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産廃屋のおっさんの異世界奮戦記〜適当に異世界に召喚されたのに、世界を救えなんて無理ゲーじゃね?〜  作者: アズマユージ
魔王軍

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第86話 魔王軍~軍師サムの作戦

少し間が空きましたが、このへんで物語の本筋にを再開します!

果たして、魔王軍の作戦は上手くいくのか?

魔王アサダの裁可が下り、宰相ゲユタカ・マツシが檄を飛ばしたことで、魔王軍の本拠地は一気に臨戦態勢へと移行した。玉座の間から、場所は作戦司令室へと移る。部屋の中央には、大陸の広大な立体地図が置かれ、各国の勢力圏が色分けされて光っている。


魔王軍の最高幹部である四天王のうち、二人が既に待機していた。

一人は、全身が鋼のような筋肉で覆われた巨漢、豪将ロクローマル。純粋な武力と突進力においては、四天王最強と謳われる猛者である。

もう一人は、影のように気配を消し、しなやかな身体を漆黒の装束に包んだ女性、疾風のハチオ。隠密行動と電撃戦を得意とする、魔王直属の暗殺部隊の長だ。


豪将ロクローマルが、不満げに太い腕を組みながら口を開いた。

「軍師殿。ジャポネ王国と月影の庵とかいう小癪な連中が手を組んだというなら、奴らの本拠地に真正面から攻め込むのが筋だろう。なぜ、他の列強国などという、いわば“雑魚”から狙うのだ?回りくどいことこの上ない。」


ロクローマルの疑問は、力こそを是とする彼らしい、実直なものだった。

軍師サムは、彼の意見を否定することなく、静かに頷いた。


「豪将ロクローマルよ。そなたの言うことも一理ある。だが、正面から殴り合えば、たとえ勝利しても我らの損害も甚大なものとなるでしょう。今の我々に必要なのは、体力勝負の消耗戦ではなく、最小限の力で最大限の成果を上げる、効率的な戦いです。」


サムは伸縮指示棒を伸ばし、立体地図の一点を指し示した。そこは、ジャポネ王国とは海を隔てた反対側に位置する、中部人民共和国の領土だった。


「最初の標的は、ここ中部人民共和国。先の戦争でジャポネ王国に敗北し、軍の再編に追われている国です。彼らは今、国境線に沿った塹壕と城壁の強化という、典型的な防衛戦略に固執している。つまり、国土の内側はがら空きだ。」


隣で静かに聞いていた疾風のハチオが、初めて口を開いた。

「……して、我らの役目は?」


サムは、ハチオの鋭い瞳を見て、満足げに口の端を上げた。

「疾風のハチオ。そなたの部隊には、中部人民共和国の主要港湾都市ションパイを、内側から奇襲・占拠してもらう。ションパイは彼らの物流の心臓部。ここを落とせば、前線の防衛網は機能不全に陥るでしょう。」


「なるほど。兵糧攻めと内乱を同時に引き起こすという訳か。悪くない。」

ハチオは短く応えると、再び沈黙した。


ロクローマルはまだ納得いかないという顔をしていたが、魔王の決定である以上、黙って聞いている。


「ロクローマルよ、そなたの出番はその後だ。混乱した中部人民共和国軍が港湾都市ションパイの奪還に兵を向けたところを、手薄になった国境の城塞群ごと、その剛腕で粉砕してもらう。いわば、あなたは本命。最高の舞台をご用意いたしますよ。」


「ふん、まあ、俺の力を見せつける場があるのなら、文句はない。」

おだてられたロクローマルは、まんざらでもない様子で口元を緩めた。


かくして、軍師サムの描いた壮大な侵攻作戦の幕が上がった。

だがしかし、作者はここでまた少し不安になる。

「言うは易く行うは難し」とは、まさにこのことだ。

どんなに優れた作戦も、実行する部隊の練度、兵站ロジスティクスの維持、そして何よりも現場指揮官の判断力が伴わなければ、絵に描いた餅に終わる。

現代のビジネスにおいても、華々しい事業計画を打ち立てたものの、現場のオペレーションが追いつかず、顧客からのクレームが殺到し、ブランドイメージを著しく毀損する企業は後を絶たない。完璧なレシピがあっても、腕の悪い料理人が作れば、とんでもない料理が出来上がるのと同じ理屈だ。

軍師サムの計画は完璧に見える。だが、ハチオの部隊は本当に敵の警戒網を突破できるのか?ロクローマルは、功を焦って突出することはないか?そして、敵がこちらの予想を上回る一手――例えば、ジャポネ王国が即座に援軍を派遣するような“常識外”の行動――に出た場合、どう対応するのか。

本当の戦いは、ここから始まるのだ。


作戦司令室を出たサムの元に、魔王アサダが歩み寄った。

彼女は、先ほどまでの威厳のある表情を和らげ、どこか個人的な信頼を込めた眼差しでサムを見ている。


「軍師サム。見事な作戦でした。皆の士気も上がったようですね。」


「はっ。全ては魔王様の大願を成就するために。」


「うふふ、あなたはいつもそうですね。……ですが、決して無理はしないでください。あなたを失うことは、この魔王国の全てを失うことに等しいのですから。」


それは、君主が臣下にかける言葉としては、あまりに率直で、人間的な響きを持っていた。

軍師サムは、一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの冷静さを取り戻し、深く、深く頭を垂れるのだった。


「……御意。このサム・ハヤシオ、魔王様とこの国に我が身の全てを捧げる所存です。」


かくして、魔王軍は静かに、しかし迅速に動き始めた。

その最初の刃が、まだ見ぬ平和を謳歌する中部人民共和国に向けられていることを、人族の誰も知る由もなかった。

次回は、軍司サムの葛藤を描きます。

乞うご期待!



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