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産廃屋のおっさんの異世界奮戦記〜適当に異世界に召喚されたのに、世界を救えなんて無理ゲーじゃね?〜  作者: アズマユージ
開戦

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第95話 開戦〜中部人民共和国の密偵

スパイ物の映画って、昔から皆が憧れますが、実はスパイなんて、そんないいものじゃないらしいですね。

それよりも今日はいよいよワールドシリーズの最終戦!

エキサイティングな試合を期待しています!!

楽しみです!

私の名は、河馬島芳子カバシマヨシコ

珍王朝の王族の娘として生まれ、ジャポネ王国の河馬島家の養女となった。

男装を好み、軍服姿でいることの多かった彼女に付いたあだ名は、「男装の麗人」。

実のところ、ジャポネ王国と中部人民共和国の二重スパイだった。


情報戦において、最も危険な者は誰か?

敵の密偵か、味方の裏切り者か?

いや、それは、二重スパイだ。


二重スパイとは、表向きは一方に忠誠を誓いながら、

裏ではもう一方に情報を流す者。

だが、真に恐ろしいのは、その“裏”がどちらなのか、誰にも分からぬことだ。


彼らは、嘘を真実のように語り、真実を嘘のように隠す。

その言葉は、信じる者を欺き、疑う者を惑わせる。

そして、戦場の地図を塗り替えるのは、剣ではなく、彼らの囁きだ。

かつて、ある国では、二重スパイが一つの王朝を滅ぼした。

またある時代では、彼らの偽情報が、百万の兵を無駄に動かした。

彼らの忠誠は、言葉ではなく、行動で測られる。

そして、その傾きは移ろいやすいのだった。


小籠包国家主席と、趙有給副主席との密談の場において、河馬島は軍服に身を包み、両者の護衛として同席していた。

スケベ親父である小籠包主席は、河馬島のことをこよなく可愛がり、専属護衛としていついかなる場にも同席させた。

そして、必要に応じて、ジャポネ王国に派遣し、諜報活動を行わせていたのだった。


今回、他の人族国家に知られてはならない、魔王軍との水面下での接触についても、河馬島にその役割が振られることは間違いが無かった。

それを察した彼女は、主席の意図を察して、目を光らせたのだった。


その夜河馬島は、少数精鋭の部下を引き連れ、まずは魔王軍が占拠するションパイに向けて、旅だったのだった。


「やはり、勇者ユージは只者では無かったな。

魔王軍との睨み合いによる緊張が高まる中、中部人民共和国を見張れなどということを言い出した時には、とち狂ったかと思ったが、こういうことだったのか。

慧眼としか言いようが無いな。

恐るべし、勇者ユージ。

ぼんくらにしか見えない彼に、神楽耶さまが一目置かれておられる理由がこれか。

本当に底が知れないお方だ。」


そう独り言ちながら、ハミータは手にしたスマホでリシュンに連絡を入れた。


――戦場において、最も価値あるものは何か。

剣か、兵か、城か?

いや、それは“情報”だ。


かつての戦では、伝令が馬を駆け、狼煙が空を裂き、太鼓が命令を伝えた。

だが、それらは常に“遅れ”を孕んでいた。

一刻の遅れが、陣形を崩し、千の命を奪う。

もし、戦場のすべての兵が、指揮官の命令を“瞬時に”受け取れたなら?

もし、敵の動きが“その場で”共有され、包囲も伏兵も、即座に対応できたなら?

それは、戦の“神の視点”を得たに等しい。


スマートフォン――

それは、ただの道具ではない。

戦場においては、“情報の刃”であり、“混乱を制する鍵”である。


連絡手段が乏しい戦場において、

それが機能すれば、勝利はすでに半ば手中にある。


ハミータから連絡を受けたリシュンは、得意気に言った。


「リーダー、ビンゴだ!

小籠包が裏切った!」


それを聞いた俺は、ポテチを食べながら答えた。


「ふ~ん、そうなんだ。

やっぱりあいつ、信頼出来ないと思ってたんだよ。

なんか、くまのポーさんに似てるって言われてる割には可愛くないしさ。

あんなふてぶてしいポーさんは居ないよねぇ(笑)

せめて腹黒パンダとか言ってやったらいいんだよ!」


「なるほど、パンダ部隊か!

おいハミータ!

七変化のタレントを使って、パンダに化けて敵の密偵を殲滅してくれ!」


スマホでそう告げられたハミータは、少し嫌そうに言った。


「いや、殲滅はいいですけど、何故にパンダ?」


「いいんだ!

リーダーがパンダって言うからには、何か深い意味があるんだ!

とにかく、山中でパンダに襲われたっていう体にして、敵の密偵をションパイに入れないようにしてくれ!」


「はいはい、わかりましたよ。

しかし、私のタレントは、着ぐるみに化けるために使うようなものじゃないんですけどねぇ。

でもまあ、仕方ない。

おっしゃる通りにいたします。」


そう言ったハミータは、パンダに化けて山中で河馬島を待ち伏せたのだった。



その頃河馬島は、強行軍でションパイに向かって馬を走らせていた。

すると突然、高速で走る河馬島たち一行の前に、突然パンダが現れた。


それを見た河馬島は、馬から降りて、そのパンダに見入った後で、頬を染めながら言った。


「か、かわいい!

ジャポネ王国では、中部人民共和国からレンタルされたパンダを遠くから眺めるのが精いっぱいだったのに、今、私の目の前に、リアルパンダがいる!

さ、触りたい!」


「河馬島さま!危険です!そいつから離れてください!」


そう言う部下の制止の言葉も耳に入らないほど、河馬島は興奮していた。

そして、道端に生えていた笹の葉を引きちぎって、パンダに差し出しながら、近づいて行った。


「パンダちゃん!こわくありませんよ!おねえちゃんがごはんあげましょうね!」


その様子をちょこんと座りながら見ていた熊は、不思議そうに首を傾げた。


「うわっ!何あの仕草!もう、可愛い死ぬぅ!」


河馬島は、完全に我を忘れていた。

二重スパイを卒なくこなし、幾度となく死地を切り抜けてきていた彼女は、一切の死角が無いと言われていた。

ところが、そんな彼女の唯一の弱点が、パンダだったのだ。


丸い耳、ころんとした体、竹をかじる仕草。

動物園で見るパンダは、とても愛らしい。

人はそれを“癒し”と呼び、世界はそれを“平和の象徴”と讃えた。

だが、忘れてはならない。

パンダは、熊である。

その顎は、竹を砕くだけでなく、骨をも砕く力を持ち、

その爪は、木を登るためだけでなく、敵を裂くためにも使われる。

野生のパンダは、縄張りを守り、侵入者には容赦なく牙を剥く。

その白黒の毛皮は、森の中では“警戒色”とも言われる。

愛らしさは仮面に過ぎず、その奥にあるのは、数百万年の進化が刻んだ“獣の本能”だ。


増してや、河馬島の前に佇むそのパンダは、月影の庵旅団の秘密兵器、カセーフ・ハミータが七変化で化けている刺客なのだ。

その前で無防備な姿を晒してしまった河馬島は、自分が殺されたことも自覚しないまま、ハミータの猫パンチ一発で絶命したのだった。


こうして、中部人民共和国と魔王軍との接触は避けられたのだった。


さあ、内部の裏切りを阻止したタスクフォースの、次なる手は?



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こんにちは、作者のアズマユージです!

『産廃屋のおっさんの異世界奮戦記』を読んでくださりありがとうございます!

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