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これが運命ではなかったとしても  作者: gacchi(がっち)


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44.乱入者

「陛下、お助けください!」


「……精霊は嘘を嫌うという。本当のことを言えば助かるだろう」


「陛下は私よりもルーチェ様を信じるのですか!?」


「私は精霊の存在を知っている。

 なぜなら、アントシュにいた時に精霊が処罰しているのを見たことがあるからだ。

 精霊は人を簡単に殺してしまう。早くしないといたずらだけでは済まなくなるぞ」


「そんなまさかっ」


「うわぁ!痛い!やめてくれ!

 王妃様、どうか私を助けてください!

 このままでは殺されてしまいます!」


アキムは服だけでなく手足も引っ張られ始まったのか、

泣きながら王妃様に助けを求めている。

だが、王妃様のほうも精霊のいたずらが再開したようで、それどころではない。


それを見て、陛下が小声でささやいてくる。


「……ルーチェ姫、アキムは殺されるのだろうか?」


「えっと……精霊は遊んでいるだけだと思います」


「遊んでいるだけ?あれが?」


私に命の危険があるとかならアキムの命も危ないだろうけど、

さすがに嘘をついただけで殺すようなことはしないと思う。


だが、陛下は本気で心配しているようだ。


「精霊たち、話ができないから一度止めてくれる?」


このままでは王妃様とアキムとまともに話ができない。

そう思って精霊を止めたら、いたずらはぴたりと止んだ。


「王妃様、アキム、シンディ様に嘘をついたと認めますね?」


「……嘘なんて……ひぃ!」


王妃様はまだ嘘をつこうとしたのか、精霊に身体を持ち上げられた。

アキムは引っ張られた手足が痛むのか、あちこちをさすっている。


「ルーチェ、俺にも話させてくれ」


「ええ、わかりました」


何か、アルフレッド様が問いただしたいことがあるらしい。


「王妃とアキムに聞きたいことがあるんだ。

 先日、俺の部屋へ夜中に侵入してきた女性騎士がいた。

 捕らえた後、言いわけを聞いてみれば、恋人を人質に捕られているという」


え?ドロテのこと?恋人のトーニオは死んでいるはずでは。


「アントシュの戦いの時に負傷した恋人を保護している、

 無事に帰してほしければ、王弟の宮に仕えて信頼を得るように言われたと。

 そう命じたのはアキムだと」


「わ、私は……そんなことは」


「言っていないと、また嘘をつくのか?

 精霊が来るぞ」


「精霊がっ……いえ、私がドロテにそう命じました」


精霊のいたずらが本気で怖かったのか、アキムは罪を認めた。

それを聞いたアルフレッド様はアキムにすべてを話すように言った。


「……ドロテの恋人は行方不明のままです。おそらく死んだのでしょう。

 アルフレッド様が女性騎士を探していると知って、

 脅すのにちょうどいいと思いました。

 恋人はまだ生きている、だが、ただで帰すわけにはいかない、

 アルフレッド様の宮に入り信用を得るようにと命じました。

 特に夜間に出入りできるようになっておけと」


「それをドロテに言うようにアキムに命じたのは王妃だな?」


「…………はい」


「アキム!?黙りなさい!」


アキムが自分を裏切ったのが信じられないのか、王妃様はアキムを制止しようした。

アルフレッド様が騎士たちにアキムを牢に連れて行くように命じる。


「ドロテを俺の宮に潜入させようとした理由は後で聞こう。

 まぁ、どうせ暗殺しようとか、そういうことだろうが」


「暗殺?アルフレッドを!?

 キャロライナ……お前、アルフレッドを殺そうとしたのか?」


「……私がそのような恐ろしいこと、できるわけありません!

 きっとアキムが私に罪をなすりつけようと!

 陛下なら信じてくださいますよね!?」


「ルーチェ姫、精霊に聞いてもらっていいか?」


「陛下!?」


裏切られたというような顔で陛下を見る王妃様には申し訳ないが、

聞かれたら答えるしかない。


「嘘をついていると言っています。証明しますか?」


「……頼む」


「では、精霊たち。嘘つきは誰?」


王妃様は見えないだろうけど、一斉に精霊たちは王妃様に群がっていく。

目に見えないものにおしつぶされそうになった王妃様は、

そのまま宙に浮いていく。


小さな精霊たちが王妃様の髪をつかんで引っ張り上げている。

宙を浮いた王妃様はそのまま大広間をぐるりと連れまわされている。


「……もう、放しなさいっ!」


「王妃様、もう認めたほうがいいと思いますよ。

 このままなら精霊が何をするかわかりません」


「なら、精霊をどうにかしなさい!」


「……私が?」


「あなたしかいないでしょう!!」


どうしよう。もう精霊にやめていいと言った方がいいのかな。

このままだと王妃様の髪が全部ぬけてしまうかもしれない。

迷っていたら、陛下に止められる。


「ルーチェ姫、止めなくていい。

 キャロライナは精霊の存在を認めていないのだろう?」


「そんな!止めさせてください!陛下!」


「だが、嘘をついていないし、精霊もいないというのなら、

 誰も何もしていないことになる。

 ルーチェ姫が精霊付きだとしても関係ないということになるな」


「……陛下!……私を見捨てるのですか……」


「私は真実が知りたいだけだ。

 キャロライナ、君が私の弟を殺そうとしたのかどうか」


「………うぅ」


もう少しで王妃様も認めるかと思われた時、

大広間の扉から入って来た者がいた。


「お母様!もう嘘はつかないでください!!」


「ラウレンツ!?」


ふわふわの金色の髪に水色の瞳。

まだ幼さが残るけれどエッカルト様にそっくりな顔立ち。

そこには第一王子のラウレンツ様が立っていた。



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