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第2話「異世界の基本は普通じゃない」

だいぶ初期設定から変えました!

「ラッパこうもり〜!」

「ツクルは〜ん!」


ラッパこうもりとツクルは涙を流しながら抱きしめ合う。


「夢じゃないんだよね…!本当にラッパこうもりなんだよね!?」

「せや!夢やない!ずっとずっと会いたかったで〜!」


ツクルは自分が描いたモンスターと出会えた喜びと感動で号泣しており、ラッパこうもりも自分を描いてくれたツクルと出会えた感動でツクルと同じように号泣する。


「…。」


女の子は何が起きたのか分からず目をこする。無理もない話だ。今、目の前で起こったことを簡単に話すと自分を助けようとした少年が持っていた本からモンスターが飛び出した。そんな事実を受け入れる事は中々出来ない。


「ねぇ…」


女の子は恐る恐るツクルに話しかける。


「うん?」

「あ、お嬢ちゃん大丈夫やったか?」


ラッパこうもりは女の子の安否を確認する。


「うん。私は大丈夫なんだけど…貴方、何者?」


女の子は気になるのだ。本からモンスターを出すという摩訶不思議な少年の事が。


「な、何者?えっと…俺はツクル!総三ツクル!未来の大物錬金術師とかは目指してない至って普通の少年です!」

「嘘つかないで!普通の少年なわけないでしょ!?」


ツクルは自己紹介するも女の子は普通の少年と言い張るツクルに詰め寄る。


「ど、どうしたの!?距離感近くない!?もしかして割とグイグイ来るタイプ!?」

「う〜ん…!」


女の子はツクルをじ〜っと見る。身体の隅という隅をまじまじと見続け、最後にツクルのほっぺをむにゅっとつまむ。


「お、およよ?」

「じ〜っ…」


女の子はもはやヤンキーの様な目つきでツクルを見る。


「う〜ん…はあ…」


女の子はため息をつきながらツクルから離れる。


「あ…あの〜…」

「取り敢えず…まずは助けてくれてありがとう。私の名前はアリア。このお礼はきっちりとさせてもらうわ。」


女の子、アリアは礼を言う。


「アリアさん!よろしくお願いします!」

「よろしゅうな!」

「でも、その前に一つ質問。貴方のその本…一体何なの?」


アリアは落書き帳を指さす。


「これ?これは落書き帳だよ!俺が趣味で描いてるんだ!ほら!」


ツクルは嬉々として落書き帳を開き、描いてあるモンスターを見せる。


「何これ…?色んなモンスターが描いてある…そこにいるモンスターも貴方が描いたの?」

「うん!ラッパこうもりは俺が初めて描いたモンスターなんだ!俺の一番の友達!」

「そうそう!そこに描いてあるモンスターやロボットも皆ツクルはんの友達や!」


落書き帳はラッパこうもりの言葉に答えるように光る。


「うっ!?…!やっぱり…貴方、何らかの能力者…!」

「の、能力者?」


聞き馴染みのない言葉にツクルはポカンとする。しかし、察しは良いのか、ツクルは即座にこんな事を思う。


もしかして…俺が異世界に来て与えられた能力って絵を実体化…つまり命を与える能力なのか!


「えっと…アリアさん!実はなんですけど…!」


ツクルは思い切って自分はこことは違う世界から転生してきたという事、自分には絵に描いたモンスターを実体化させる事が出来る能力がある事、好きな食べ物はピーマン、嫌いな食べ物はワカメ、身長169センチ、体重50キロ、好きなタイプはツンデレ金髪ツインテールということを話す。


「後半の情報はぶっちゃけ要らないけど…好きなタイプって…」

「えへへ。正直アリアさん、俺のタイ…」

「ストップ!」


アリアは自分のタイプにドストライクだと言おうとするツクルだが、そんな事を初対面で言ったら絶対引かれる。そう思ったラッパこうもりは咄嗟にツクルの口をふさぐ。


「まあまとめると、貴方は別世界からやって来てその影響か何かでその能力に目覚めたって事ね…」

「そうなります。」

「ツッコミ所はあるけどまあ分からなくはないわ。この世界は貴方の世界とは違って魔法があるし、魔物もいる。この世界では普通の事だけど貴方の世界では普通じゃない。何が起こるか分からないもの。貴方みたいな存在が現れるのも頷けるわ。」


