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1.終わりの始まり

この作品を読んでくださっている皆さまへ。




拙い文章ではありますが、少しでも面白さをお届けできればと思っています。


毎日投稿する予定ですので、よろしければ感想やブックマークをしていただけると嬉しいですm(__)m


面白いやつまらないといった感想は、出来れば具体的に書いてくれると嬉しいです!


今後の改善に役立てたいと思います。

「……お前たちなら……!」


誰かの声がする。

水の中にいるみたいに、遠くて、はっきり聞こえない。


俺はゆっくりと目を開けた。

視界に広がるのは、見たこともない景色。城のような場所だ。

しかし床はひび割れ、壁には焦げ跡。倒壊した壁から差し込む月光が、宙を舞う埃を照らしていた。

静寂の中に、風の音と、何かが崩れ落ちる微かな音が混じる。


「……お前たちなら、やつらを……!」


前方に立つ男が叫んでいた。

ローブのようなものをまとった、俺と同い年くらいの男。

だが、その顔には見覚えがない。


「……誰だ、あんた……?やつらって?」


問いかけても返事はない。

いや――たぶん、俺の声は届いていない。

彼の唇が何かを叫んで動くが、音は聞こえなかった。


「……っ!!……るな……!……のむ……!」


ノイズのように途切れた言葉。

何かを伝えようとしているのに、俺には理解できない。

やがて城の外から轟音が響き、黒煙が立ち上った。

視界が白く塗りつぶされていく――


――そして、すべてが崩れた。


「……夢、?」


息を吐く。心臓がやけに早く打っていた。

嫌な汗が首筋を伝う。

窓から差し込む光は、いつもの朝の色。

けれど妙にリアルな夢の残滓が、胸の奥にまとわりついて離れない。


「おーい! 優人ー! 遅刻すんぞー!」


窓の外から聞こえた声に眉をひそめる。

見下ろすと、隼人が自転車にまたがっていた。


高坂隼人(こうさかはやと)

金髪にピアス、夏でも長袖をまくって着こなす自由人。

陽気でノリがよく、運動神経抜群のサッカー部員――もっとも、サボり常習犯でもある。


「お前な~……朝から元気だな」


「いや、優人がのんびりしすぎなんだって。もう7時半過ぎてんぞ!」


「あと10分は平気だろ」


「お前の“平気”って言葉、信用ならねぇんだよな〜」


笑いながら自転車を降りる隼人。

仕方なく、俺もカーテンを開けて制服に袖を通した。


――変な夢だった。

でも、あの男の目だけは妙に現実的で。

その意味を考えると、胸の奥がざわつく。


「おーい早くしろよー!」

「分かってるって!」


たかが夢だ。気にしてても仕方ない。

そう自分に言い聞かせながら、俺は家を出た。



いつもの通学路。


「あぁー暑すぎる…蝉の鳴き声が憎たらしい…」

「もう7月だからなぁ」


そんな他愛もないことを隼人と話していると歩道の向こうから、白い日傘を差した女子生徒が手を振ってきた。


「おはよ、創馬くん、高坂くん〜!」


「おはよー雪菜! 今日もまぶしいねぇ!」


「はいはい、そういうチャラい台詞、いつ聞いても慣れないんだけど」


「照れてる〜?」


「照れてねぇし」


軽口を叩く2人を横目に、俺は笑った。

この3人でつるむのは、もうすっかり日常だ。


篠原雪菜(しのはらゆきな)

