第15話「クリモンの使命とツクルの答え」
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「はあっ!」
ルズーは手から黒色のモヤを出す。
「わっ!?何だこれ!?」
「煙幕…!逃げるつもり!?」
「っ!キジフェザント!」
ツクルは落書き帳を開き、出発前に描いていたキジのロボットモンスター、キジフェザントを繰り出す。
「キジフェザント!只今参上!」
「キジフェザント!このモヤを頼む!」
「お任せを!」
キジフェザントは翼に付いているファンでモヤを吹き飛ばす。全員の視界が良好になるが、その場にルズーはおらず、男が横たわっていただけだった。
「よし!ルズーを追うぞ!」
プラナの掛け声でアリア達はルズーを追いかける。
「ん?ツクルさん?」
フォリナはキジフェザントと共に佇むツクルを見る。
「もしもし?大丈夫?」
「う…うう…」
ツクルは男に話しかけていた。
「まだ息がある…心臓マッサージだ!」
ツクルは男の胸を押し、何とか助けようとする。
「ツクルさん…どうして?」
「え?」
「この人は貴方を騙した人の仲間ですよ?どうして助けようと…」
「う〜ん…助けたいって思ったから!」
「え?」
「助けたいから助けるんだ!それだけ!」
「…!私も手伝います!」
「フォリナさん…!?どうして…?」
「私も助けたいって思いました!それだけです!はあっ!」
フォリナは治療魔法を男にかける。
「あ…あれ…?俺…」
男はゲソっとやせ細ったままだったが、なんとか元気になっていた。
「完全に治ったわけではありませんが、これでしばらくは大丈夫なはずです。」
「な、何で…?」
「良かったね!じゃっ!」
ツクルとフォリナはアリア達を追いかける。
「あ…」
男は何故ツクル達が自分を助けてくれたのか分からずその場でボカンとしていた。
「はあ…はあ…!」
アリア達はルズーが逃げ込んだパーティー会場に入る。
「ふふ、遅かったですわね。」
ルズーが待ち構えており、不敵に笑う。
「追い詰めたわよ!とっととお縄に…!」
「追い詰めた?それは果たしてどちらでしょうねぇ!」
ルズーが指を鳴らすと後ろから人々が現れ、アリア達を捕まえる。
「なっ!?」
「ふふ…強大な魔力を持ってすれば多種多様な魔法が使える…!一度に沢山の人々に催眠をかけ操る事だって可能ですのよ!」
「くっ…!」
「くそ…!民を傷つけるわけには…!」
「卑怯な…!」
そこにツクルとフォリナがやって来る。
「アリア!皆大丈夫!?」
「ツクル!」
「フォリナ様!」
「…!さっきまでパーティー会場にいた方々…!もしかして…!」
「操られてるのか!?」
「何と卑怯な!ここは私が!」
キジフェザントは元凶であるルズーに向かう。
「ふっ…」
しかしルズーは動じることなく手から結界を張り、キジフェザントの突進を防ぐ。
「がはっ!?」
キジフェザントは結界に弾き返され、ツクルの元に吹っ飛ぶ。
「わっ!?」
キジフェザントはツクルと共に倒れ込む。
「す、すみませんツクル!」
「大丈夫!それよりあの人達を何とかしないと!」
「ふっ…貴方達!ツクルとフォリナを捕まえなさい!」
操られている人々はツクル達も捕まえようとする。
「人々を傷つけるわけには…!」
「傷つけずに助ける方法…そうだ!フォリナさん!これをちょっと。お〜い!ルズーさーん!」
「ん?」
ツクルはフォリナに紙を渡し、ルズーが自分の方を振り向くのを確認すると驚きの行動に出る。
「ベロベロバー!おしりペンペ〜ン!捕まえれるものなら捕まえてみろ〜!」
舌を出したり、尻を叩いたり、変な動きでルズーを挑発しだした。
「なっ…!?」
「ほらほら〜、俺を捕まえれたら貴方の命令何でも聞くよ!まあ捕まえられっこないだろうけど!鬼さんこちら!手の鳴る方へ!」
ツクルは頭上に手を挙げ、パンパンと叩き、キジフェザントと共に逃げる。その様子を見たルズーの頭はふつふつと沸き立っていた。
「捕まえてごら〜ん!」
遠くの方から聞こえる人を馬鹿にしたような声。ルズーのおでこにビキィッ!という音が響き、完全に怒りの限界を迎える。
「さっさと追え!!」
先程までの上品な喋り方は何処へやら、ヤクザのような口調で人々に命令し、人々はツクルを追いかける。
「はぁ…はぁ…」
「あ、あの〜…これ、ツクルさんから…」
すっかりがらんどうとなった会場でフォリナはルズーにツクルに渡された紙を渡す。
「あ?」
