第90話 開戦~二人の軍師
やっぱり何事も上手く行った時ほど、振り返りが必要なんだと思います。
勝って兜の緒を締めよとは良く言ったものです。
開戦初日は、連合軍の見事なカウンターにより、魔王軍は撤退を余儀なくされた。
連合軍の幹部たちは、ベースキャンプで反省会と今後の方針についての戦略会議をしていた。
「しかしリシュン、ホントお前ってスゴイな!
良く敵の動きがわかったな。
やっぱ天才だな!」
俺からそう褒められたリシュンは、こそばゆそうに答えた。
「いや、それもこれもアルノルトから提供された、魔王軍の情報のお陰さ。
奴らの幹部の顔ぶれ、性格、過去の戦略などのデータを、AGIで解析させたら、いくつかの可能性に絞られたんだ。
俺は、その可能性の高い順から、戦略を用意しただけさ。」
「いや、それでもスゴいよ!
良く正面攻撃なんて奇策への対策なんて考え付いたな。」
「まあ、後付けの解説にはなるんだが、敵将ロクローマルの正確は、はっきり言って脳筋。
真っ向勝負を好むから、正面突破は当然あり得る。」
「なるほど。
しかし、意外に敵の軍勢が少なかったじゃないか。
仮に、総攻撃を食らっていたら、今回のカウンターで防ぎきれるか微妙なところじゃなかったか?」
しかしリシュンは、少し得意気に言った。
「敵には、軍師サムがいる。
奴のこれまでの作戦は、完全に勝率重視だ。
つまり、徹底的に論理的に動くんだ。」
「そりゃやっかいだな。
しかし、そんな奴がいるのに、正面攻撃で撃退されるなんて、なんか不自然じゃないか?」
「そうだな。
軍師サムなら、こんな作戦は採用しないはずだ。」
「じゃあ、何故?」
「そこは、理論と感情は違うってことさ。
恐らく、ロクローマルも理屈では軍師サムの作戦の方が勝率が高いとわかっているはずだ。
でもなリーダー、人の感情って奴は、理屈じゃ割り切れない部分があるんだ。」
「ん?
基本的に、人は理性に従って生きて、行動するんじゃないのか?」
「いや、逆だよ。
人は感情に従って動いて、理屈は後付けっていうのが、この世の常だ。
例えば、いくつかの選択肢があった場合、まずは一番選びたい選択肢を選ぶ。
ただ、それだけでは不安だから、その選択肢を選んだ理由を、後付けで考えて、自分を納得させるんだ。」
「具体的に言ってくれ」
「そうだな。
リーダーにでも分かりやすいように、身近な事例でわかりやすく説明するとだな。」
「おい!
なんか今、俺の事強烈にディスっただろ!
俺は、お前の言ってることは完全に理解しているけど、ここにいる全員が理解できるように話してやってくれっていう意味で言ったんだぞ!」
それを聞いたリシュンは、苦笑いしながら言った。
「いやもうその発言が後付けだろ?
言い換えると、人ってのは、常に自分の行動や発言が正しかったと言い訳するために、自己正当化を図る生き物なんだ。
考え無しにポロッと言ってしまったこととか、つい無意識にやってしまったこととかも、一生懸命正当化するんだ。
まあ、具体的に言うとだな、リーダーがナーチャンに恋愛感情を抱いたとしよう。」
俺は即座に言った。
「それは無い。」
ボカッ!バスッ!ズドン!
俺はナーチャンからの奇襲にあって床に這いつくばった。
「待て待て待て!
なんでそうなる?
暴力反対!」
氷のような表情で、ファイティングポーズを取りながら、ナーチャンが言った。
「なぜ、無いのですか?」
低く小さな声だったが、その迫力たるや、魔王をも凌ぐものが感じられた。
背後に鬼夜叉の面が浮かび上がっているような錯覚を覚え、生命の危機を感じさせるオーラを放っていた。
それを見た俺は、咄嗟に言った。
「いや違うんだ!
恋愛ってのは、両者の相手への好意が一致してこそ成立するんだろ?
確かにナーチャンはめちゃくちゃ美人で有能で、俺には無くてはならない女性だけど、逆に俺とは釣り合わないんだ!
俺みたいな薄汚れた中年オヤジが、ナーチャンみたいな魅力的な女性に恋愛感情なんて持ったら、それはもう犯罪だよ!
だから即答で無いって言ったんだよ!
わかってくれるよね?
暴力反対。。。」
それを聞いていたリシュンは、二人の間に入り、説明した。
「ほらな!
今、リーダーは本能からナーチャンに対する恋愛を秒で否定したよな?
間違いなくその時点では、理論的な検討は一切していない、感情から出た言葉だったんだ。
ところがその後、さっきの自分の発言を正当化すべく、理論武装を試みた。
例えそれが胡散臭い言い訳だったとしても、一応理屈が通るような言い訳を考える。
それが、人なんだ。」
「胡散臭くねーし!
本心だし!」
俺はこれ以上の攻撃を避けるべく、必死で訴えた。
「まあ、そういうことにしておいてあげましょう。
しかし、次はありませんから、心しておいてください。
人の気も知らないで、調子よくおちゃらけないでください。」
ん?最後の方がちょっと聞き取れなかったけど、これ以上殴られないならまあいいや。
「わかったよ。
つまり、人はまずは感情で動きやすいものだってことだな。」
「そうだ。
だから、敵将の正確や過去の動向を分析することは、非常に重要になるんだ。
今までのコンピューターでは、理論的な解析は出来ても、感情のゆらぎを取り込んだ予測は出来なかった。
そして、それを可能にしたのが、俺が開発したAGIなんだ。
この技術と、アルノルトの知識・戦闘経験を掛け合わせると、魔王軍の戦術の予想が立てられるって訳さ。」
それを聞いたアルノルトも、満足気に頷きながら言った。
「その通り。
私が、過去魔王軍との戦いで得た知見と、リシュン殿のAGIをもってすれば、敵の動きなど、手に取るように分かる。
ただ、人の感情は移ろいやすいもの。
したがって、不確定要素もあるので、確率が高い順に10の仮定を置いて、その対策を練っておいたという訳さ。」
「なるほど!
つまりはめちゃくちゃスゴイってことだな!」
俺は、単純化して理解した。
それを見たリシュンは、こう付け加えた。
「まあ、あくまで確率の問題だ。
ただな、敵には軍師サムがいる。
彼は、非常に論理的ではあるが、軍師としての才能は極めて高いと聞いている。
このまま、俺たちの思い通りに行くかどうかは、まだわからないぜ。
と言うか、恐らくだが、ロクローマルの暴走も、彼の想定する可能性の中に入っていたに違いない。
そして、それを踏まえた次の作戦を展開して来ると思っておいた方がいい。」
アルノルトも続けて言った。
「奴には、過去何度も煮え湯を飲まされているからな。
今回もまだまだ油断は禁物だ。」
そして、戦略会議は続き、開戦初日の夜は更けて行ったのだった。
さあ、その頃軍師サムはどんなことを考えて、どう動いていたのか?
次回はそこんとこを書いていきたいと思います。
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