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第14話「パーティーが始まると思ったら」

お待たせしました!今日はツクルがとんでもない事を!?

「え〜、それでは騒動も終わり、パーティーが始まるまでの間、王様達との交流も兼ねて、わいらで漫才を披露します!」


サンドワーム騒動の少し後、それほど被害は無かった為か、すっかり街は平和になっていた。そして、ラッパこうもり達はプラナ達と交流する為、漫才をしようとしていた。


「クラバー、クラバー。あんさん、得意な事とかありまんの?」

「よくぞ聞いてくれました!私、実はラップが得意なんです!」

「ラップ?ほえ〜、それはカッコええな〜!見せてみてや!」

「お任せください!」


クラバーは皿を取り出す。


「ここに…これを…ピーッと…」


クラバーはその皿にラップをかける。


「はいラップ!」

「って…そっちのラップか〜い!」


ラッパこうもりはずっこける。


「…」

「…」


この世界にも一応ラップという音楽ジャンルはあるらしい。それを聞いたラッパこうもりはこの漫才を思いついたのだが場の空気を見れば分かる通り、ダダ滑りだ。


「ではお次はおいどんと!」

「僕、キネウサギだよ!」


次の漫才はイッスンハンマーとキネウサギだ。


「あ〜あ、何か暇だな〜。」

「キネウサギどん、暇ならおいどんと遊ぶばい!」

「いいの!?ありがとう!で、何して遊ぶ?」

「真夏のセミごっこ!」


キネウサギとイッスンハンマーは柱によじ登る。


「ミ〜ン、ミ〜ン…」

「ぴょ〜ん、ぴょ〜ん…」

「ドアホ!ぴょんと鳴いてどげんすると!セミはミ〜ンと鳴くもんじゃ!」

「あ、そうか!ミ〜ン、ミ〜ン、ミ〜ン…ミ〜ン…民事裁判!」

「ドンドン!判決!罰金10万円!」

「これがホントのミ〜ン事裁判!」


お察しの通り場の空気は凍りつく。


「これ今夜のパーティーでもやりたいんやけどどう?」


ラッパこうもりは恐ろしい提案をする。


「却下!!」


アリアからの返答はもちろんノーだ。


「え〜!?」


ラッパこうもり達はショックを受ける。


「当たり前でしょうが!ほら、ツクルも何か言ってやって!」

「さっきから見ていれば…君達全然ダメだね。」


ツクルは静かにアリアの肩に手を置く。


「見せてあげるよ。俺とアリアの本当の漫才ってやつをさ。」

「そうそう!私とツクルで…って待てコラ!何で私とアンタで漫才しなきゃいけないのよ!?」


この世界にも漫才という概念はある。面白い漫才師も沢山いる。だが、ラッパこうもり達の漫才はいずれも超がつくほどつまらない。そんな様子を見たツクルは見ていられないと言い、アリアと真の漫才をしようとする。もちろん却下される。


「え?嫌?」

「嫌に決まってんでしょうが!?てかそもそもここ王室!しかも別国!かつ王様達がさっきから見てる!よくもまあこんな茶番繰り広げたわね!?場合によっちゃ不敬罪よ不敬罪!」

「ぷっ…ぷぷっ…」

「だ、ダメ…!もう我慢できない…!」


どうした事だろう。プラナ達は途端に笑い出した。


「貴方達、本当に仲が良いのね!」

「え?」


ダイアの発言にツクル達は首をかしげる。


「だってさっきから見てたら息ぴったりじゃないの貴方達!」

「我々は若者のそういう姿を見るのが大好きなもので…」

「やっぱり、ツクルさん達に来ていただいて良かったです!」

「ふん。あの様な漫才私にも出来る。」


プラナ達はツクル達の漫才じみたやり取りを見て微笑ましい気分になる。


「グオ〜…」


そういえば読者の皆はサンドワームが何処に行ったのか気になっている頃だろう。安心して欲しい。サンドワームは暴れたくて暴れた訳じゃない。だから討伐はされなかった。今はガリオの肩に乗っている。


