表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第1話「クリエイトモンスター!」

お待たせしました!第1話です!

「ふんふふんふ〜ん♪」


ある日の都内某所、一人の高校生が手に落書き帳を持ちながら散歩していた。彼の名前は「総三ツクル」。彼の趣味は絵だ。特にモンスターやロボットの絵を描くのが好き。彼の落書き帳にはたくさんのモンスターやロボットが描かれている。


「お散歩お散歩ルンルンル〜ン♪」


とても高校生とは思えない程ツクルは無邪気だった。彼は絵を描く時は決まって散歩に出る。散歩をすれば色々とアイディアが思い浮かぶからだ。


「今日はどんな絵を描こうかな〜!絶対にえぇ絵を描くぞ!何つって!」


母親が関西出身のためか時折関西弁が出るツクル。お笑いのセンスも母親譲りだ。しかし、そんな感じで歩いていた時、事件は突然起こった。


「危ない!」

「ん?」


男性の声が響き、ツクルがその方面を見ると飲酒運転だろうか。ヨロヨロと動くトラックが横断歩道を渡っていた男の子を轢きそうになっていた。



「わあっ!?」


男の子は思わず目をつぶってしまう。


「っ!」


その様子を見たツクルは猛スピードで道路に飛び出し、男の子を押して横断歩道の向こう側に渡らせる。


しかし、ツクルは間に合わない。次の瞬間、ツクルはトラックに轢かれてしまった。


「お兄ちゃん…?お兄ちゃん!」


男の子は慌てて駆け寄り、ツクルを揺する。


「お兄ちゃん!起きて!起きてよ!」


周りの人々もその光景を見て救急車を呼んだり、警察を呼んだり、ツクルを歩道に移動させ、男の子と共に声をかけたりする。


「君!大丈夫か!」

「お兄ちゃん!」

「早く救急車を!」


だが、ツクルはどれだけ話しかけられても答えない。いや、答えれない。打ちどころが悪かったのか彼はゴフッと言う音と共に血を吐いたりする。



ああ…痛い…身体中が痛いや…トラックに轢かれるってこんな痛いんだ…


ツクルは朦朧としている意識の中、そんな事を思う。


「お兄ちゃん!起きて!起きてよ!」


ツクルの耳に男の子の声が聞こえる。だが、答えられない。


「い…だ…よ…き…がぶ…かった…」


いいんだよ。君が無事で良かった。ツクルは何とかそう言おうとするも口から出るのは血反吐だけ。


お母さん…お父さん…先立つ不幸を許してくれ…俺はもうすぐ死ぬらしい…


父親がよく見ているサスペンスドラマの影響でツクルは語彙力自体は大人びていた。だが、彼はもう父親に会えないどころか、学校の友達にも会えない。いや、もう新しい出会いすら出来ないのだ。


