第4話「ギルド登録は調査の後で」
今回は最後に波乱の予感?
「あれ?ど、どうしたの?」
「貴方が言ってる事が理解出来なくて気絶しちゃったのよ!」
ツクルは何故シカリが気絶したのか分からずキョトンとし、アリアは気絶したわけを説明する。
「ぴょん?お兄さん、どうしたぴょん?」
「悪い事しちゃったかな〜…キネウサギ。この人の目を覚まさせてあげて。」
「分かったぴょん!」
キネウサギは杵を取り出す。
「起きてぴょん!」
次の瞬間、キネウサギはシカリの脛に向かって杵を振り下ろす。
「おごおっ!?」
あまりの衝撃にシカリは悲痛な叫びを上げながら飛び起きる。
「何するんだ!?」
「ごめんだぴょん。こうするしか貴方を起こす方法が無かったぴょん。」
「何なんだ君達は!いい加減にしたまえよ!?」
「今回の件は本当にごめんなさい!」
シカリは漫才じみた事をさせられ、挙句の果てに脛を杵で殴打された事に対して怒り心頭であり、ツクルは謝る。
「でも、本当にこのモンスター達は危害を加えないんです!俺が作った、最高の友達なんです!騒ぎを起こしてしまったことは謝るからどうか許してください!」
「…。」
シカリはツクルが土下座までしている様子を見て黙り込む。
「わいらの責任やさかい!どうか許して!」
「私達に敵意はありません!私達は人々の役に立つ事を信条としているんです!」
ラッパこうもりとクラバー、その他のクリモン達も頭を下げる。
「まぁ…実際に危害は加えてないし、やっていた事は人助けだからな…分かった。拘束は取り止めにする。」
「ホント!?」
「それで?この街に来た目的は?」
「あぁ…その事なんですけど…ちょっと待ってくださいね。」
するとアリアがツクルにゴニョゴニョと耳打ちする。
「え?ギルド登録をしたいからあまり問題をクリモンに起こさすな?」
「バカ!言ってどうすんのよ!?」
「ギルド登録?そうか…レーセ。あれを。」
「分かったわ。」
レーセは水晶玉を持ってくる。
「今日はギルドマスターが留守だからね。私達が担当するわ。取り敢えずこの水晶玉で貴方の魔力を測らせてもらう。」
「ひょ?魔力?」
「魔力っていうのは魔法を使う為に必要なもの。魔力は精神状態や身体状況に深く関係していて強大な魔法を使えばその分魔力を消費して自分の精神や身体に影響を及ぼすわ。まあ鍛錬を積んだりすれば自分の身体に巡る魔力は増やすことが出来るわ。魔法使いなんかは魔力の項目が最重要になってくるわね。また少なくても大丈夫よ。剣士とか格闘家とか魔力がそんなに必要ないジョブも多いしね。」
レーセは説明しながら水晶玉を置き、ツクルに水晶玉へ手を当てるよう促す。
「ほ〜、つまりはこれで俺の最適な職業が分かるって事ね。緊張してきたな〜…よいしょ。」
ツクルは水晶玉に手を置く。
「およ?何も起きないよ?」
しかし、水晶玉は何の反応も示さず、ただ光を反射しているだけだった。
「そんな事は…ちょっと失礼。」
シカリが水晶玉に手を置くと水晶玉は光輝き、6000という文字が出て来る。
「やはり正確に測れている。もう一度頼む。」
「ほい。」
ツクルはもう一度水晶玉に手を置くが水晶玉は何も反応を示さない。
「やっぱ何も起きない…何でだろ?」
「う〜ん…うん?」
シカリが水晶玉をよく見てみるとある文字が水晶玉に映し出されている事に気付く。
「うん…?測定…不能…?」
水晶玉には測定不能と書かれていたのだ。
「うん?どうかしましたか?」
「あ…あぁいや何でもない…何も映されないという事はゼロ…という事かな!」
「ええっ!?ゼロ!?」
「だが安心してくれ!魔力がゼロでも大丈夫だ!剣士とか格闘家とか色々ある!それに君は魔力が無くとも絵を実体化させるという能力を持つ!だから魔法が使えなくてもギルド登録は可能だ!」
「マジっすか!?やったやったー!」
「ほっ…」
ツクルは喜び、アリアは安堵する。
「ふぅ〜…何とかなった〜…」
「肝冷えちゃいました…」
「そうだね〜…」
ラッパこうもり達も安堵する。
「じゃあ早速ギルド登録を…」
「ちょっと待ってくれ。ギルド登録をする前に君に試験をしてもらう。どれか一つ依頼をこなして欲しい。サポートはつけるから安心しろ。」
