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産廃屋のおっさんの異世界奮戦記〜適当に異世界に召喚されたのに、世界を救えなんて無理ゲーじゃね?〜  作者: アズマユージ
魔境攻略計画

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第72話 魔境攻略計画~月影の庵旅団の正体

さらに新キャラ、カセーフ・ハミータが登場しました!

「では、語ろうぞ。我が旅団“月影の庵”の真の目的をな。」


神楽耶が焚き火の前で杯を掲げると、ナーチャンが用意した酒が月光に照らされ、ほのかに緑色に輝いた。


「我らの使命は、ただ食材を探して食うことにあらず。魔境に蔓延る“廃棄物の呪い”を浄化し、資源循環の理を取り戻すことにある。」


「廃棄物の呪いって……なんだよそれ。魔境ってゴミ屋敷なのか?」


「まさにその通りじゃ。かつて魔王が“使い捨て文化”を広めたことで、魔境は不要物で溢れ、自然の力が衰えた。今や、ワイバーンの巣すらプラスチック片で埋まっておる。」


「いや、ワイバーンがプラゴミの上で寝てるって……それ、環境破壊の末路じゃん!」


アルノルトが試験管を取り出しながら、真顔で言った。


「実際、魔境の土壌汚染は深刻だ。この“酵素抽出液”は、廃棄された魔獣の内臓から再利用したものだが、分解能力は高い。君の焼き技術と合わせれば、廃棄物すら食材に変えられる可能性がある。」


「いや、食材って……それ、食っていいやつなのか?!」


神楽耶が肉を頬張りながら、満足げに言った。


「そなたの焼いたワイバーン肉は、廃棄部位を活用した“再生料理”じゃ。骨の髄まで旨味を引き出すその技、まさに“資源活用の勇者”の資格ありじゃ!」


「いや、勝手に勇者認定すんな!俺はただ、ありあわせの調味料で焼いてただけだ!」


ナーチャンが静かに杯を置き、神楽耶に向き直った。


「つまり、あなた方は料理を通じて、廃棄物の再利用と環境回復を目指している……そういう理解でよろしいですか?」


「うむ。わらわの父上も、かつて“廃材ラーメン”で魔王軍の胃袋を掴み、使い捨て文化に一石を投じた。その店の看板は、魔境のゴミ山から拾った冷蔵庫の扉だったそうじゃ。」


「いや、看板が冷蔵庫ってどういうセンスだよ!」


アルノルトが頷きながら言った。


「ちなみに、魔境の“月光塩”は、廃棄された魔法装置の結晶から精製される。資源の再活用こそ、我々の研究の核心だ。」


そう言えば、日本の昔ながらの鉱山も、鉱石の枯渇と採算の悪化、煙害による環境問題の深刻化等の諸問題から、昭和とともに閉山し、いまや都市鉱山と呼ばれる廃棄物を製錬して金属を抽出しているらしい。

そんなことを思い出しながら、ユージは独り言ちた。


「……なんか、急にSDGsっぽくなってきたな。」


それを聞いた神楽耶が、ニヤリと笑った。


「そなたの腕があれば、廃棄物すら宝となる。さあ、ユージよ。わらわと共に来るがよい。“循環の理”を取り戻す旅へ!」


「いや、ちょっと待て!俺、ただの焼き肉好きなおっさんなんだけど!」


「その情熱こそ、資源活用の証じゃ!」


「いや、だから勝手に環境活動家にすんな!まあ、確かに元産廃屋ではあるけど」


ナーチャンがため息をつきながら、焚き火に新たな薪──廃材の椅子の脚──をくべた。


「……仕方ありませんね。リーダーが行くなら、私も同行します。廃棄物の分別ができるか不安ですし。」


「いや、俺そんなに分別下手じゃないから!」


「まあ、それよりもです。まだはっきりしないのは、何故、月影の庵旅団が、魔境を拠点としているのか、そして、魔王軍との力関係はどうなっているのか、ということです。


神楽耶は、少し俯きながら、溜息をついて言った。


「そうじゃの。まあ、そういう疑問は持たれるわな。

わかった。

恥を忍んで、話すとするかの。」


それを聞いたアルノルトは、少し驚いた顔で言った。


「姫、良いのですか?

我らの弱点を晒すことになりかねませんぞ。」


「良いのじゃ。

隠し事をしながら、同盟を組もうなどという方が厚かましいわい。」


すると、ユージたちの野営地の脇の叢あたりから、音も無く人影が現れた。

それを見た神楽耶は、その人影に向かって言った。


「おう、ハミータ!おぬしもおったのじゃな。

では、おぬしから皆に説明してくりゃれ。」


そう言われて現れたのは、割烹着を着た中年女性だった。


「御意にございます。

まずは、自己紹介から。

ワタクシは、カセーフ・ハミータと申します。

月影の庵旅団の諜報活動を一手に担わせております。

人畜無害な人物を装って、敵の懐深くに潜入し、重要情報を収集することを生業とする者でございます。」


「なるほど!それでそんな、普通のおばちゃんみたいな恰好をしてるんだな!

それにしてもお前、なんかどっかで見たことあるような、無いような。。。

昔、テレビに出てなかった?」


そう言う俺に向かって、ハミータは冷たく言い放った。


「人違いです。」


「ホント?なんか、2時間ドラマなんかで見たような気がするんだけどなぁ。」


「人違いです。

そもそも、ワタクシは第三者の記憶に残るようなヘマは致しません。」


取り付く島もない。

しかしやっぱり見たことあるような気がするんだけど、まあいいか。


「どうでも良い話は放っておいて、ワタクシから月影の庵旅団の経緯と現状について説明しましょう。」


ハミータから聞いた話は、少ながらずショッキングなものだった。



次回は、月影の庵旅団の謎に迫るお話です!

乞うご期待!

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