「さ…なら…」


ツクルはこの世に別れを告げる。手に落書き帳を持ちながら。よく晴れた晴天の日の昼過ぎ。高校生総三ツクルは子供を庇い、落書き帳を持ちながら息絶えた。




「…はっ!?」


どれほど時間が経っただろうか。ツクルが目を覚ますと綺麗な花に囲まれていた。


「ん?何だここ?俺確かトラックに轢かれて…」


ツクルは考え込む。自分は今無傷。おまけに周りには花畑。よくよく考えれば分かることだ。


「天国か!」


ツクルは腕を組んで納得する。天国以外説明がつかない。そうだ。ここは天国なのだ。自分は死んで天国に行ったんだ。ツクルはそう思い込む。


「ん?」


その時、ツクルは手に何かを持っていることに気付く。


「あれ?これって…」


それは落書き帳だった。


「落書き帳?もしかして!」


ツクルはパラパラとページをめくる。そこに描いてあったのは自分が今まで描いてきたモンスターやロボットだった。


「そうか…神様が天国でも寂しくないようにこれを持たせてくれたんだ!天国でも君達と一緒だなんて嬉しいな〜!」


ラッパ状の口を持つコウモリ、蟹の怪人、月の模様がある狼、犬のロボット。多種多様なモンスターやロボットがツクルを励ますように並んでいた。


「でも…欲を言うならこの落書き帳から出て来て欲しいな〜!なんて…欲張りか…」


ツクルはさっきまで地面についていた腰を上げて立ち上がる。


「死んだっていうのになんか清々しいや!お母さーん!お父さーん!俺は天国でも元気にやるよー!だから安心してー!」


ツクルは青空に向かって大声で現世にいるだろう両親に語りかける。


「ふう…でもこれからどうしよう?天国って観光地とかあるのかな?」


あるわけ無いだろうが。と言いたくなるほど能天気な独り言をツクルは言う。



その時だった。


「待てー!」


野太い男の声がツクルの耳にガツンと響く。


「あっ!?何?」


ツクルは急いでその声が聞こえる方向へ行く。


「おい嬢ちゃん。俺達はこう見えて手荒な真似はあまりしたくねぇ主義なんだ。大人しくアレを渡してもらおうか?」

「嫌に決まってるでしょ!これは私がお母さんから譲り受けた大切な物なんだから!」


ツクルがその場に着くと何やらただならぬ雰囲気だったので慌てて草むらに隠れる。そしてよく目を凝らすとそこにいたのは柄の悪そうな大柄の男と、その部下だろうか。いかにも下っ端っぽい男が二人。そしてその男達に絡まれているのは自分と同い年ぐらいの金髪ロングヘアの女の子だった。


