第64話(第1部完) エピローグ
事態は解決したかと思いきや、そう簡単には行かないみたいです。
この星の環境は、タスクフォースの施策を世界規模で展開することで、劇的な改善を遂げた。
はずだった。
しかしながら、魔素の数値は改善せず、逆に悪化の一途を辿っていた。
魔素とは、環境に対し悪影響を与える因子であり、温室効果ガス以上に温暖化に影響を与える要素だ。
従来魔素は、ダンジョン内でしか発生せず、適切なダンジョン管理をしていれば、コントロール可能な物質だと考えられていた。
唯一、ダンジョン外に持ち出すことが可能な魔素を帯びた物質は、魔導石であった。
魔導発電施設において使われていた魔導石も、ダンジョン内で討伐した魔獣からドロップしたもので、ダンジョン管理局によって厳格に管理されていた。
それ以外のダンジョン産素材についても、一義的にダンジョン管理局が一括買取を行い、闇ルートには流れない仕組みが構築されていた。
したがって、世の中にダンジョン管理局が把握していない魔導石は、存在していないはずであった。
ところがである。
魔素の数値が異常値を示していたのである。
当然、ダンジョン管理局は、その持てる力を総動員して、原因究明に奔走していた。
しかしながら、魔導石の管理は厳格に行われており、未管理の魔導石が流出した形跡は全く見つからなかった。
その時、ダンジョン管理局のVIPルームでは、局長以下の管理職が参集していた。
禿頭で筋骨隆々、まるでプロレスラーのような大男が、額に青筋を立てながら、目をつぶりながら腕を組んでいた。
彼こそがダンジョン管理局局長の、ハルクだ。
彼は、低く響く声で言った。
「つまり、我々が把握している魔導石からではなく、いずこから魔素が放出されていると?」
管理局の事務方のエースである、カズレーダが言った。
「その魔力の発生源は、おそらく未開拓地区だと思われます。」
ハルクは、さらに表情を厳しくして言った。
「未開拓地区だと?
あそこは、人が立ち入ることの出来る地域では無いだろう?
そんなところから魔素が放出されているだと?」
カズレーダは、苦渋の表情を浮かべながら言った。
「その通りです。
しかも、その放出量は甚大。
人類がいかに環境改善策を施そうとも、追いつかないほどの影響力で、星の環境を悪化させています。
つまり、世界政府を樹立し、人類の生産活動を制御しても、この魔素放出活動を解決しなければ、この星は近い将来滅びてしまうということです。
至急、なんらかの対応を取らなければなりません。」
ハルクは、そう言うカズレーダに向かって怒鳴りつけた。
「なんらかの策って何だ?
一体どんな手があるって言うんだ?
具体的な策も無いのに、適当なことを言うな!」
しかしカズレーダは、気丈にも言い返した。
「私たちでは、具体的な対策は思いつきません。
しかし、こういった実現不可能と思われる課題を、次々と解決して来たチームを、この国は保有しています。」
ハルクは少し冷静になって言った。
「もしや、タスクフォースか?」
カズレーダは、わが意を得たりと言わんばかりの表情で言った。
「その通りです。
今まで、数多くの明確な危機に対し、まったく怯むことなく立ち向かって行った英雄たちです。
そして、彼らが動いた時、実現不可能な課題は実現可能な課題へと瞬時に変化します。
彼らの辞書に、不可能の3文字はありません。
彼らが動けば、必ず事態は改善し、より良い方向に向かうことでしょう。」
それを聞いたハルクは、腕を組みながら言った。
「しかしな。
勇者ユージ殿は、高位貴族だぞ。
そこらへんの酔っ払いオヤジとは違うんだぞ!
どうやって彼の耳にこの窮地を届けて、力を借りる依頼をするのだ?」
カズレーダは、その神経質ながら整った顔に微笑を浮かべ、眼鏡を少し引き上げながら言った。
「彼の行動は、ある程度把握しています。
先の大戦以来、彼は繁華街のキャバクラに足繫く通っています。
ちなみに、彼のお気に入りのキャバ嬢は、我がダンジョン管理局の潜入捜査員です。
彼は、彼女にメロメロで、いつでもコンタクトを取ることが可能です。
いかがですか?」
ハルクは、若干引きながら言った。
「この国の英雄で、高位貴族だぞ?
お前が行くような、場末のキャバクラになんか、本当に来るのか?
逆に国王が送り込んだ、そっくりさんじゃないのかね?」
それに対し、自信満々にカズレーダが言った。
「いえ、彼は本物です。
彼がドンペリを開けて、支払額が足りなかった時に、私が少し立て替えてやったことがあります。」
「なんだと?
彼は空前絶後の希代の勇者であり、この国を救った救国の英雄ではないのか?
まあ、英雄色を好むとの言葉もあるが、それにしても高級娼婦だって彼なら頼み放題だろう?
なぜそれが、場末のキャバクラなんだ?」
カズレーダは、得意気に言った。
「どうも、勇者さまは、こちらの世界に来る前に、ああいった場末のキャバクラに通ってたらしく、郷愁を刺激されるそうです。
俺も、勇者さまの接待には交際費使い放題と言われているので、気が大きくなって結構飲み食いしましたが、それもこれも情報収集のため。
勇者様の愚痴はすべて記憶しております。」
「ではカズレーダ、遠慮はいらん。
お前が入手した勇者ユージの行動パターンと、彼を篭絡するための策があればそれを、この場で皆に説明してみせよ。」
そしてユージは、また新たな問題に巻き込まれることになるのだった。
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こんにちは、作者のアズマユージです!
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思いつくままに書き綴って来ましたが、とりあえず今回をもって一段落です。
少し構想を練ってから、第二部をボチボチ書いていきたいと思いますので、今後も宜しくお願いします!