「ほう。試験か…俺頭悪いからな〜…何か頭使わなそうなやつがいいかな〜。」
「ではうってつけの物がある。調査依頼だ。」
「調査依頼?」
数十分後…
「よ〜し!みんなで協力して調査を無事にこなすぞ〜!」
「「おー!」」
「お、おー…」
ツクル、ラッパこうもり、クラバー、アリアは森の中に入っていた。
「えっと、アリアはサポーターだから、俺とクリモン達で協力すればいいんだよね?」
「まあそうね。」
「よっし!頑張るぞ!で、何調査したらいいんだっけ?」
「ズコッ!?覚えてないの!?」
「ツクルさん、今回はですね、この森の奥にある洞窟を調査しろとの事ですよ。」
「ああそうだった!それじゃ早速行ってみよう〜!」
ツクル達は森の奥にあるという洞窟に向かう。
「ふ〜ん…あれか…」
その様子を近くの木の陰から何者かが見ていた。
「へへっ。面白くなりそう〜。」
人影はニヤリと八重歯を光らせながらツクル達を追いかけていく。
「て事で到着しましたー!」
数分後、ツクル達は森の奥の洞窟の前に到着していた。
「普通にあっさり着いたわね…まあ初心者向けの依頼だから当然か。」
ツクル達は洞窟に入っていく。
「で、どうしてこの洞窟を調査するの?」
「最近、この洞窟で魔物を見たって目撃情報があったの。それが本当かどうか調べるためよ。いざとなったら私が守るから安心して。」
「今のって告白?」
「ぶっ飛ばしていい?」
「すみません。」
ツクルとアリアはそんな会話をし、ラッパこうもり達はそれを微笑ましく見ていた。
「うん?」
するとラッパこうもりの耳がピクっと動く。
「どうしました?」
「何か奥の方から気配が…」
ラッパこうもりが何かの気配に気付いたその時、ズシン、ズシンと音が聞こえてくる。
「え?」
奥の方から巨大な影が現れる。
「キシャー…」
現れたのは2メートルはある人型のゴキブリモンスターだった。
「ギャー!?ゴキブリの怪人〜!?」
「ひぃ〜!?う〜ん…」
「わいゴキブリ苦手やねん…後は任せた!」
ラッパこうもりとクラバーは気絶する。
「嘘でしょ!?てかこいつは…」
ゴキブリモンスターは二人を睨み、六本の腕をカサカサと動かす。
「こいつは…ゴキブラス!?」
「な、何?ゴキブラス?」
「繁殖力がえげつないモンスターよ!一匹見たら三十匹近くにいるって思って!」
「ゴキブリじゃん!?」
「仕方ないわ!ゴキブラスはゴキブリが突然変異によって生まれるモンスターなんだから!人並みの知性もあるから気をつけて!」
「え?知性あるのこいつ?」
「キシャー…!」
ゴキブラスは低い声でツクル達を威嚇する。
「知性あるって言っても防衛本能が働いてそうな感じじゃ、話は聞いてくれなさそうね…」
「キシャー!」
ゴキブラスはツクル達に襲いかかる。
「わ〜!?」
ゴキブラスは腕でツクルを叩きつけようとするが、ツクルは間一髪で避ける。
「キシャ…!」
ゴキブラスはツクルを追いかける。
「わあ〜!?追いかけてきた〜!?」
「キシャー!」
ゴキブラスは素早くツクルの前に回り込む。
「速っ!?」
「っ!危ない!」
アリアは新しく買った杖から炎を繰り出す。
「キシャッ!?」
ゴキブラスはその炎を見てたじろぐ。
「虫は火に弱い。世の中の常識よ。ツクル!今回はこいつがいるって事を知らせればいいだけ!逃げるわよ!」
「え?で、でも知らせたらどうなるの?」
「それは…他の冒険者がこいつを駆除しに来るだけよ。」
「駆除…」
ツクルは火を見て怯えるゴキブラスを見る。しかしゴキブラスは炎を振り払おうと腕をブンブンと振るい始める。その目には自分は燃えてもいいという覚悟が表れていた。
「え?何で…?」
「ツクル?どうしたの?早く逃げるわよ!」
「ちょっと待って!」
ツクルは目を凝らす。炎によって真っ暗に包まれていた洞窟の奥が僅かながらに照らされていた。そしてツクルはゴキブラスが何故苦手な火に立ち向かうのかが分かった。
「子供が…いる…」
「え?」
ツクルはボソッと呟く。
「アリア!待って!」
「え?」
ツクルは落書き帳を取り出す。
「バッタジン!」
「おうよ!」