「何だサンドワーム?全く…本来ならフォリナ様を傷つけようとした時点で万死に値する所をフォリナ様のご好意で許されているんだからな。だが…こうしてみると…」


ガリオはサンドワームの小さく、愛らしい姿に少しだけ心が揺らぐ。


「はっ!?駄目だ駄目だ!私にはフォリナ様が…!」

「あれ?そういえばルズーさんは?」


ツクルはルズーが居ない事に気付く。


「今はパーティーの準備中ですよ。」


フォリナがそれに答える。


「あ、そうなのか。ルズーさんともっと仲良くなりたいんだけどな〜。」


その頃ルズーは…


「ふふ…やはり彼の力は利用出来ますわ…」


自身の部屋でツクル達とサンドワームの戦いを思い出しながらほくそ笑んでいた。


「ふふ…今夜は大事な大事なパーティー…是非、お楽しみくださいませ…」


さて、夜になった。城のパーティー会場では多数の人々がいた。


「ゴホン。え〜、皆様!本日は我が国建国記念パーティーにお越しいただき誠にありがとうございます!それでは早速パーティーの開始です!皆様存分に楽しんでください!」


プラナの合図に人々は大いに盛り上がる。


「楽しいねアリア!」

「そうね!」


ツクル達も料理を食べ楽しむ。


「あの〜、アリアさん。」


するとフォリナがアリアに近づく。


「ん?」

「お姉様がアリアさんのお話をお聞きしたいと。」

「あ、分かりました。」


アリアは席を外す。


「行ってらっしゃ〜い。」

「ツクルさん、少しよろしいですか?」

「うん?どうしました?」

「私、ツクルさんに感謝してるんです。」

「感謝?」

「サンドワーム騒動の事…」

「いえいえ!頑張ったのはラッパこうもり達です!お礼ならラッパこうもり達に…」

「でも、ラッパこうもりさん達はツクルさんが作ったのでしょう?」

「確かにそうですけど…ブルリっ…あ、駄目だ。トイレ行きたくなっちゃった。ちょっと失礼します!」


ツクルはトイレに向かう。


「ツクルさん!行っちゃいました…」

「グオ〜…」


するとサンドワームがツクルを追いかけていく。


「ふい〜…スッキリした〜。


トイレに着いたツクルは用を足し、トイレから出る。


「グオ〜…」

「ん?サンドワーム?」


サンドワームがやって来る。


「どうしたの?」

「グオ〜…」


サンドワームは申し訳なさそうにする。


「何だ?まだ気にしてるの?大丈夫大丈夫!もうフォリナ達も許してくれてるし、もういいじゃん!あんまり気にしてちゃダメだよ?」

「グオ〜…」

「何言ってるか分かんないな…バッタジンを呼んで…」


しかしその時。ツクルの首に何者かの手刀が入り、ツクルはうっと言うと同時に倒れる。


「グオッ!?」

「へへ…」


ツクルに手刀を入れた人物はフードの男だ。


「こっちに来てもらうぜ…」


フードの男はツクルを担ぐ。


「グ…グオ〜!」


サンドワームはツクルを助けようと男に飛びつき、噛みつこうとする。


「邪魔だ!」


しかし、難なく振り払われてしまう。


「グオッ!?」


サンドワームは床に落ち、気絶する。


「へへ!あばよ!」


男はそのままツクルを連れて行く。


「う…う〜ん…」


ツクルが目を覚ますと牢屋の中にいた。


「えっ!?何ここ!?ろ、牢屋…?落書き帳は…」


ツクルは落書き帳を取り出す。


「良かったあった…ラッパこうもり!出て来て!」


ツクルは落書き帳をポンと叩き、ラッパこうもりを出す。


「どないした?って…ここ何処!?」

「牢屋の中だよ!頼むよラッパこうもり!出れるかどうか試してみて!」

「牢屋!?何でそないなとこに…まあ取り敢えず任せとき!」


ラッパこうもりは鉄格子の隙間から出てツクルを脱出させようとする。


「あばばば!?」


しかし、鉄格子を抜けようとした瞬間、電流が流れ、ラッパこうもりは倒れ、落書き帳に戻る。


「ラッパこうもり!?どうなってるんだ?」


ツクルが鉄格子を触ると電流が流れる。


「あんばら!?何だこれ…?バリアが何かかな…?」

「お〜ほっほっほ!」


笑い声が響き、牢屋の前に驚きの人物が現れる。


「ルズーさん!?」


その人物とはルズーだった。更に後ろにはフードの男もいた。


「後ろの人誰?」

「ふふ…ここまで上手くいくとは思いませんでしたわ…貴方にはこれから私の為に働いてもらいますわ。」

「後ろの人誰?」

「まあ現実を受け入れられないのは分かりますわ。先程までとても優しかった人が豹変してる様なものですからね。」

「後ろの人誰?」

「でも、これが真実。私は貴方を騙し、利用する為に敢えて物腰柔らかな態度を取っていましたからね。」

「後ろの人誰?」

「さっきからしつこいですわね!?私に騙された事よりこの男が気になるんですの!?」

「すみません。」

「全く…まあいいですわ。さて…本題に戻りましょうか。ツクルさん、貴方にはあるモンスターを描いてもらいたいのです。」

「はあ…」

「世界を支配出来るほどの力を持ったモンスターを…ね?」

「世界を…支配?」

「そう。私の野望はこの国のみならず世界を支配する事。チャンスを今か今かと待っていた!そんな時、貴方の噂を聞き、これは利用出来ると考えたのです!さあ!早く描きなさい!」