ルズーはその紙を受け取り読む。気になる内容は以下の通り。
ルズーさんへ。人を操らないと何も出来ないんですか?悔しかったら貴方も追ってきては?ツクルより。追記、バナナ食べたい。
この手紙を読んだ瞬間、ビキビキビキビキィッ!とルズーの頭にヒビが入り、周りも気にせずツクルを追いかける。
「あっ!?行っちゃった…」
アリアはあまりの展開の速さについていけていなかった。
「あいつは一体何を考えているんだ?」
「きっと…皆を助けてくれますよ!」
ガリオの疑問にフォリナは答える。
「キジフェザント、戻って。よし!こっちだよ〜! 」
ツクルはキジフェザントを落書き帳に戻し街に出て人々から逃げていた。
「よし!ここなら…!」
ツクルは広場で止まる。
「見つけましたわよ…!」
ツクルはルズー達に追いつかれる。
「偉そうな事を言っておいてこの程度ですか…覚悟はよろしくて?」
「…卑怯者には負けないよ。」
ツクルの表情はキリッとした凛々しい表情に変わる。
「何ですって…?」
「人を利用する事しか考えない奴には負けない!」
「はっ、どの口が言うのです?」
「…?」
「貴方だって利用する事しか考えてないじゃないですか。貴方のこれまでの評判は全てモンスターのお陰でしょ?」
「…!」
「なのに人を利用する事しか考えない奴には負けないって…お〜ほっほっほ!人の事を言える立場ですか?」
「…俺はクリモンの事、利用しているつもりはないよ。」
ツクルは表情一つ変えず言い切る。本気だ。本気でそう思っているからこれほど自信に満ちあふれた顔が出来る。
「クリモンは俺の友達なんだ!利用しているなんて酷い言い方やめてよ!」
「友達?友達をいつも危険な目に合わせているくせによくそんな戯言が言えますね?あのラッパのコウモリも蟹のモンスターも、本当はこんな事したくないって思ってるかもしれないのに?冗談はそれぐらいに…」
その時。ツクルの落書き帳が光る。
「…ラッパこうもり…クラバー…」
ツクルはラッパこうもりとクラバーの絵が光っているのを見て即座に二人を呼び出す。
「よっと!ツクルはん、気にする事はあらへんど!」
「そうです!我々は好きでツクルさんを助けているんですから!」
「うん!分かってるよ!」
「ちっ…面倒な…」
「あんさん、何か勘違いしてるみたいやな?」
「我々はツクルさんの事が大好きなんです。なんせ我々を生み出してくれた方ですからね。」
ラッパこうもりとクラバーはルズーに近づいていく。
「わいらクリモンは、ツクルはんの友達で、相棒で、家族や!助けるんは当然や!そこに何も理由はない!」
「助けたいって思ったから助けるんです!我々は自由に生きるクリモン!助けるも助けないも自由!ただ助けたいって思ったから助けるんです!力を貸すんです!」
クラバーはルズーに殴りかかる。
「くっ!?」
ルズーは避ける。
「それがわいらの生き様で使命や!あんさんが言ってる事は全部野暮っちゅうもんや!ラッパ音波ー!」
ラッパこうもりは音波を放ち、人々に浴びせる。するとどうした事だろうか。
「あれ?俺達何してたんだろ…?」
「確かパーティー会場にいて…」
人々の目が覚めたのだ。
「なっ!?何故!?」
「衝撃だよ。」
驚くルズーにツクルは答える。
「は…?」
「人を操るには色々な方法がある。洗脳、マインドコントロール、催眠…でも、こんなに一度に大勢の人を操るには洗脳やマインドコントロールじゃ時間がかかる。手っ取り早く操るには催眠が一番。ここは魔法が使える世界だ。一度に大量の人を催眠状態にする魔法だってあっても不思議じゃない。だから衝撃を与えたんだ。ラッパこうもりの音波でね。」
「あんさんからツクルはんが逃げてる途中、ツクルはん、落書き帳にそう話してたんや。」
数十分前…
「(ラッパこうもり。いざとなったら君の音波で操られている人を助けてほしいんだ。回復したばかりで辛いと思うけどお願い出来る?)」
ツクルはラッパこうもりの絵に向かって催眠を解くよう頼んでいた。そして、任せとけと言わんばかりに絵が光る。
そして今に至るというわけだ。
「ツクルはんはわいらの能力を誰よりも理解しとる。当たり前や。ツクルはんが作ったんやからな。」
「ラッパこうもりの音波の衝撃はめちゃくちゃ強いんだ。ちょっとした催眠程度だったらそれぐらいの衝撃でケロッと治す事が出来る!まあぶっつけ本番だったし、治るかどうかは賭けだったけど。」
「理解出来ない…治せない可能性だってあったはずなのに…分が悪い賭けのはずなのにどうして!?」