ツクルはバッタジンを落書き帳から出す。
「おっ。何やらお困り事かい?」
「アリア!火を止めて!」
「え?何言って…」
「お願い!」
「わ、分かったわ!」
アリアはツクルの必死の訴えを聞いて炎を慌てて止める。
「キシャ…?」
「バッタジン、実はかくかくしかじかで…」
「ほうほう。」
「同じ虫だろ?言葉分かったりする?」
「え?あいつの言葉を翻訳しろってか?」
「うん。」
「な〜に、そんなのお安い御用さ!」
バッタジンはゴキブラスに近づく。
「キシャ…!」
「ちょっと待ってくれ。俺達に敵意はない。事情を説明してくれないか?このままだとお前は駆除されちまう。」
バッタジンはゴキブラスを説得する。
「キシャ〜…!」
ゴキブラスは警戒を解かない。
「何か事情があるなら教えてくれ。俺達は敵じゃない。頼むよ。」
「キシャ…キシャキシャキシャ…」
ゴキブラスはバッタジンに耳打ちする。
「何々?お前達に敵意は無いことは分かった。この洞窟を住処にしていたから来るもの全てが敵だと思っていた。だとさ。」
「じゃあ何で洞窟に?」
バッタジンはツクルの疑問をゴキブラスに翻訳して耳打ちする。
「キシャキシャキシャ…」
「ほうほう…こっちに来てくれだとさ。」
ゴキブラスはツクル達を奥の方に案内する。
「これは…!」
奥の方には数十匹の小さいゴキブラスがいた。
「ゴキブラスがこんなに…」
「もしかして…これ子供達かしら…?」
「キシャキシャキシャ…」
「ふむふむ。俺達は見た目のせいで他の種族から忌み嫌われ、行く先々で駆除されたり、傷つけられたりしてきた。そんな中、住処を探して見つけたのがこの洞窟だった。この洞窟は何の生物もいないし、俺達の住処にピッタリだった。でも、人間に目撃されてしまった。やっと安心して住める場所を奪われたくない…だから俺は子供達を守る為に来る人間を襲おうとしてたんだ…なるほどな〜…」
バッタジンの目から涙が出て来る。
「くっ…お前も苦労したんだな〜…!」
バッタジンはゴキブラスの事情を聞いて同情する。
「そうだったの…」
「ごめんね。いきなり住処に入ったりして…」
アリアとツクルはゴキブラスに頭を下げる。
「まあこれで依頼は達成だけど…このゴキブラス達をどうするかよね〜…事情を説明すれば分かってくれるかしら…」
「よし!俺に任せて!」
ツクルはゴキブラスの前に立つ。
「俺が何とか説得するから、安心して!それに…君達にもっと安全な場所を用意してくれるようお願いするよ!」
「おっ!それいいな!」
「えっ!?本気!?」
「本気も本気!話せば分かってくれるよ!」
バッタジンはキョトンとしているゴキブラスに耳打ちする。
「キシャ…!?」
ゴキブラスは自分を怖がらず、更には住処まで用意するというツクルの言葉に驚きながらも目には涙が溜まっていた。
「グッ…ウウ…」
ゴキブラスは地面に手を付け、涙を流す。
「ありがとう…だってさ!」
「へへ!」
「…。」
アリアはツクルを心底不思議に思う。何故、自分を襲ってきた相手にそれほど優しく出来るのだろうか。まして相手は人間ではなく魔物。更に言えばツクルはこの世界の出身ではなく、魔法もなければ魔物もいない異世界。なのに何故魔物の事が平気なのだろうか。考えれば考えるほどアリアの頭はツクルの事でいっぱいなる。
「よっしゃ!そうと決まれば早くギルド本部に戻ろう!行こうアリア!」
「えっ?あ、あぁうん!」
ツクルとアリア、ゴキブラスとバッタジンは洞窟から出る。
「はっ!?わいら何してた?」
「ちょっ、ツクルさん待ってー!」
ラッパこうもり達は気絶から目を覚まし、ツクル達を追いかけ、ツクル達は外に出る。
「よし!今から君をこの洞窟に住めるように説得するからな!待っててよ!」
「キシャ!」
ツクル達が街に戻ろうとしたその時。
「へぇ〜、優しいんだね君。」
「え?」
「うん?」
女性の声が響き、ツクル達が前を見るとアリアに絡んでいた男達、そして、一人の女性がいた。
「アンタ達は…!」
「…!」
アリアは男達を睨み、ツクルはゴクリと唾を飲む。
次回「邂逅とアリアとお人好しのお馬鹿さん」に続く。
次回はアリアが大活躍!