第82話 魔王軍~魔王アサダ
対魔王軍同盟が結成されたその時、魔王軍の内部では一体何が?
ジャポネ王国と月影の庵旅団との対魔王軍同盟の調印式が華やかに執り行われていた時、魔王軍の本拠地では、魔王アサダとその側近との戦略会議が行われていた。
宰相のゲユタカ・マツシは、その瘦身の長躯をピンと伸ばして、魔王に相対して言った。
「魔王様、どうやら月影の庵旅団が、ジャポネ王国のタスクフォースと手を組んだ模様です。」
「そのようですね。
ただでさえ手を焼いていた月影の庵旅団と、最近の活躍が目覚ましいタスクフォースが力を合わせて来るとすると、かなりやっかいな事態ですね。
ゲユタカ、この後の展開をどう読みますか?」
ゲユタカは、我が意を得たりという表情をして、隣に控えるサム・ハヤシオに向かって言った。
「魔王国の誇る、軍師サムよ。
そなたの意見を述べるが良い。」
サムは、片膝をつき、頭を下げながら言った。
「かしこまりました。それでは、私の方からご説明差し上げます。」
その様子を見て、魔王アサダは優しい微笑みを浮かべてサムに言った。
彼女が魔王となったのは、まだ10代の半ばだった。
当時は、その天性の絶対的な実力と、愛らしい外見から、魔王国のマスコット的な存在として、皆の支持を集めたのだった。
そんな彼女も、既に30代の半ばとなった。
だがしかし、その魅力は一切衰えておらず、決して美人ではないものの、成熟した美しさと気品を兼ね備えた女性に成長していた。
「軍師サムよ。そうかしこまらなくても良いのですよ。
面を上げて、私の目を見て説明してくださいな。」
「ははっ!恐れ多くも有難きお言葉、痛み入ります。
では、このホワイトボードの前でご説明いたします。」
そう言って立ち上がったサムは、愛用の伸縮指示棒を伸ばして、ホワイトボードの前で説明を始めた。
「こちらに示しておりますのは、この星の地図にございます。
ご存じの通り、人族の支配するエリアは、全体の約4分の1。
対して、彼らが魔境と呼んでいる、我々が支配するエリアが、残り4分の3となっております。」
「はい。確かに、広さで言えば、我が魔王国の領地が圧倒的と言えますね。」
「おっしゃる通りにございます。
ですが、我が魔王国領には、魔獣が巣食う魔素密度の高いエリアが多く存在しており、利用価値のある土地は、わずか2割に過ぎません。」
「確かに、ただ広大なだけでは、領地を保有していても、あまり意味はありませんね。」
「そうなんです!
ですので、我々がまず行わなければならないことは、列強各国の領土を侵食していくことなのです。」
「なるほどですね。
しかし、月影の庵旅団が邪魔をして、なかなか成果が上がらなかったのではないですか?」
サムは、その面長ではっきりとした骨格に、鋭い眼差しをニヤリとさせつつ、特徴的な口元を少しすぼめながら言った。
「確かにそうでした。
ですが、列強各国は、先の戦争でジャポネ王国に完膚なきまでにやられております。
そして、国内の大改革を行っているところでして、従来のような無謀な戦略は取り辛い状況となっています。
つまり、常識的な戦いを行って来るでしょうし、軍備に偏った資源配分は行って来ないものと思われます。」
少し思案顔をしていた魔王アサダは、うんうんと頷きながら、
「なるほど、月影の庵旅団を攻略するのではなく、まずは搦め手からという訳ですね。
では、そのタイミングは?」
そう言われた軍師サムは、どや顔で即答した。
「今でしょ!」
あまりにベタな展開と、予想通りのセリフに、書いている作者の方が恥ずかしくなるが、まあ、これは正論だ。
時に独裁国家の専制君主による後先を考えない作戦は、功を奏すことがある。
常識的な判断ではありえない一手が、国の将来の布石となることもあり得るということだ。
逆に、常識的な手を打ち続けていると、考えられないような成長や大成功は、なかなか得られない。
つまり、鉄板レースの一番人気にばかり賭けていても、競馬で儲けることは出来ないが、大穴が当たれば、元手が100倍にも1000倍にもなる可能性がある。
ただし、無謀な賭けとも言える行為を、会社の社運を賭けて行うためには、合議制は都合が悪い。
部下に相談している体を取りながらも、反論を許さない圧倒的な支配者が必要となる。
もちろん、賭けに成功する確率は低い。
渋い声の白い犬に象徴される日本屈指の企業グループも、日本の情報通信インフラを飛躍的に進歩させるべく、無謀な賭けと思われる、モデムの無料配布などの施策が奏功したことにより、急成長を遂げたのだ。
国内有数のECサイトを展開する企業にしても、当時無謀と言われたクレジットカード事業への参入が紆余曲折のうえ成功し、ECサイトと金融の戦略的連携が実現したことが、急成長の源となっている。
もっとも、携帯電話事業への参入は、巨額の初期投資の負担や、通信品質などの問題から、なかなか軌道に乗らず、グループ全体の足枷となった苦しんでいるようだが、もしかしたら数年後には化けるかもしれないし、企業の屋台骨を揺るがすことになるかもしれない。
賭けとはそういうものだ。
話が横道に逸れたが、魔王アサダは、軍師サムに対して絶対的な信頼を置いており、今回もその意見を採用することとなった。
宰相のゲユタカは、その強面を崩さずに皆に告げた。
「それでは皆の者。軍師サムの指示に従って、戦闘の準備を始めよ!」
戦争とは、正義と正義のぶつかり合い。
魔王軍には、どんな正義が?
そして結局のところ、人は戦争から解放されないのか?
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