綺麗な黒髪にスレンダーな身体。勉強も運動もできて完璧超人みたいな女子だけど、俺たちの前では結構口が悪くて雑なんだよな。

でも、困っている人を放っておけない性格で、それがまた人気の理由でもある。


「そういえばさ、期末近いけど2人は勉強してるの?」


「少なくとも隼人よりは」


「いや俺だって昨日やったって。単語帳三分!」


「三分で勉強って言うなバカ」


「そんなこと言ってるけど創馬くん、昨日の夜もゲームしてたでしょ」


「……正解」


「ほらね〜。二人して私のノート写す気でしょ?」


「バレてる」

「バレバレだな」


笑い合いながら、俺たちは校門をくぐった。

見慣れたはずの朝の風景が、どこか少しだけ違って見えた。



放課後。

教室の窓から見える夕日が、赤く染まっていた。

運動部の掛け声が遠くから聞こえてくる。


「俺昨日すげー変な夢見たんだよな」


不意に隼人が言った。

俺は驚いて振り返る。


「夢?」


「なんかよく分かんねぇやつと走って逃げてる夢。戦場みたいなとこだったかな、昨日見たんだよ。めちゃめちゃリアルだったな」


……心臓が一瞬止まった気がした。


「それ……」


言いかけたとき、雪菜が割り込む。


「え、なに? 夢トーク? ちょっと違うけどあたしも昨日、見たよ。大きな化物が私たちの町を暴れてる夢」


「俺は…倒壊した宮殿みたいなとこで叫んでる男の夢を見た」


「マジか…しかし、3人ともそんな変な夢見るなんて偶然あるのか?」


三人で顔を見合わせる。

妙な沈黙が流れた――その直後だった。


――ピィイイイイイイイイイィィィィ!!


耳をつんざく警報音が校内放送から流れた。


『全校生徒は落ち着いて聞いてください! 本日16時45分、各地で原因不明の“巨大空間異常”が確認されました。現在、安全確認中のため校舎内から出ないように!』


「……巨大空間異常って、何それ?」


雪菜が不安げに眉をひそめる。

隼人がカーテンをばっと開けた。


「おい優人、雪菜! 見ろよ、あれ!」


窓の向こう――

そこには巨大な扉があった

黒く禍々しく輝く扉

中心には時計。時間を示す円形の文字盤。針はゆっくりと、確実に動いている。

周囲の空気が波のように揺れていた。


「……なんだ、あれ」


誰もが息を呑んだ。

校庭の生徒も、通りの人も、誰ひとり声を出せない。


その日、日本中――いや、世界中で同じ現象が起きた。


――首相官邸・危機管理センター。


深夜にもかかわらず、地下の対策本部は明かりが絶えなかった。

 各地から届く報告がひっきりなしにモニターを埋め、通信担当の官僚たちは休む暇もなく指示を飛ばしている。

 中央の大型スクリーンには、全国地図と九つの赤いマーカーが点滅していた。


「現在、日本国内で確認されている“ゲート”は九箇所。東京駅前、富士山山麓、大阪湾、札幌近郊、福岡市東部、仙台市郊外、名古屋市南区――そして地方都市を中心に三箇所です」


防衛省の制服を着た男が報告書を机に置く。

 その横で、内閣官房長官が腕を組み、疲れのにじむ声で言った。


「各国でも同様の現象が確認されているのか?」


「はい。アメリカ、ロシア、中国、EU各国――発生時刻はいずれも日本時間の午後四時四十五分前後。誤差は最大で一分以内です」


「つまり、“同時発生”というわけだな」


場の空気がさらに重くなる。

 偶然の域を超えた“同時性”。

 それは自然現象ではなく、意図的な“何か”の介入を示唆していた。


「自衛隊の出動要請は?」


「すでに内示済みです。首都圏では第一師団、関西では中部方面隊が警戒展開中。ただし、ゲート周辺は強い電磁波と重力異常のような反応を示しており、接近が困難です。ドローンも百メートル圏内で通信が途絶します」


「科学的な説明はまだ出ていないのか?」


「理化学研究所が解析を進めていますが、“現代の物理法則では説明不能”との回答です。外部との空間構造が異なる可能性も指摘されています」


室内の誰もが、息を呑んだ。

 “説明不能”――官僚たちが最も恐れる言葉だ。


 そのとき、別の職員が慌ただしく駆け寄った。


「新しいデータです! 各ゲート上空に浮かぶ“時計”の針は、この地球の時間と同じ速さで規則的に減少います!」


 スクリーンに映し出された拡大映像。

 確かに、どのゲートにも円形の文字盤が存在し、時を刻むように針が動いている。


「分析班の試算によれば、針がゼロになるまで――七百二十時間。約三十日です」


「つまり一ヶ月後に“何かが起こる”と?」


「その可能性は高いと考えられます」


 総理は、しばし沈黙したあと、低く言葉を発した。


「最悪の事態を想定しろ。内閣府、警察庁、防衛省、科学技術庁、すべて連携して対応に当たれ。

 国民には“自然現象”として発表しろ。パニックだけは避けるんだ」


 重々しい命令が飛び交う中、モニターの針は――静かに、確実に減り続けていた。



三日後。


ニュースは、さらに世界を混乱させた。


『速報です! 全国各地で“ゲート”発生以降、正体不明のアーティファクトが次々と発見されています。指輪やペンダント、更には剣や杖など様々。手にした人々は、身体能力や特殊な力の変化が宿るとの噂があり、世間では神器として――』