アリアは何とか納得する。


「う…うう…」


すると気絶していた男達が目を覚まして起き上がる。


「くそ…!覚えてろよ!」


男達は逃げ出す。


「もう悪いことしちゃダメだよ〜!」

「心入れ替えるんやど〜!」


ツクル達は男達が改心する事を祈りながら手を振る。


「ねえ貴方達。私の家に来てくれない?」

「え?いいの?」

「うん。色々と教えてあげる。」


アリアは自分の家にツクルを連れて行く。


「くそ!何なんだってんだ!」


男達は離れた場所に逃げており、周りは木でいっぱいだった。


「兄貴〜…もう辞めたほうがいいんじゃないっすか?」

「そうっすよ〜。あの組織に入ってからというものろくな目に遭ってないっす〜。」

「うるせぇなお前ら!そうも言ってられねぇだろ!組織のお偉いさんににゃ逆らえねぇ…それが組織のルールだ!」

「兄貴…」


大柄の男はバツが悪そうに言う。


「辞めたいんだったら辞めれば?」


その時、何者かの声が聞こえてくる。


「っ!?」


男達はその声で表情が引きつる。恐る恐る声が聞こえる上の方向に視線を向ける。


「やあ。」


そこには木の上に登っている女性がいた。褐色肌で狼のような耳と銀色に輝く髪をなびかせながら男達の前に飛び降りる。


「君達さ〜、任務の意味分かってる?成功させなきゃ意味がないんだよ?ま、山賊出身の頭が固い部下に最初から期待なんてしてないんだけどさ。」

「ぐ…!し…仕方ねぇだろ…」

「あ?何?聞こえないんだけど?」


ボソッと呟く大柄の男に女性は八重歯を光らせながら詰め寄る。


「うっ!?し、仕方ないだろ!あいつから勾玉を奪おうとしたら変な奴が現れて、そいつが持ってる本からモンスターが出て来たんだから!」

「はぁ?何それ?」

「そのまんまの意味だよ!そいつがモンスターを本から出したんだって!信じてくれ!」

「へぇ〜…」


女性はニヤリと笑う。


「面白そうじゃん…!」


さてツクル達はというと、街の外れにあるお屋敷に辿り着いていた。


「わっ、大きいお屋敷。」

「ここが私の家よ。入って。」

「えらぁお金持ちさんやったんやね〜。」

「まあこう見えて元貴族だからね。今は訳あって平民だけど。」


ツクルは屋敷に入ろうとするが立ち止まる。


「こういうお家にお邪魔するんだったら誠意を見せないとな!」

「え?」


アリアがツクルが呟いた言葉に反応する前にツクルは落書き帳からモンスターを出していた。


「ツクルさん!やっとお喋り出来ますね!」

「蟹の怪人、クラバーだよ!」

「…は?」


アリアは困惑する。先程ツクルが言っていたのは誠意。蟹の怪人を実体化させる事の何が誠意なのだろうと心底アリアは疑問に思う。


「こういう所には高級なイメージを持つモンスターがふさわしいと思ってね!だから蟹!言ってることは何もおかしくないかに?蟹だけに!」

「確かに!蟹だけに!」

「上手い!座布団一枚!」


上手くもないダジャレを言うツクルとラッパこうもりにクラバーは花吹雪をかける。そんな様子を見てアリアはこう思う。


あ、薄々感じてたけどこいつら馬鹿だな?…と。


「ま、まあ取り敢えず上がって。」

「お邪魔しま〜す。」

「邪魔すんで〜。」

「邪魔するなら帰ってくださ〜い。」

「はいよ〜。」


クラバーの一声でラッパこうもりはその場から去ろうとする。


「って何で帰らなあかんねん!そもそもわいらは落書き帳が家やろ!」

「「あはは〜。」」


ラッパこうもりとクラバーは仲良しなのか一緒に笑い合う。


「何なのこいつら…」

「面白いでしょ?」

「面白くはないけど…ま、いいわ。貴方にこの世界の事教えてあげる。」

「お願いします!」

「じゃあ改めて…私はアリア。「アリア・ワイザー」。さっきも言ったけど元貴族で今は平民。ジョブは魔法使い。ここで言うジョブはまあ…職業ね。私は魔法を使うのが得意な魔法使いの一員。他にも剣士だったり闘士だったり色々いるわ。そして、私はギルドにも入ってる。」

