第62話 資源循環が可能な社会へ~リーダーの帰還
ついに、ユージたちの改革が世界を駆け巡った。
タスクを完遂したタスクフォースは解散してしまうのか?
ユージの去就はいかに?
戦後処理については、ジャポネ王国の圧倒的勝利、列強各国の無条件降伏という結果から、タスクフォース案の全面的採用という結果に終わった。
一応、交渉の体を取ったものの、他に有効な対案があるはずもなく、実際には議論の余地は無かったのだった。
そして程なくして、ジャポネ王国は世界連邦国家成立を宣言し、世界統一は果たされた。
世界各国において、ジャポネ王国で既に実施された大改革が実行され、この星の様相は一変した。
すなわち、現状人類が取り得る最高の効率性を実現し、徹底的な無駄の排除を行った。
人々の生活スタイル、働き方は、先祖返りした。
すなわち、夜明けとともに活動を開始し、日の入りとともに家路に着いた。
夜の酒場は、管理された数件に限定され、ネオンも消えた。
これにより、夜間電力使用量が激減し、総電力需要も従来の30%まで減少した。
ロジスティクスについても効率化が進み、車両の通行量は半減。
公共交通機関の最適化と需要を正確に予測した乗り合いタクシーの配置により、マイカーも激減。
人間一人を移動させるために、5人乗りの車を稼働させるといった非効率極まりない行為は、徹底的に排除された。
つまり、タスクフォースが描いた、理想の社会像が実現したのであった。
「いやあ、なんか知らないけど、上手く行ったんじゃない?
さすがに今度こそ、タスクフォースは解散して、俺も元居た世界に戻れるよね?
だって、なんたって世界征服して、この星を救っちゃったんだもんね!
我ながら、すごい成果だな!
まあ、俺はなんにもしてないけどね、あははっ!!
タスクフォースのみんな、今まで本当にご苦労さま!
これにて、わたくし、アズマユージは、帰還します!
アズマ、行きます!」
いてっ!
なんかナーチャンに思いっきり蹴られた。。。
「いや、なんで蹴るの?ちょっとおかしくない?
ホント暴力反対だよ!」
そう、キツめの言葉でナーチャンに向かって文句を言った俺は、いつもと違うナーチャンの様子に、ハッと息を飲んだ。
ナーチャンは、いつもの冷静沈着は表情ではなく、今にも泣き出しそうに顔をこわばらせて、上目遣いに俺を睨んだその目尻には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「ユージさま。あなたはどうしてそんなに元の世界に戻りたがるのですか?」
俺は困惑しながら答えた。
「どうしてって言われても。
だってさ、あのパワハラ王女に勝手に無理やり勘違いでこんな危険なところに召喚されてさ。
はっきり言って大迷惑なんだよ。
俺だって、元居た世界に未練はあるし、平凡ながらもささやかな喜びもあったし、愛着もあるんだよ。
だから、俺が俺のいるべき世界に戻りたいと思うのは、当然のことだと思うんだけど?」
ナーチャンはさらに口元を引き攣らせながら言った。
「ユージさまは、この世界でのワタクシたちとの繋がり、絆はまったくの無駄だったとおっしゃるのですか?
ワタクシが、いかに献身的にユージさまをサポートして来たのか、もうお忘れですか?
ユージさまというリーダーあってのタスクフォースなんですよ!
それを、まるでもうラフランス、ではなくて用無しのような言い方で蔑ろにされるとは。
納得行きません!」
強い口調でそう言ったナーチャンは、しばらく俯いてから、少し小さな声で言った。
「何より、ワタクシの気持ちはどうなさるおつもりですか?
確かに、最初はユージさまのことは義務的にお世話しておりました。
無責任でいい加減で、自己中で下品で、がさつで自分勝手なおっさんだと、心の底から思っていました。」
「おい!いくら何でもそりゃ言い過ぎだろ!」
さすがの俺も、そう次々と本当のことを言われると腹が立つ。
しかしナーチャンは、俺の抗議など、完全シカトして続けた。
「しかし、いままでユージさまのお傍で、そのご活躍ぶりを体感してきて、ワタクシの気持ちは180度変わってしまいました。
なんだかんだ文句を言いながらも、最終的には仲間と、そしてこの国を大切に思うユージさま。
無能でやる気が無いフリをしながらも、最低限かつ核心を突いたつぶやきで、皆を導くその聡明さ。
それでいて、成果を部下に譲り、自分は何もしていないと言い張るその謙虚さ。
一緒にいればいる程、ユージさまの偉大さに日々感銘を受け、ワタクシは心を奪われました。
もう、ユージさまのいない世界など、ワタクシには耐えられません。
どうか、元の世界に戻るなどと、冷たいことをおっしゃらずに、これからもワタクシ達のリーダーとして、タスクフォースの面々を導いて行ってくださいませ!」
両の掌を顔の前で組み、祈るような姿勢で、そう訴えかけるナーチャンに、図らずも俺は、うるっと来てしまった。
これが噂に聞く、ツンデレってやつだよね!
そうだよね!
いや、初めて見たわぁ。こりゃ感動だわ!
そして、気を良くした俺は、右手で前髪を書き上げながら、少し斜め目線でナーチャンに向かって言った。
「君の気持ちは、良くわかった。
まあ、良く考えたら、俺は元の世界では、空気みたいに薄い存在だったしな。
女房にも逃げられて、狭いアパート暮らし。
老後の生活も不安だし、そこまで言われたら、こっちに残ってもいいかもな。
まあ、ナーチャンがそこまで言うんだったら、考え直そっかな!
でもさ、ナーチャンがいけないんだぞ!
そんなに俺のことが好きなら、ちゃんとわかりやすく言ってくれなきゃ。
普段、ローキックばっかり飛んで来るから、ラブビームが飛んで来てるのに気づかなかったよ!」
そう言って、俺は下手なウインクをナーチャンに送った。
ナーチャンの表情が少し曇ったことに、舞い上がっていた俺はまったく気づかなかった。
「チョロいな。」
「チョロいですね。」
「チョロすぎるでござる。」
「チョロ過ぎるぜ、リーダー!」
かくして、ユージはこの世界に残ることになったのだった。
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こんにちは、作者のアズマユージです!
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とりあえず、ユージはこの世界に残ることになりました。
さて、次回は何故ナーチャンがユージに心を打ち明けたのか?
という謎が明らかになります!




