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留守番電話

作者: にぼし

 コンビニの夜勤を終えた青年の携帯に留守番電話が残っていた。再生ボタンを押すと、金属音とグシャという潰れる音が聞こえた。水が破裂するような、硬いものが砕けるようなそんな音。金属音が止まると、鳥の鳴く声がして、音声は終わった。

 青年は耳から携帯を離し、画面をみた。履歴には今日の日付と時間が記されている。時間は六時三十四分。画面の右上に表示されている今の時刻は六時三分。履歴の日付か時刻が間違っているのかと考え、一度画面を閉じ、もう一度開ける。日付も時刻も、目の前に置かれているパソコンのカレンダーと同じだ。

 「あれ、まだ着替えてないの」

 店長の声に青年は顔を上げ、すぐに着替えてコンビニを出た。

 外は薄暗く、冷たい風が吹く。コートのポケットからイヤフォンを出し、携帯に繋げてラジオを流した。朝のラジオを聴きながら帰宅するのが青年の習慣だった。ラジオパーソナリティーの男が雑談をし、リクエストされた音楽を流した時、道の前から友人が歩いてきた。青年は片手を挙げると、友人も青年に気付き、手を振った。二人は立ち止まり、青年はイヤフォンを外した。

 「夜勤終わりか。お疲れさま」

 「ありがとう。そっちはまた喫茶店に行っていたの」

 二人はよく、夜だけ開いている喫茶店で顔を合わせていた。

 「ううん。今日は家で寝てたんだけど、変な時間に目が覚めちゃってさ。寝れないし、なんだか落ち着かないから散歩してるんだ」

 「健康的だな」

 「これを毎日続けられたら、健康だね」

 友人は笑いながら、手を振り「じゃあ、おやすみ」と言って歩き出した。青年も「おやすみ」と返し、イヤフォンをつけて歩き出した。

 ラジオでは今日の天気予報が流れている。いつも通る踏切が近付く。踏切を電車が通る。いつも通りの光景だ。しかし、今日は違っていた。踏切の遮断機が降りていなかったのだ。ライトも点滅していない。警告音はなっているかとイヤフォンを外したが、警告音も聞こえない。青年は駅に伝えなければと思い、携帯を取り出して画面を見た。時刻は六時三十四分。もし、友人に会わず、ラジオを聴きながらここを歩いていたら、近付く電車の音にも気付かず……。

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