「な、何だありゃ?コスプレイヤーさんかな?」


女の子は杖を持っており、いかにも魔法使いの様な帽子も被っていた。コスプレイヤーに見えてもしょうがない。


「天国にもコスプレイヤーっているんだ…いや待てよ?ここって天国だよね?何でナンパが起こってるんだ?」


ツクルは男達が女の子をナンパしているように見えた。


「はあ〜…平行線だなこりゃ。おいお前ら!」


大柄の男が合図すると下っ端の男達は棍棒を取り出す。


「えっ!?」


ツクルはそれを見て驚く。天国なのに暴力を振るおうとする男達を見ているからだ。


「っ!?」


女の子は身構える。


「やれ!」


大柄の男の合図で下っ端達は女の子に襲いかかる。


「とおっ!」


しかし、下っ端の棍棒が女の子に当たる直前、ツクルは地面に落書き帳を置いてその場に割って入り、ツクルは女の子の代わりに叩かれる。


「へぼっ!?」

「えっ…?」

「あ?」


ツクルを除く全員は何が起こったか分からない。


「う〜ん…」


ツクルの頭の上に可愛らしいヒヨコが現れ、ピヨピヨと鳴きながら飛び回る。



「な、何だ?」


大柄の男や下っ端達は突然現れたツクルに困惑の表情を浮かべる。


「あ、貴方大丈夫?」


女の子はツクルに話しかける。


「はっ!?大丈夫君?」


ツクルは目を覚まし、大きなたんこぶを見せながら話しかける。


「いや、貴方こそ大丈夫…?なんか凄い大きいたんこぶが…」

「大丈夫大丈夫。それより…」


ツクルは振り返って大柄の男と下っ端を歌舞伎役者のように睨む。


「やいやいやい!女の子によってたかって〜…!乱暴しようとするなんざ〜…!あ!外道のする事だぜ〜?」


ツクルは歌舞伎でよく見るポーズを取りながら言う。


「…。」

「…。」

「…。」

「…。」


冷たい風が吹き、枯れ葉がパサパサとツクルの前を通る。


「…というわけでナンパなんかやめるんだ。この子嫌がってるじゃないか!」


ツクルは打って変わって普通の口調になり注意する。


「いやどういうわけ!?」


女の子はツッコみ、大柄の男達は依然ポカンとしていた。


「おい兄ちゃん、怪我したくねぇなら邪魔しないでくれねぇか?俺達はそこの嬢ちゃんが持ってるある玉が欲しいんだ。」

「玉?」

「だから…渡さないって言ってるでしょう!これは私の大切な物なの!」

「こっちも仕事なんだ。とっとと寄越せ。」

「玉…分かった!ここは代わりの玉を用意する!」


ツクルは何を思ったかズボンに手を置く。


「あ?」

「へ?」

「君!目を閉じるんだ!おいあんたら!俺の玉で…勘弁してくれやぁ!」


ツクルはズボンを下ろそうとする。


「待て待て待て待て!?落ち着けおい!?」


男達は慌てて止める。


「え?玉が欲しいんじゃないの?」

「お前の玉なんか要らねえよ!?俺達が欲しいのはそいつが持ってる勾玉!」

「はい?」


ツクルが女の子の方を見ると女の子は勾玉を持っていた。


「勾玉…」

「な、何をしようとしたのかは分かんないけど…これはとにかく渡さない!」

「だったら力ずくでも…!」

「ストップ!」


男達が襲いかかろうとするもツクルは女の子の前に立つ。


「貴方…!」

「やめるんだ!嫌がってるだろ!それに…ここは天国なのにそんな事してると地獄に落ちるぞ!」


ツクルはここが天国だと思っている。故に悪いことをすると地獄に落ちるぞと注意する。


「は?天国?」


男達はおろか、女の子もポカンとする。


「え?ここ天国でしょ?」

「何言ってんだ兄ちゃん?ここは天国じゃねえぞ?」

「えっ!?天国じゃないの!?だったらここ何処!?」


その時、ツクルの脳内に電撃が走る。


待てよ…?俺はトラックに轢かれたよな?本で見たことあるぞ…トラックに轢かれると極稀に異世界…つまり全く違う世界に転生する事があるって…


「ここもしかして…異世界?」


ツクルはここが自分の住んでいた世界とは違う異世界ということに気付く。


「ふっ…」


ツクルはニヤリと笑う。


「来な?」


ツクルはいきなり男達を挑発する。


「あ?んだテメェ…?さっきから人をおちょくりやがって…今度は挑発かぁ…?」


大柄の男はビキビキと頭に血管を浮かばせる。


何故いきなりツクルはこうも強気になったのか。その答えはこうだ。


ここは異世界…つまり俺は転生者…要するにチート能力を持ってるに決まってる!さあ!来るなら来い!チートで懲らしめてやる!


「おらぁ!」


次の瞬間、ツクルは殴られる。


「いだー!?」


ツクルは吹っ飛び、地面に頭から突き刺さる。


「いてて…」

「ふん!」


ツクルは何とか地面から抜け出すも大柄の男は今度は腹にパンチを入れる。


「ごほっ!?」


ツクルは膝をついてしまう。そして…こう思う。


あ、これチート能力持ってないパターンだ。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!どうか許してください!お願いします!」


