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第11話「何故側近は冷たかったのか」

今回は王様の側近の秘密が明らかに!…ジャンルは冒険のつもりだけど全然冒険してねぇ…

「失礼します。」


ツクルから話を聞いたキシリアは王室に入る。


「おおキシリア!来てくれたか!」

「王様の命令とあれば何処へでも。」


キシリアは喜びの表情をしているショイサ王とは対照的に淡々とした表情で答える。


「私はお邪魔かしらね〜…」


アリアはそっと王室から出る。


「な、なあキシリア…聞きたい事があるんじゃが…」

「はい、何でしょうか?」

「最近、わしへの受け答えというか…全体的に何か冷たくないか?」

「と、おっしゃいますと?」

「それじゃよそれ!前までお主そんなキャラじゃなかったじゃろ!?前まではもうちょいテンション高かったじゃん!」


ショイサ王の脳内にキシリアとの日々が巡る。


「(キシリア〜。キシリアはおるか〜。)」

「(はいはーい!キシリアここに参上しましたー!)」


その記憶に映るキシリアはとてもテンションが高く今時の言葉で言えばチャラい男だった。


「(王覚悟ー!)」

「(ひぃ〜!?)」

「(おっと!)」


ショイサ王が暗殺者に殺されそうになった時の記憶ではキシリアはその暗殺者の腕を止め、なぎ倒していた。


「(僕の愛する王を殺そうとするなんて悪ノリが過ぎるぜ?)」

「(お前…その口調で一人称僕って違和感凄いな…)」


暗殺者はキシリアの口調にツッコミながら気絶する。


「って感じじゃったじゃん!?最近、何だろう…こう…チャラくなくなったというか…真面目というか…まあ良いことではあるんだけどお前っぽくないっていうか…」

「はい、そうですね。」

「だからそうやって淡々と答えるのやめて!?」

「え?ですが仕事に支障はありませんし…」

「う〜ん…そうなんだけど…いや、ここは正直に言おう…お前、何か隠し事してないか?」

「っ!?やっぱか〜…」


キシリアはギクリと言いたげな仕草を取り、ボソッと呟く。


「あっ!?今何か言ったな!?頼む!隠し事しているんだったら洗いざらい話してくれ!わしに対する不満か!?それとも政治についてか!?わしとお前の仲じゃろう?」

「あ…その〜…わ、分かりました…言います…」

「おっ、何か進展があったみたいね…」


キシリアの口が動き、開こうとし、アリアも扉の前で耳を澄ましたその時。


「言っちゃダメー!」


ツクルが扉をタックルでこじ開け、キシリアの元に猛スピードで駆け寄って口を押さえる。


「おぼっ!?」

「つ、ツクル殿!?」

「ごめんなさい王様!こうするしか無かったんです!」


ツクルはそのままキシリアを担いで逃げる。


「わ〜!?」

「ツクル!?」


ツクルはアリアの姿も目に止めず走る。


「ど、どうしたんじゃ!?」

「わ、分からないです!」


慌てて王室から出て来たショイサ王とアリアは困惑し合う。


「あ、アリアはん…ツクルはんは…?」


すると、後ろの方からラッパこうもり達が疲れた様子でやって来る。


「ラッパこうもり!クラバーにコアーディネイターも…」

「ど、どうなっとるんじゃ!?ツクル殿がキシリアを連れ去って行ったんじゃが…?」

「そ、それが…ツクルさん、キシリアさんがどうして王様に対してそっけない態度を取っていたのかを知ったんです!」

「ミスターキシリアは確かに王様に隠し事をしていマーシタ…しかし、決して邪なものではありマセーン!」

「でもツクルはん、このままだったらキシリアはんが秘密を喋ることになるかもしれないって思ってあの凶行を…」

「い、一体どんな隠し事をキシリアはしているんじゃ?」

「あ…そ、それは…絶対言うなって言われてもうてて…」

「と、とにかくツクルを追いかけるわよ!」


アリアの提案にその場にいた全員は頷き、ツクルが走っていった方向に向かう。


「うおー!」

「ちょっ!?ツクル君!?何してんの!?」


その頃、ツクルはキシリアを肩に担いだまま、城の廊下を走っていた。


「ん?き、キシリアさんと…お客人!?」

「お、おい!止まれ!」


その場に居合わせた騎士達はツクルを止めようとする。