「え〜…そんなの嫌だよ〜…」

「ふっ、断れる権利があると思って?ここは地下牢。長らく使われてませんから鉄格子自体は簡単にこじ開けれます。ですが、結界魔法が貼ってありますので実質普通の牢屋より頑丈ですわよ。」

「ぐぬぬ…!」

「ま、貴方に出来ることはそもそも何もありませんけどね。モンスターに頼りっぱなしの貴方には。」


しかし次の瞬間、ビリビリという音がルズーの耳に響く。


「うん?」


ルズーがツクルを見るとツクルはバリアの電流に耐えながら鉄格子をこじ開けようとしていたのだ。


「なっ!?」

「ぐぐぐ…!」

「な、何してますの貴方!?死にたいんですの!?」

「俺は…確かにクリモンに頼らないと何も出来ない…魔法も使ったことないし…剣も盾も使ったこと無い…!だけど、俺にだって出来る事はある!皆が戦えないなら俺が戦う!皆にバリアが破れないなら俺が破る!」


ツクルにはあるモットーがある。その場その場を全力で楽しみ、出来る事を最大限やる事だ。死ぬかもしれない。それでも望みがあるのならそれにしがみつく。今までもこれからもそうだ。避難誘導が出来るなら避難誘導をする。誰かを助けれるなら助ける。結界を破けるなら破る。いや、破ってみせる。お人好しなのだ。馬鹿なのだ。馬鹿だからこそ自分の限界を知らないのだ。


「う…うぐぐ…!うお〜!」


結界がビキビキと悲鳴を上げる。


「な…!?何が…!?何が起こって…!?」


信じられない。生身で結界を破く人間なんて聞いたことがない。


「ぐぐ…!どりゃー!」


結界が完全に破れ、ツクルは鉄格子をこじ開け、牢屋から出る。


「ふう…ビリっときたぜ…」

「わ、わけが分かりません…!一体何故!?一体何故そこまで!?」

「パーティー戻りたい…」

「は?」

「パーティー行ってくるね。取り敢えずその用件また後で。」


ルズーは呆然とする。パーティーに行きたい。たったそれだけであんな無茶をしていたのだ。余計にわけが分からない。


「ぐ…!ぐぎぎ…!」


ルズーは苛立ちで歯をギリギリと動かす。


「逃がすわけないでしょう!」


ルズーは光の輪っかを出してツクルを拘束する。


「わっ!?」

「折角貴方を利用出来る所まで来たのに…!このまま諦めるわけないでしょう!?殺されたくなかったらとっとと…!」


しかしその時。


「やっぱりそういう事だったのね。」

「っ!?」


アリア達がやって来る。


「アリア!皆!」

「ルズーさん…」

「やはり貴様はそういう奴だったか…!」

「先程までの会話聞かせてもらった。ルズー、お前は大臣の地位から降りてもらう!」


フォリナは悲しみの顔を浮かべ、プラナやガリオ達は怒りの目で見ていた。


「な、何故ここに…!」

「こいつが知らせてくれたのよ。」


アリアの背中から肩にサンドワームが移動して姿を現す。


「サンドワーム…!」

「グオ〜!」

「ちいっ…!余計な真似を…!」

「観念しなさい!この悪党!」

「ここまで来たのに…!諦めてたまるもんですか!」


ルズーは剣を取り出し、フードの男を刺す。


「がはっ!?る、ルズー様…!?何故…?」

「私の糧になりなさい…!」


ルズーは男の頭に手を置き男の力を吸い取り始める。


「なっ!?あれは吸収魔法!?」

「魔力を吸い取る恐ろしい魔法だ!」


アリアとガリオは驚く。


「ふう…こうなったら貴方達全員の魔力を吸って自分で支配するしかありませんわね…」


ルズーは男を投げ捨て、黒いオーラを放つ。


「…!ルズーさん…!貴方…!」


フォリナによって輪っかを外され自由になったツクルはルズーを睨む。


「許せない!」

「言う事を聞かない貴方が悪いんですのよ!」

「もう怒ったぞ!こちとらさっさとパーティー戻りたいんだ!後、仲間を仲間と思ってなさそうな行動!久々にキレちまったよ!」


ツクル達は戦闘態勢になる。


次回「クリモンの使命とツクルの答え」に続く。


ツクルは異世界に来る前からこんな感じです。

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