「怖ければ怖いほど怖い方に飛び込む。俺が尊敬している芸術家さんの言葉さ。それに…信じてるから。」
「…は?」
「ラッパこうもりだったら、皆だったらきっと何とかしてくれるって信じてたから!だって、俺が描いた自慢の友達で相棒で家族だもん!」
ラッパこうもりとクラバーはその言葉に頷き、落書き帳も光る。
「何ですのそれは…!認めない…認めない!」
ルズーは手のひらを広げ、魔法陣を出し、そこから周りなど気にせず火球を放つ。
「うおっ!?おっと!?わわっ!?」
ツクルは何とか避ける。
「な、何だ!?」
「大臣!?」
「大臣が何でお客人を…?」
「皆さん!ここから逃げて!」
「城に戻るんや!ツクルはん!無事でおってな!信じとるで!」
ラッパこうもりとクラバーは慌てる人々に避難を促す。
「ラッパこうもり…!クラバー…!ありがとう!よ〜し!いつまでも避けてるわけにゃいかないや!どの道貴方を倒さないとパーティー行けなさそうだし!」
「この期に及んでまだパーティーなどと…!」
ルズーは魔法陣を消し、新たな魔法陣を形成。そしてそこから水流を放つ。
「っ!モモタロイザー!」
「あい分かった!」
ツクルは落書き帳からモモタロイザーを呼び出す。
「どんぶら切り!」
モモタロイザーは水流を真っすぐに切る。水流は裂けて、ツクルには当たらずに済む。
「ちいっ…!まだまだ!」
ルズーは再度魔法陣を形成し、電流を放ってモモタロイザーに直撃させる。
「ぐぁぁぁ!?何の…これしき…!」
モモタロイザーは電流に耐え続けるが、限界はある。ツクルは即座にそれを察し、落書き帳をポンと叩く。
「イヌドック!」
「キジフェザント!」
呼び出したのはイヌドックとキジフェザント、そして…
「サルモンキー!」
猿型ロボットモンスターサルモンキーだ。
「ウホー!」
サルモンキーはモモタロイザーの前に立ち、代わりに電流を受ける。
「っ…!?お主…!」
「ウホ!」
サルモンキーは腕を振り下ろし、電流を弾く。
「礼を言うぞサルモンキー!」
「お安い御用ウホ!俺達はモモタロイザーに仕える三獣機ウホ!」
「そうか…そうだったな!」
モモタロイザー、イヌドック、サルモンキー、キジフェザントは並ぶ。
「この世の悪を打ち倒し、かけがえのない人を守ると刀に誓う!モモタロイザー!」
「皆より早生まれ!だけどモモタロイザーに仕える一番の部下!後付けとか言うやつは噛む!イヌドック!」
「引っ掻き、いじくり、ぶん殴り!力自慢サルモンキー!」
「華麗に空を舞い、相手を綺麗にお掃除です!空の覇者キジフェザント!」
「生まれた経緯や姿は違えども!志は皆一緒!我ら!モモタロイザー四機衆!」
モモタロイザー達は決めポーズをする。まるで某特撮の様に。
「解説しよう!イヌドック、サルモンキー、キジフェザントはモモタロイザーの頼りになるお供達なのだ!イヌドックだけ後付けで設定したけど!」
ツクルは誰かさんに向けて解説する。
「ぐっ…!はぁーっ!」
ルズーは魔法陣を形成し、そこから水流弾、火球、電気玉を打ち込む。
「はあっ!そりゃ!だりゃっ!」
「キジウィンド!」
モモタロイザーは水流弾を切り、キジフェザントは火球を風で打ち消す。
「ふん!オイラは電気に強いんだ!」
サルモンキーは電気玉を受け止め、地面に叩きつけて消滅させる。
「ワオーン!」
そして、最後にイヌドックがルズーに飛びつく。
「キャッ!?ちょ、ちょっと!離れなさい!」
「離れんワン!悪い事して!反省するんだワン!」
「うるさい!」
ルズーは自分に飛びついて離れないイヌドックを振り払う。
「ワウッ!?」
イヌドックは地面に落ちる。
「はあ…はあ…私は…!この国を…!絶対に…!手に入れる…!そして世界を…!支配するのよ!!」
ルズーの身体から赤黒いオーラが溢れ出す。
「っ!?」
「ツクルー!そっちはどう…って…!?」
アリア達が駆けつけるも、そこに広がる光景に絶句する。
「な、何あれ…!?」
「う…ウォォォォ!」
ルズーの身体がどんどん人外じみた肌色になっていき、角が生え、翼が生え、さらに大きくなっていき、服が破ける。
「ウォォォォ!!」
ルズーはもはや人間の姿ではなくなっていた。一言で言えば悪魔だ。口は牙が生え耳元まで裂けており、鼻はなくなって目は白目で吊り上がっている。
「え…」
流石のツクルもこれには驚き、言葉が出せなくなってしまった。
次回「方法の悪魔」に続く。
次回はルズーの本心が?