「ギルド?」

「ギルドって何や?」

「冷やす事じゃないですか?」

「そりゃコールドや。」

「じゃああの、白くてしょっぱい粉。」

「そりゃソルト。」

「塗装に使う液体。」

「それは塗料。」

「オペを始めます!」

「それは医療。もういいわ!」

「「どうもありがとうございました。」」


クラバーとラッパこうもりは唐突に漫才を披露する。


「こいつら1回黙らせてくれない?」


アリアは眉をピクピクと動かしながら言う。


「二人ともお口チャック!」

「はい…」

「すんまへん…」

「話を戻すけどギルドっていうのは人々の困り事や魔物討伐なんかのクエストを解決する組合。私はそれでお金を稼いでる。貴方もこの世界で生活するってんならそのモンスターと一緒に人助けなりなんなりしてお金を稼ぐのね。」

「なるほどなるほど…」

「でも、助けてもらったお礼よ。貴方をここへ住まわせてあげる。」

「えっ!?本当!?」


心優しい笑顔を見せながらアリアはツクルを家に住まわせてもいいと告げる。


「ええもちろん。浮浪者を放っておくほど私は薄情な奴じゃないわ。あ、そうだ。さっきので汚れちゃった貴方の服洗濯してあげる!貴方用の服も用意しないとね!」

「本当!?何から何までありがとう!」

「ふふっ。」


アリアが後ろに振り向いた瞬間、彼女の顔は一転してゲスい顔になる。


「(やっりぃ〜!仲間ゲット〜!正直ギルドの依頼一人でこなすのキツかったのよね〜!こいつお人好しみたいだし、こき使っちゃおう〜!)」


アリアは腹黒だった。


「(でも…私を助けてくれた奴をこき使うのは気が引けるわね…優しい人を利用するのもなんか違うし…うん!こき使うのやめよう!)」


しかし根はいい子だった。


「だったら、住まわせてもらう代わりに色んなことお手伝いするよ!」

「え?」

「ラッパこうもり!クラバー!頼んだよ!」

「おうよ!任せとき!」

「我々の腕の見せどころ!」

「へ?」


次の瞬間、ラッパこうもりとクラバーは家事を開始する。


「お掃除お掃除〜♪」


ラッパこうもりは主婦が被る三角帽子を被り、エプロンを着て掃除を始める。


「台所お借りしますね〜!」


クラバーは台所に向かい、置いてあった野菜を使って料理をする。


「ちょっ、え、えぇ…!?」


するとあっという間に部屋は綺麗になる。


「嘘…!?」

「どや?ざっとこんなもんやで!」

「ご飯出来ましたよ〜!皆さんで食べましょう〜!」

「料理って…そう言えばもうそろそろ夕方か…」


夕日が窓から差し込んでいた。


「はいどうぞ!」


食卓に並べられていたのは彩り鮮やかなサラダや温かそうなスープだった。


「いい匂い…!い、いただきます!」

「いただきまーす!」


ツクル達はサラダやスープを口に運ぶ。


「っ!?凄い美味しい…!」

「本当だ!めちゃくちゃ美味しい!」


クラバーが作った料理はどれもこれも絶品の味だった。


「喜んでもらえて嬉しい限りでございます!」


二人はご飯を食べ終える。


「ごちそうさま!」

「ごちそうさま、美味しかったわ!」

「えへへ〜。」

「それじゃ、明日行きましょうか。」 

「行く?何処に?」

「ギルド本部よ。」


次回「お悩み解決!クリモン集合!」に続く。

次回はクリモンが大量登場!お楽しみに!

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