表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/28

授業

「はぁ……。人生で二度も学生生活を味わう羽目になるなんて」


 昼下がりの穏やかな人工の日差しが差し込む教室で、私はこっそりとため息をついた。

 教室は机がない大学の講義室といった様相で、20名程度いるAクラスの面々は自由に広々とした長椅子に座っている。

 初日は午後から登校し、Aクラスの生徒として参加することになった最初の座学。記念すべき科目は「人類宇宙進出史」だ。

 よくわからないうちにタイムスリップしてきた私にとってはベストタイミングな授業。けどその前に現代《21世紀》と今の科学の差がすごくてそれどころではない。

 生徒の周りには透過ディスプレイ型の教科書が宙に浮き、教壇に立つ歴史のガルベス先生は独特な語り口調で授業を進めては、時折腕を横に振るような動作で生徒にリアルタイムにデジタル資料を配布している。

 いや、そんなことよりも私にとってもっと重要なことがある。

 

(なんで机がないのよ……!)


 机がなければメモもできない。寝ることもできない。早弁もできない。いや、メモは宙に浮いているディスプレイにできるみたいだけど、やり方がわからない。そこまで調べてないのだ。

 そして私はといえば授業が始まってからというもの、ひたすらにこの宙に浮く教科書を操作してはざっくりとした歴史を流し読みしているのだ。

 以前だったらこんな読み方ではテストで赤点確実とも呼べるのだが、このアンドロイドの身体は記憶力も良いが地頭もいいので、ちゃんと理解しながらスラスラと読めてしまう。


 (めっちゃチートとじゃん……!)


 こんなことが許されていいのだろうか!?2000年後の世界だからいいのか!

 

『サーシャはん、面白くて夢中になるのはええけど、ちゃんと先生の話ききやぁ?』

「わ、わかってるわよ」


 ホロの言葉に私はページをめくる手を止める。

 教科書を読んでいて面白いと思ったことなんて数えるほどしかないのだけど、今日はずっと面白い。というか楽しい。


「帰ったら続き読もうっと」

『教科書を娯楽と勘違いしてないかサーシャはん。まぁええけど』


 ホロのあきれ混じりの声に、授業は進んでいく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