ、ルーチェ?起きたのか?」


「はい」


「まだ寝ていてもいい。今日は起きなくてもかまわない」


「そうなんですか?」


「身体がつらいだろう。ゆっくり休もう」


そう言われると身体のあちこちが痛む気がする。


「アルフレッド様も一緒に休んでくれるのなら」


「もちろん、一緒にいる。何かあれば俺に言って」


何かあれば侍女を呼べばすむ話なのに、

アルフレッド様は自分でやってくれようとしている。

そのことがうれしくて思わず笑ってしまう。


見上げたら、私のこめかみや頬に軽い口づけが降ってくる。

今までとは違う愛情表現だけど、もう何も我慢しなくていい。


ぎゅうっと抱きしめ返すと、ゆっくり、ゆっくりと髪をなでられる。

それが気持ちよくて目を閉じたら、また眠ってしまいそう。


「眠っていいよ。起きるまでここにいるから」


「……ん」


うとうとしながらアルフレッド様の声を聞く。

心から安心できる場所ができたようで、幸せに包まれて眠りに落ちた。






もうすぐ暑くなる季節だけど、今日の風はちょうど心地いい。

中庭を見下ろせるバルコニーでお茶をしていると、

女官長が手紙を持って来た。


それを見たアルフレッドから声をかけられる。


「手紙?もしかしてベルコヴァの誰かから?」


「ええ、今日の手紙はシンディだわ。

 まぁ、子どもが生まれたそうよ」


「本当に?それはおめでたいな。

 祝いの品を送らなくちゃいけないね」


「しかも双子の女の子ですって!」

 お祝いの品、何にしようかしら」


赤子のために質のいい布を送ろうかと悩んでいると、

アルフレッドが中庭をながめている。


そこでは私たちの息子が二人で遊んでいるところだった。


「双子で生まれた人は双子を産みやすいって本当だったんだな」


「そうね。うちもそうだったものね」


私が産んだのは双子の息子だった。

アベルとアランはどちらも銀色の髪に黒目の精霊付きだった。


お父様は心配していたけれど、

私とアルフレッドは相談して、双子が生まれたことをそのまま公表した。


アントシュでは双子は忌み嫌われている。

だが、それは精霊に嫌われているために災いを起こすと信じられていたからだ。


アベルとアランがどちらも精霊付きだったことで、

そのことは迷信に過ぎなかったことが証明された。


以後、双子で生まれた者の片方を殺したり里子に出すことは正式に禁じている。

これによって、貴族や平民の間でも双子の話を聞くようになってきている。


もし、アベルとアランが精霊付きでなかったとしたら、

どちらかが違っていたとしたら、こうならなかったかもしれない。

だから、これはとても運の良いことだったと思っている。


「二人の孫娘か、兄上は喜んでいるだろうな」


「エッカルト様だけじゃなく、シンディの旦那様も喜んでいるでしょうね」


「ああ、そういえば結婚する時には運命の恋だと大騒ぎしていたな」


「ふふ。懐かしいわねえ」


シンディが結婚したのは二年前。

私たちが結婚した六年後のことだった。


あの後、結婚せずにラウレンツの補佐として生きると決めたシンディだが、

王宮文官として働く伯爵令息と偶然出会ったという。

あまりにもうれしかったからか、私に手紙で報告してきた。


その手紙の中で、やっぱりアル兄様は運命の恋じゃなかった、

今回こそが運命の恋だと思うわ、と書かれていた。


「私はアルフレッドが運命の恋じゃなかったとしても私を選ぶって言ってくれたの、

 すごくすごくうれしかったわ」


「俺も運命の恋だと断言しても良かったんだがな。

 アントシュの戦いがなかったら出会わなかったんだから」


「ふふ。でも、私はアルフレッドが助けに来てくれなかったとしても、

 いつかどこかで会えていたような気がしているの」


「……それって、それこそ運命だって言っているような気がするな」


「あら、そうかもしれないわ」


ふと見たら、息子たちがこちらに気がついて大きく手を振っている。

手を振り返したらまっすぐこちらに向かって走って来るのが見えた。


「二人もお茶を飲みたいのかしら」


「ルーチェに甘えに来たいのだろう。二人とも母上が大好きだからな」


「あらあら」


六歳になったばかりの息子たちはやんちゃで、

部屋の中に閉じこもっているのが苦手だ。


精霊付きだから本当なら私のように閉じ込めておかなくてはならないのだが、

私が息子たちの周りにいる精霊にあらかじめ命令をしておくことで、

二人が癇癪を起しても大丈夫なようにしている。


身体全体を使って、一生懸命に走ってくる姿を見るたびに、

二人を閉じ込めなくて良かったと思う。


「母上~!」


「母上!!」


「お母様はここよ」


女王になった今も変わらずにアルフレッドがそばにいて、

可愛い息子たちが私を呼んでいる。


ああ、なんて幸せなんだろうと感じながら、

ゆっくりゆっくり、手を振り返した。






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