第61話 資源循環が可能な社会へ~世界統一への道は険しい
戦闘では負けても、敗戦処理をいかに自国に有利に行うか。
その気持ちはわかりますが、やはり立場的には苦しいんでしょうね。
「AIの有効性については、既に実証されていることであり、わが国も異論をはさむところではありません。
だがしかし、いまだ検証期間が短すぎ、結論を急ぐべきでは無いというのが、忌憚のない見解です。」
「わが国においても、拙速なシフトチェンジを懸念する声が多数上がっております。」
「しかし、現状踏襲では、この星は滅びを待つしか無いということは明白という事実からは目を背けることは出来ないのでは?
懸念点が多々あることは認識しています。
しかし、我々の進むべき道は、限られています。
あれこれ試行錯誤している時間が無いことは、ここにいる各国の皆さんの共通認識だということで良いですよね?」
「確かに、それはそうだが、かと言って拙速は不味いでしょう。
我々の判断が、この星の未来を左右するのです。
慎重にならざるを得ませんよ。」
「高度なAIによる民意の収集と分析の有用性については、我々も異論を差しはさむところではありません。
しかし、国民全員にとって望ましいAIの存在は、逆に危うさを孕んでいるのでは?
仮に、そのAIが国民にとって快適で望ましいものであればある程、逆に人との接触を忌避する人々が増える可能性についても、検証が必要では?
すなわち、国民の大半が引きこもりになるリスクについても、その対策も含め検討しなければ、それこそ少子高齢化に拍車をかけることにもなりかねない。」
「先進国と発展途上国とでは、事情も異なり、貴国における実証実験をそのまま踏襲することは出来ないのでは?」
各国実務部隊の要人会議は、白熱していた。
戦勝国であるジャポネ王国が、場を仕切ってはいるものの、各国の足並みを揃えることは、一筋縄ではいかなかった。
立場が強いとはいえ、すべての国が納得できる施策を展開しなければ、おのずと反乱分子を多く生んでしまう。
そうなると、どれだけ利のある改革であっても、理屈で割り切れない感情の部分を刺激してしまい、上手くいかなくなるのだ。
とりあえず、会議はいったんお開きとなり、指摘された課題については、次回までに持ち帰り検討するということになったのだった。
しかし、こういった会議における真の戦いは、議事録の作成にある。
実際の会議の場における発言は、わりとファジーだ。
「例のあれだけどさ、前にいってたやつな。
なんかいいやり方みたいだから、他にたいした案が無かったら、
それで行こうや。」
「ああ、あれな。
まあ、それでもいいが、他にやり方は無いんだったっけか?」
「無いから言っとったんじゃん!お前も他に案が無いなら、それでええじゃろ?」
といった会話が、議事録ではこうなる。
「以前、わが国が提案していた、戦略案Aについては、周知の通りだ。
他に有効な対策が無い以上、選択の余地は無いと思うが、貴国の判断はいかに?」
「戦略案Aについては、我々も認識している。
だがしかし、他に有効な対策が無いか否かについては、十分な検証がなされたとは言い難いと判断する。
いましばらく時間をかけて、他の選択肢についても検討をすすめる方が賢明ではないのか?」
「そうは言うが、我々の参謀本部が、知識と技術の粋を集めて検討した結果なのだ。
我々の有能さについては、先の戦闘において十分ご認識頂いたと考えているのだが、違ったかな?
その上で、他に有効な選択肢は無いというのが、わが国の結論だ。
もし貴国側で、より効果的な対策案を模索したと言うのであれば、それをこの場でご提示頂きたい。
仮にそれが出来ないと言うのであれば、我々の案、すなわち戦略案Aの実施を前提に、今後協議を行っていくことを、この場の結論としたいが、いかがか?」
なんか、しょぼいジジイの井戸端会議が、エリート同志の国を背負った交渉事に早変わりだ。
そして、議事録を作る権利を誰が持つかが、さらに重要になる。
自国に不利な表現は、発言内容を捻じ曲げてまで修正をごり押しするのが常であるが、最終的に文章を校正するのは、議事録を作成した事務局だ。
のらりくらりを交わしながら、最終稿にしてしまう。
そして、残るのは、実際にジジイどもがどんなショボい発言をしたかでは無い。
議事録に記載された通りの、その会議で語られたという内容とその結果である。
ちなみに、この事務方同志のせめぎあいをAIが代替するようになれば、形だけの大臣を会議に出席させることは出来なくなる。
つまり、派閥の力や年功序列ではなく、実力のある人材を、適材適所で配置しなければ、国は亡びるということだ。
その点でも、AIによって引き起こされた革命は、圧倒的なゲームチェンジだった。
確かに、あまりにも好都合で快適なAIは、人間のコミュニケーションスキルを低下させるという懸念もある。
シンギュラリティを超えたAIが、人間を滅ぼすといった、SF映画にありがちな設定も、あり得ないとは言えない。
しかし、リシュンの開発したAIは、そういった懸念をすべて払拭しており、人類の未来への道標となり得るテクノロジーなのだ。
「これを普及させて、この星を救わないとな。」
俺は誰にともなくそう呟いたのだった。
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なんか、ユージが恰好いい気がしますが、気のせいです、たぶん。