先程までの威勢はどこへやら。無様に土下座をしながらツクルは謝る。


「いやさっきまでの自信は何だったの!?」

「だって…チートに目覚めてるって思ったから…」

「今さら謝ってもおせぇよ!」


大柄の男は女の子のツッコミに耳を貸さずツクルを蹴る。


「あだっ!?」


ツクルは転がり、落書き帳を置いた草むらに突っ込む。


「けっ!おいお前ら!」

「へい!」


下っ端の男達は女の子を持ち上げる。


「キャッ!?や、やめて!離さないとぶっ飛ばすわよ!」

「へっ。」


大柄の男は女の子から杖を奪い取る。


「あっ!?」

「これがなきゃ魔法は撃てねぇだろ?」

「くっ…!」

「おら!」


大柄の男は杖を折る。


「あっ!?」

「兄貴容赦ないっすね!」

「嬢ちゃんがいつまで経っても従わねぇからこうするんだよ。おい、勾玉を出せ!」

「っ…!嫌…絶対嫌!」

「はぁ〜…そうか…」


大柄の男は女の子に殴りかかろうとする。


「っ!」


女の子は目を瞑る。


「うん?」


その時、大柄の男は足に違和感を覚える。何かが自分の足を掴んでいる。そう思った大柄の男は足を見る。


「やめ…るん…だ…」


足を掴んでいたのはボロボロになったツクルだった。


「ちっ…邪魔だ。」


大柄の男はツクルから足を離し、蹴る。


「がっ!?っ!」


ツクルは尚も男の足を掴む。


「ちいっ…!邪魔だ!」


男は徐々に苛立ち、ツクルの頭を踏む。


「どいてろクソガキ!」


男はそのままツクルを蹴飛ばす。


「ごはっ!?…!うおー!」


ツクルはボロボロになりながらも立ち上がり、今度は腰を掴んで止めようとする。


「くっ…!?どけっつってんだろ!」


男はもう一度ツクルを蹴る。


「ぐっ!?たあっ!」


ツクルは再度腰を掴む。もう身体はボロボロだった。


「あ、貴方…!?」

「いい加減に…!」

「やめるんだ…!その子嫌がってるだろ!嫌がってる子を無理やり従わせようなんて…!クズがする事だ!俺より大人なのにそんな事も分かんないのか!」

「テメェ…!いい加減にしやが…!」

「俺は!困ってる人は見過ごせない!絶対にその子を助ける!」

「貴方…どうしてそこまで…!」

「いい加減にしろ!離せオラ!」


男はツクルを引き離そうとするもツクルはガッシリとしがみついていた。


「こいつ…!」

「ヤバい…そろそろ体力が…でも…負けるわけには…!止めないと…!」


ツクルは呟きながら男の腰を掴み続ける。


「絶対に…助ける!!」


その時だった。草むらから光が放たれる。


「あ?」

「え?」

「お?」


草むらから落書き帳が飛び出し、ツクルと男を引き離してツクルの手元にやって来る。


「これは…」


ツクルが落書き帳を取り、ページを開くとそこに描かれているモンスターやロボットが光っていた。


「みんな…俺に力を貸してくれるの…?」


光はさらに強くなる。


「な、何だってんだ!?」

「眩しい…!」

「はっ…!今のうちに!」


女の子は男達が光で目が眩んでいる隙に下っ端の男達から離れる。


「あっ!?」

「おい!何やってやがる!」


女の子はツクルの元に来る。


「くそ…!このー!」


大柄の男はツクル達に殴りかかろうとするも光はもっと強くなる。


「ううっ!?」

「呼べって言ってるんだね…!分かった!まずは…!ラッパこうもり!任せた!」


落書き帳から一つの光輝く玉が出て来て男達の周りを飛び回る。


「ツクルはん!待たせたな!」


光の玉は地面に落ちてまばゆい光を放つ。


「なっ!?」

「えっ…?」


女の子や男達は目を瞑る。光が収まってそこにいたのは…


「わい…参上!」


口がラッパ状になっているコウモリのモンスターだった。


「わ〜…!」

「嘘…!?」


ツクルは喜びの表情を見せるが女の子達は驚きの表情を見せる。無理もない。見たこともないモンスターが目の前にいるからだ。しかも、それは落書き帳から出て来た。


「な、何だテメェ!」


大柄の男は殴りかかるも、コウモリモンスターは空を飛んで避ける。


「わいはラッパこうもり!ツクルはんの一番の友達や!」


コウモリモンスターは名乗る。


「あぁ!?」

「どりゃー!」


ラッパこうもりは下っ端の男の一人に向かって急降下し、頭突きをする。


「あだっ!?」

「よいしょー!」


ラッパこうもりは続けてもう一人の下っ端の顔を小さい足で蹴る。


「ぐわっ!?」


小さいながらと言えど力は強いようで顔を蹴られた下っ端の男は悶絶する。


「お前ら!?クソ!この野郎!」


大柄の男はラッパこうもりを捕まえる。


「ぐっ!?」

「へへ…!捕まえたぜ…!」

「ほ〜。小柄なわいをこの大きい手で捕まえるとは、あんさん中々やりますな!」

「あ?」

「ほ〜らもっと掴んでみい?」


ラッパこうもりは褒めているようでクイックイッと首を右に振る。倒せるものなら倒してみろと言っているかのように。


「テメ…!覚悟しやがれ!」

「ツクルはん!お嬢ちゃん!耳塞ぐんや!」


大柄の男がラッパこうもりを握り潰そうとしたその時、ラッパこうもりは大きく息を吸う。


「ラッパ音波ー!」


次の瞬間、ラッパこうもりはラッパ状の口から凄まじい爆音を出す。


「ぐわぁぁぁ!?」

「ギャー!?」

「ひゃ〜!?」


男達はあまりのうるささに耐えきれずそのまま倒れて気絶する。


「いっちょ上がり!」


大柄な男の手からラッパこうもりは抜け出す。


「な、何今の…?」

「ラッパこうもり〜!」


耳を塞いでいたツクル達は何とか無事であり、ツクルはラッパこうもりに駆け寄る。


次回「異世界の基本は普通じゃない」に続く。

次回はツクルが異世界の基本を知る?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