「…!すみません…こうするしかないんです!」


ツクルはキシリアを担いだまま、器用に騎士達を避ける。


「うおっ!?わわっ!?」

「キシリアさん…ごめんなさい!貴方の計画が王様にバレないようにするにはこうするしか無かったんです…」

「えっ…?」

「これ…」


ツクルは左腕でキシリアを担いでいるため、右腕は自由だ。ツクルはポケットからキシリアが落とした紙切れを取り出す。


「あ、そ…それ…」

「これ…バレるわけにはいかないでしょ?」

「…確かにバレるわけにはいかないけど…だからってこの方法は大胆過ぎるんじゃないかな!?」


キシリアは自分が担がれているこの状況にツッコむ。


「わ、分かった!君の気持ちはありがたいよ!でも、もういいよ!こうなったら隠し通せないって!」

「いいえ!これは…この計画は絶対バレちゃいけない!」


ツクルは城を出る。


「うおー!街まで突っ切るぜー!」

「だからもういいって〜!?」


ツクルは走る。ひたすら走る。


「ん?おい、あれツクルじゃね?」

「ホントっすね。お〜いツクル〜。」

「ごめんちょっとどいて!」


街を歩いていたオーボー達を跳ね除け…


「わ〜!?」

「何で〜!?」


「へ〜、ショイサ王がツクルに招待状を…」

「あの子もすっかり街の人気者ね。」

「うお〜!」

「ん?」


シカリ達も跳ね飛ばし、ただ走る。


「がはっ!?」

「何なの!?」


走る。走る。ただ走る。しかし、決してツクルは迷惑をかけようとしているわけではない。全てはキシリアの隠し事を隠し通す為。ここ数分でどんな心境の変化があったかは分からないが人の為ならなりふり構わず行動に移す。それがツクルの良い所で悪い所だ。


「ね、ねぇ!?何か大惨事になってるんだけど!?」


無論、今回の場合は悪い方向に働いている。


「このまま計画の実行日まで逃げましょう!」

「いや、あの…大事な事言ってなかったんだけどさ!」

「はい?」

「準備…まだ出来てないんだ…」


担がれている事に慣れたのか普通に喋るキシリア。そして、その口から発せられた事実に呼応するようにツクルの足が止まる。


「え…?出来てない…?」

「うん。だから逃げたら計画そのものがパーになるんだよ…」

「…」


ツクルは静かにキシリアを降ろす。


「ごめん…早とちりしちゃった…」

「う、うん。僕は大丈夫なんだけど…」


キシリアは後ろを向く。


「おい…ツクル…」

「さっき何で俺達の事突き飛ばした…?」

「君は一日に一度何か問題を起こすのが趣味なのかい…?」

「お気に入りの靴が汚れちゃったんだけど…?」


オーボー、コシギ、シカリ、レーセがツクル達に追いついており、その鋭い瞳をツクルに向けていた。


「あ…いや…その〜…すみません!」


ツクルは土下座をするも、オーボー達の怒りは収まらない。


「「「「許すかー!」」」」


オーボー達はツクルをボコボコにする。


「ごめんなさーい!?」


数分後…


「ピク…ピクピク…」


ツクルは身体をピクピクと動かしていたが、頭には多数のたんこぶが生えていた。


「あらら…」


キシリアは同情すると同時に呆れの感情も混ざった顔でツクルの肩に手を置く。


「ま、ドンマイ。」

「はい…」

「ツクルー!」


するとそこにアリア達がやって来る。


「あ…アリア…みんな…」

「ショイサ様も…!」

「ツクルはん、もうええやろ?」

「まあ…そうだね…」


ツクルはキシリアの方を見る。


「…。ショイサ様…」


キシリアはショイサに近寄る。


「まずは申し訳ございません。私なりの事情があったとは言えそっけない態度を取ってしまいました…」

「あ…いや、それはいいんじゃ。問題はその事情じゃ。一体何があったんじゃ?」

「ツクル君、あれを返してくれないか?」

「はい。」


ツクルは紙切れをキシリアに返す。


「これです。」

「え…?」


紙切れには「ショイサ王サプライズパーティー計画」と書かれていた。


「え…?わしのサプライズパーティー?」

「はい。最近、ショイサ様、激務続きでお疲れだったでしょう?今は落ち着いてますがまたいつ激務に襲われるか分からない…だから労いの意味も込めてサプライズパーティーを計画したんです。」

