第69話 魔境攻略計画~魔獣の後処理
戦い終わって、残るは事後処理。
夢とファンタジーの裏には、廃棄物処理があるというのが現実ですね。
魔導洗車、ママチャリーンの外では、魔獣解体用ロボットであるタイソン君1号~10号が、食用部分を除く素材を採取していた。
それを見ながら、ナーチャンが言った。
「しかし、本当にこのワイバーンは巨大ですね。
通常個体の2倍、いえ、3倍はあるんじゃないでしょうか。
やはり魔素が異常に増えている影響何でしょうね。」
「なるほど、普通のワイバーンはもっとちっちゃいんだ。
初めて見たから、これが普通サイズかと思ったけど、やっぱりデカいよな?
でもさ、ラノベとかだとさ、魔獣って、やっつけたらドロップアイテムを落として消えちゃうんじゃないの?
なんかこいつ、ばっちり残ってるし、なんかその、結構生々しいし、ファンタジー感に欠けるって言うか、なんと言うか。」
それを聞いたサトータは、得意気に話しだした。
「リーダー、それはご都合主義過ぎますよ!
アイテムだけゲットして、あとは勝手に廃棄するだなんて、ある訳無いじゃないですか。
生産活動の裏には、廃棄物処理がある。
これは、世界の真理です。
ワイバーンも、可食部に加えて、素材として使える部位を採取したら、残りは廃棄物です。
しっかり処理しなければ、腐敗して悪臭を放ち、魔素の発生源になって人間生活を脅かします。
なので、戦闘に勝つことも、もちろん重要ですが、その後の廃棄物処理も、同じぐらい重要なのですよ。で、ござる。」
「いやもう、突っ込まないけどさ、その取ってつけたようなござる言葉。
なるほどねぇ。
例え異世界でも、戦って勝って終わりって訳じゃないんだな、やっぱり。
ちょっと現実を見ちゃうと、夢と希望が色あせちゃうかも。
まあ、千葉にあっても東京と言い張る、夢とファンタジーのテーマパークだって、営業時間外には産廃業者の廃棄物収集車がゴミを集めにやって来るって話だしな。」
それを聞いたリシュンが、言った。
「そりゃそうだぜ、リーダー。
でもな、だからこその、廃棄物処理ロボット『タイソン君』が役に立つんだぜ!
我ながらではあるが、奴らは優秀だ。
利用可能部位と廃棄部位をしっかり見極めたうえで、廃棄物処理がやりやすいように、廃棄部位を加工するんだ。
例えば、処理方法別に廃棄物を選別した上で、長さを50センチ以下に切断して、焼却がしやすいようにするとか、バイオマス処理がしやすいように、ミンチ上に破砕するとか、埋め立て用に圧縮処理をしてキューブ状に固めるとか、様々な作業を、効率良くやってくれるんだ。
そして、王国の施設に連絡をして、処理後の廃棄物を収集運搬する手はずまで整える。
決して不法投棄をして環境に悪影響を与えないようにする、優れものだ。」
「なるほどねえ。さすがリシュンだな!」
俺は素直に感心して言った。
そう言えば、日本でも農林水産省が『移動式レンダリング装置』という機械を持っていて、狂牛病(BSE)や口蹄疫、豚熱といった家畜伝染病が発生した際に、感染が確認された家畜やその疑いのある家畜を迅速かつ安全に処分するために使っていると聞いたことがある。
この機械は、殺処分された家畜の死体をその場で破砕し、高温で加熱処理することで、病原体を不活化させると同時に、体積を大幅に減容することができる優れものだ。
簡単に言うと、殺処分した現場にやって来て、ミンチにして、ハンバーグにするってことだ。
ちょっとタイソン君に似ているな。
「それはそうと、魔獣1体を倒したら、必ずこうやって足止めをくらうってこと?
なんか、効率悪くない?
大群で襲って来られたらどうしたらいいの?」
リシュンは苦笑しながら言った。
「まあ、最悪はママチャリーンに搭載した、魔導火炎砲で焼き払えばいいんだが、それはあくまで最後の手段だ。
やはり、素材は最大限活用しないと、環境に良くないからな。
まあでも、先を急ぐ時は、タイソン君を数台置いて行けば、勝手に処理してから追いかけて来てくれるから、大抵の場合は大丈夫だ。」
「そうなんだ。良く考えてるな。
まあ、俺としては、美味い肉が食えて、素材が金になったら、何でもいいんだけどな。
でもやっぱり、産廃屋としては、しっかり廃棄物を処理してくれるのは、嬉しいな。」
気が付けば、そこにワイバーンの死体が横たわっていたことが信じられないほど、何も無くなっていた。
「それでは、先を急ぎます。
皆さん、配置についてください。」
ナーチャンの指示を受けて、俺はふかふかソファーに座って、コーラを手に取った。
ビールを飲みたいところだったが、また怒られるので、我慢した。
ちなみに、俺はアルコール中毒ではないので、別に昼間から酒を飲まないと手が震えるなんてことは無いが、やはり日の高いうちに飲む酒は格別なんだよな。
ちょっとした背徳感というか、ちょい悪行為による軽い興奮というか、他の人が働いている時に酒を飲むという行為に対する優越感というか、そんな感じで気持ちがいい。
そんなことを考えていたら、ナーチャンが皆に言った。
「今日はこのへんで野営します。
本日は、お疲れ様でした。
食事の用意をしますので、しばらくお待ちください。」
なるほど!キャンプみたいでテンション上がるな!
「それは楽しみだな!
しかし、野営中に魔獣に襲われたりしないの?
夜中に目が覚めたら、下半身が無くなってたとか、嫌だからね!」
「ご安心ください。
リシュンさんの魔導戦車の索敵能力は極めて高いので、不意打ちをされる可能性はありません。
それよりも、ユージさまがワタクシたちに夜這いをかけたりした場合には、下半身が無くなるので、ご注意ください。」
「おいっ!
お前ら人を何だと思ってるんだ!」
「「「エロおやじ」」」
涙目になった俺は、
「チクショー!」
と言いながら、走り去ったのだった。
アウトドアって、なんであんなにワクワクするんでしょうね。
私はソロキャンプは嗜みませんが、バーベキューは大好きです!
さて、次回は野営キャンプでの出来事になる予定です!