教室のテレビを囲む生徒たち。

画面には、空を飛ぶ人影や、手のひらから火を放つ男の姿。


「……すげぇな、これ。マジで超能力者じゃん」


「いや、でも……怖くない? てにしたら"力が手に入る"なんて、あり得ないでしょ」


雪菜の声には、不安が滲んでいた。

俺は無意識に窓の外のゲートを見る。

ゲートに神器、そして異能。

それは――とてつもない災厄が、すぐそこまで迫っている証のように思えた。


その日を境に、学校も街も、少しずつ空気が変わった。

 授業中も、休み時間も、誰もがゲートの話をしている。

 SNSでは「異能者」や「神器保持者」と名乗るアカウントが増え、動画サイトには“能力実験”を撮った映像が次々に投稿された。

 だが一方で、行方不明者や暴走の噂も後を絶たず、ニュースは一日中その話題ばかりだ。


「なぁ優人、もし本当に力が手に入るって言われたら……どうする?」


 放課後、屋上で隼人が呟いた。

 夕焼けに照らされた横顔は、いつになく真剣だった。


「……正直、怖い。でも、たぶん俺は見に行くと思う」


「だよな。俺も、なんか……呼ばれてる気がするんだ」


“呼ばれてる”

 その言葉が、心の奥で引っかかった。

 あの夢の中の声を思い出す。


「……お前たちなら――」


 意味も分からないのに、どうしてか、胸の奥が熱くなる。


 家に帰っても、ニュースはまだ続いていた。

 ゲート周辺で新たな光反応が観測されたとか、

 海外では軍が接近を試みて全滅したとか。

 情報が錯綜し、何が真実なのか誰にも分からない。


 俺はベッドに横たわりながら、ぼんやりと天井を見つめた。

 あのゲートの奥には、一体何があるのか。

 何かが始まっている――そんな確信だけが、胸の奥で渦を巻いていた。


夜、またあの夢を見た。


 倒壊した城。

 見知らぬ男の叫び。


はっと目を覚ますと、時計は午前二時を少し過ぎていた。

息が荒い。胸の奥がざわついて仕方がなかった。


隼人が言っていたように、まるで誰かに呼ばれているような――そんな感覚。


気づけば、玄関に立っていた。

靴を履き、外に出る。

自分でもなぜこんなことをしているのかわからない。だが、行かなくてはいけない気がする。


夜風が肌を撫で、遠くで街灯が揺れている。

無意識のまま、足がある場所へと向かっていた。


――学校裏の古い神社。


昼間は誰も来ない、町の外れの小さな祠。

境内に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。


静寂。

風の音も、虫の声も、何も聞こえない。


「……優人?」


背後から声がした。振り返ると、隼人が立っていた。

金髪が街灯に照らされ、わずかに乱れた表情をしている。


「お前も……夢、見たのか?」

「……ああ。変な男が出てきてさ、」

「なにそれ、私もだよ」


もう一人、雪菜がやってきた。黒く長い髪が月光を反射して美しく揺れる。


「まさか三人とも同じ夢を見るなんて、偶然じゃないよね」

「……ああ」

「なぁ…あれ見ろよ」



隼人に言われ、視線を向けた先――祠の前に、三つの光が浮かんでいた。

銀と金、そして黒。

それぞれが呼吸するように、淡く脈打っている。


「なんだ……これ」

「わかんねぇけど、この光が俺らを呼んでいた気がする」

「私もそう思う。それに…」


誰からともなく、一歩、二歩と前に出る。

そして三人同時に、光へと手を伸ばした――


――視界が白に染まる。


目を開けると、そこは真っ白な空間だった。

何もない。けれど、確かに“境内ではないどこか”だとわかる。


そのとき、低く響く声が告げた。


>選ばれし者たちよ。汝らに試練を与える。己の恐怖を超え、敵を討て


床が光を放ち、三つの円陣が現れる。

その奥で、黒い影が形を取り始めた。


「なっ……なんだよこれ!」

「幻覚……じゃない!?」

雪菜の声が震えた瞬間、怪物が咆哮し三人を、別々の空間へと引き裂いた。


――――――――――――――――――――――


