表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これが運命ではなかったとしても  作者: gacchi(がっち)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/57

48.心からの願い

どうやって宮まで戻って来たのか記憶がない。

気がついたら、庭に一人でいた。


精霊たちが私の気も知らずに楽しそうに周りを飛び回る。

この国に来た時は連れて来た精霊しかいなかった。

今ではこの国で生まれた精霊の方が多い。


私とアルフレッド様とアズで造り上げた庭。

最初は何もなかった場所に花や木を植えてもらって、

自分で種を植えて、毎日水やりをして、育てて来た庭。


その思い出のすべてにアルフレッド様がいる。


どうしよう。

こんなに好きって思っているなんて知らなかった。

私はもうアルフレッド様がいなかったら、どうしていいかわからない。


食事をする時も眠る時も、ずっとそばにいた。

一緒にいることが当たり前すぎて、ちゃんと見えていなかった。


このまま流されるようにベルコヴァで過ごしていれば、

二人の未来は手に入ると思っていたのに。


本当はとても危うい場所で手をつないでいただけ。

アントシュの王女になれば、結婚相手を選ぶことはできない。


会う前に時間を戻して、

アルフレッド様のことを知らなかった私になって、

アントシュに帰ることはできるんだろうか。


……できるわけがない。

ベルコヴァに来てから一日たりとも離れたことは無いのに、

どうして一人になれるっていうの。


「……ルーチェ様、大丈夫ですか?」


振り返ったら心配そうなアズがいた。

アルフレッド様がいないことに、めずらしくほっとした。


「大丈夫……だと思いたいわ」


「それは大丈夫ではないですよねぇ」


「大丈夫じゃなくても王族は大丈夫と言わなくちゃいけないのよ」


「王族ならそれはそうでしょうけど、

 今ここにいるのは王族であるルーチェ様ではないでしょう」


「……どういうこと?」


いったいアズは何を言っているんだろう。

私はずっと王族で、王族以外の私はいないのに。


「この宮にいる間はルーチェ様は一人の女性でいていいんですよ」


「そんなことが許されるわけないわ」


「いいえ、今はまだルーチェ様はベルコヴァの第一王女です。

 アントシュの王族に戻ったわけではない。

 ならば、臣下として申し上げます。

 成人したわけでもないのに、無理しなくていいんですよ」


「……無理なんて」


「もっとわがまま言っていいんです。

 泣きそうじゃないですか、さっきからずっと」


ずっと耐えていたのに、アズに指摘されてしまって崩壊する。

手でふれなくたって、涙が頬を伝っているのがわかる。


泣いてもどうにもならないのに。

アズはどうして私を泣かせるんだろう。


「ルーチェ様、どちらにしても後悔するのであれば、

 言いたいことを言ってから後悔しましょう?」


「後悔することは決まっているの?」


「二つの国をどちらも選ぶことはできないでしょう?」


「……それもそうね」


このままでいたいという私の願いは絶対に叶うことはない。

だって、アントシュを継ぐのは私しかいないから。


「アズ、私が言いたいことを言ってしまって本当にいいの?

 私はアズの人生も変えてしまうかもしれないわ」


「……覚悟の上ですよ。

 それだけ、私もルーチェ様のそばに居過ぎたのでしょう。

 ベルコヴァの未来よりも大事になってしまうくらいには」


「ふふふ。ダメな宰相候補ね。

 ……ありがとう。

 どちらにせよ後悔するなら、ぶつかってみるわ」


「お供しますよ」


「エッカルト様に謁見を申し込むわ」


庭から部屋に戻ると、アルフレッド様はいなかった。

今、顔を見たら何か言ってしまいそうだったから、いなくてよかったかもしれない。


「ジルとルウイが来ました。

 化粧を直したらすぐに行きましょう」


「もう二人が来たの?謁見の許可は出てないでしょう?」


「大丈夫ですよ、行きましょう」


謁見を申し込んでもいないのに大丈夫なんだろうか。

だけど、今行かなかったら言えない気がする。


リマに急いで化粧を直してもらい、宮から外に出る。

そこにはジルとルウイがいつも通りの笑顔で待っていた。


「ジル、ルウイ、謁見室まで行くわ」


「ええ、どこまでもお供しますよ」


「俺もです」


「ついでに私も行きますよ」


「ありがとう」


三人をお供にして謁見室まで向かう。

扉を開けてもらおうとしたら、扉の向こう側からアルフレッド様の声が聞こえた。


「さ、開けますよ」


「アズ、アルフレッド様が中にいるんじゃないの?」


「ええ、だからこそ、行くんですよ」


「え?」


聞き返したのにアズが扉を開けてしまう。

中にいたエッカルト様とアルフレッド様が驚いた顔で振り返る。


「ルーチェ、どうしてここに。アズ、なんで連れて来たんだ」


「ルーチェ様がエッカルト様に話があるっていうから」


「ルーチェが兄上に?」


注目されて、動けなくなったらアルフレッド様が手を差し出す。

その手に吸い込まれるように自然に足が動く。


ああ、ダメだ。

一国の王女に許される願いじゃないと思うのに、

どうしてもこの手を離したくない。


「エッカルト様、私にアルフレッド様をください」


「は?」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