「そ…そうだったのか…」

「バレるわけにもいかないのでわざとそっけない態度を取って距離を開けてたんです…まさかそこまで心配されるとは思ってなくて…」

「そうか…わしもすまなかったな…あまりの寂しさでお前を問い詰める様な真似をして…」

「いえ、いいんです。いつもお疲れ様です。」

「わしからも、普段は照れくさくて言えんが今ならはっきり言える。ありがとう。」


ショイサ王とキシリアは握手をする。


「ふぅ〜…一件落着〜。やっぱり本音で話し合う事はいい事だよね〜…」

「騒動の原因が何言ってる!」


アリアはツクルの頭を引っ叩く。


「イデー!?」

「ま、本音言う時もタイミングが重要っちゅうこっちゃ!」

「勉強になりました…」


ツクルは倒れながら呟く。


数日後…


「では改めまして…ショイサ様!いつもお疲れ様です!今日は精一杯楽しんでくださいね!」


王宮では王宮に勤めている騎士達やツクル達が集まり、パーティーの始まりを迎えていた。


「お〜!ありがとうキシリア!みんな!」


ショイサ王の顔は満開の笑みとなる。


「ツクル君やアリアさん、クリモンの皆さんもパーティーの設備準備を手伝ってくれたんです!」

「ま、ツクルが迷惑かけちゃったお詫びも兼ねてよ!…あと、お礼くれるって言うし…」

「色々と迷惑かけてごめんなさい!」

「ショイサ王はん、楽しんでってや!」

「料理も手伝わせてもらいました!」

「パーティー衣装や装飾ならミーにお任せア〜レ!」

「そうかそうか…わしは良い側近や友を持ったな。」

「友?」

「そう。お主達の事じゃよ。」


ショイサ王はツクル達に近付き、手を握る。


「わしはこの国の王じゃが、わしはこの国の民の事は全て友だと思っておる。ツクル殿、いや、ツクル。これからも遊びに来てくれ。」

「は、はい!ありがとうございます!」

「王様の寛大さに感謝ね。」

「それと…キシリア。」

「はい!」

「今までわしと共に過ごしてくれてありがとう!そして…これからもよろしく!」

「…!もっちろん!僕とショイサ様の仲はフォーエバーですからね!」

「本当にあのキシリアはんとは思えへんぐらいチャラなっとる…」

「あれが彼の素らしいですよ。」

「まあとにかく、皆さんでパーティーを楽しみマショー!」


その日一日、王宮では笑い声や楽しげな声が響き続いたと言う。


さてその頃…


「楽しみですね、ガリオ。」

「そうですね。」


馬車がショイサ王国の近くの平野を駆けており、中にはお姫様の様におしゃれなドレスを着ている銀髪のアリアと同い年ぐらいの女性と黒髪でキリッとした顔立ちをしている20代程の男性がいた。


「絵に描いたモンスターを実体化させる事が出来る能力を持つと噂の冒険者…どんな方なのでしょう…」


女性は期待に満ちた顔で到着を今か今かと待っていた。


「噂通りでしたら頭が少し悪くてお人好しな少年らしいですね。フォリナ様が会うのを楽しみにされているのも分かります。ですが、もし仮にその少年が無礼を働いたら…」


男性は剣士なのか、剣を持っていた。そしてその剣を持ち、掲げる。


「私が…切る!」

「もうガリオ!乱暴な真似は辞めてって常日頃から言ってるでしょう!」

「失礼。冗談でございます。」

「貴方が言うと冗談に聞こえないんですよ。」


この二人は一体誰なのか。話を聞く限り、ツクルの噂を聞いてきたのだろうか。ともかく波乱が巻き起こるのは間違いないだろう。


次回「ツクルと王女!恋が始まるわけではない!」に続く。



今回で序章は終わり!次回からは本格的に冒険スタートの狼煙が!?

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