隼人の足が地面を叩く。

 だが、その地面は「土」ではなかった。

 焼け焦げたように黒ずみ、赤熱したひび割れの間から、灼熱の光が漏れている。

 空は血のように赤く、遠くで雷鳴が鳴り響く。


 「……どこだ、ここ」


 顔を上げた瞬間、空を裂くように閃光が走った。

 光の中から、巨大な影が滑るように現れる。


 羽のように見えるそれは、まるで刃の集合体。

 全身から放電しながら、猛スピードで空を舞う鳥の化け物だった。


 「ちょ、マジかよ……!」


次の瞬間、轟音とともに閃光が隼人の足元を貫いた。

 反射的に飛び退いたが、地面は大きく抉れ、砂塵が舞い上がる。


 (速ぇ……!)


 鳥が再び旋回し、雷光をまとって突進してくる。

 思わず腕で顔を庇った——そのときだった。


 耳元で何かが金色に光った。自分では見えないがピアス…?

 そして頭の中に、何かが流れ込む。

 ——走れ。

 ——風を裂け。


 「よくわかんねーけど、いっちょやったるか!」


隼人の身体が、光に包まれた。

 視界の端が流れる。地面を蹴った瞬間、世界が一瞬で後方へと飛び去った。

 雷と雷がぶつかり合い、衝撃波が走る。

 荒野の上、二つの閃光が軌跡を描きながら、ぶつかり続けた。


――――――――――――――――――――――


雪菜の目の前に広がっていたのは、静謐な氷の世界だった。

 空気は息をするたびに凍りつくほど冷たく、白い息がすぐに霧散する。

 足元には氷の湖。頭上には極光のような光が漂っていた。


 「……寒い、けど……綺麗……」


 思わずつぶやいたその声が、氷に反響する。

 だがすぐに、かすかな足音が響いた。


 正面の氷霧の中から、一頭の“鹿”が姿を現した。

 透き通るような白銀の体毛。

 しかし、その瞳は氷のように冷たく、角は槍のように尖っていた。


雪菜は一歩、後ずさる。

 その瞬間、鹿の足元が砕け、氷の槍が無数に生まれた。


 「っ……!」


 とっさに身を翻す。氷柱が頬をかすめ、冷気が肌を切る。

 息を吐いた瞬間、いつのまにか着けていた“ペンダント”が胸元で淡く銀の光を帯びた。


 ——護れ。

 ——凍てつかせよ。


 「……そういう感じね、嫌いじゃないよこういう展開」


彼女の指先から冷気が流れ出す。

 氷が形を変え、腕に薄い氷の盾が形成された。

 次の瞬間、鹿が駆け、雪花もまた冷気を纏って立ち向かった。

 白と白の戦場で、氷が砕け散る音が響く。


――――――――――――――――――――――


優人が目を開けたとき、そこは、薄暗い宮殿のような場所だった。

 無数の燭台が、かすかな炎で青く壁を照らしている。

 天井は高く、石造りの床には無数の剣の跡。

 空気は重く、冷たい。まるで時間そのものが止まっているようだった。


「……ここは……」


 歩みを進めると、玉座の前に、ひとつの影が立っていた。

 古びた甲冑を身にまとい、ぼろぼろのマントを引きずる“亡霊の剣士”。

 その目には光がなく、ただ虚空を見つめている。


 「試練って、まさか……」


 答えは、すぐに返ってきた。

 金属音とともに、亡霊が剣を抜く。

 青白い炎が刃を包み、静かに構えを取った。


その光を受けて、優人のつけられていた右手の指輪が黒く輝いた。

 指輪の中心に埋め込まれた漆黒の宝石が、鼓動のように脈打つ。


 ——抗え。

 ——無念の影を越えろ。


 一瞬だった。

彼の右手に“黒く武骨な剣”が形成された。

 「……なにがなんだか分かんないけど、無抵抗でやられる気はないよ」


 刃を構えた瞬間、亡霊が動いた。

 金属の悲鳴のような音。

 火花が散り、衝撃が全身を駆け抜ける。


「ぐっ……!」


 重い。だが、剣を握る手は離れない。

 亡霊の刃が再び閃く。

 優人は踏み込む。刃と刃が交わり、金属音が響き渡った。


 青い炎と青い光。

 亡霊と人間。

 静寂の宮殿に、二つの影が交錯する。


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