第60話 資源循環が可能な社会へ~そして、時は来た
いよいよ開戦です!
リシュンの最新兵器は上手く稼働するのか?
緊迫のシーンの始まりです!
タスクフォース専用ミーティングルームの中、メンバー全員は緊張に身を固くしていた。
そして突然、室内の照明が赤に切り替わる。
「作戦発令。零時ノ刻、始動」
ミーティングルーム内にに響く電子音。
ユージは、無言で作戦書に目を落とす。
その背後で、ナーチャンはヘッドセットを装着し、深く息を吸ってから言った。
「奇襲作戦、準備完了。
指向性EMP兵器の一斉照射のための、エネルギー充填100パーセント。」
それを聞いた俺は言った。
「まだだ。」
ナーチャンが続けて言う。
「エネルギー充填110%。
発射可能です!」
「まだだ。」
「ユージさま、あまり充填し過ぎると、暴発のリスクがあります!
大丈夫でしょうか?」
俺は、目をつむって静かに言う。
「リシュンは、120%までは保証出来ると言った。
彼を信じよう。」
モニターが赤色点滅に変わり、ナーチャンは続けて行った。
「エネルギー充填120%!」
それを待っていた俺は、強い口調で言った。」
「全砲一斉射撃!てっ!」
リシュンが開発した、指向性EMP兵器が、一斉に火を噴いた。
対EMS仕様の兵器も、これにはなすすべが無かった。
電子機器のサポートの無い兵器は、すべてまったく使い物にならなくなった。
携帯電話はすべて圏外となり、軍用の専用電話回線すら、まったく使い物にならなかった。
同時に、リシュンが仕込んでいたサイバー部隊が、各国の政府・軍部・通信インフラをターゲットに一斉に攻撃を開始した。
無益な殺傷を嫌うユージの依頼により、ライフラインについては最低限の稼働を確保するように設定されていた。
ただし、映像も、音声も、メールも役に立たない。
すげてのコンピューターが、稼働を停止した。
データベースにアクセス出来ない。
つまり、指令室に情報が全く入って来ない。
情報戦こそが最大の戦略である、近現代の戦争において、これは致命的な状況だった。
列強各国の軍部は、まさに大混乱に陥った。
レーダーすら使えず、索敵が出来ない。
目に見える敵を攻撃しようにも、その手段である近代兵器が壊滅的。
ロジスティクスも崩壊。
情報伝達を行うためには、伝令兵を走らせるぐらいしか出来ない。
つまり、完全に各部隊が孤立してしまったのだ。
撤退の指令すら届かない。
幼少期から現代文明の利器にどっぷりはまった連中が、いきなり中世ヨーロッパレベルの文明に先祖返りしたようなものだ。
乗馬の訓練すらしていない歩兵たちは、尻尾を巻いて逃げ出すことしか出来なかった。
「逃走兵は深追いするな!
しかし、歯向かって来る奴らは容赦するな!
俺たちは圧倒的有利な状況にある!
功を焦って無駄死にするなよ!」
俺は、前線で戦う兵士たちに向かって、声を掛け続けた。
結果は、過去に類を見ないほどの圧勝だった。
ほぼ、戦闘らしい戦闘は行われず、敵兵は壊滅的な撤退を強いられた。
ナーチャンが、手元の資料を見ながら報告してきた。
「我が国の圧勝です。
列強各国は、なすすべなく撤退して行きました。
我が国の人的被害は、わずか数十名。
また、敵国の人的被害も僅少です。
リーダーの思惑通りです。
そろそろ、敵国首脳とのホットラインを再開し、戦後処理のフェーズに入りますか?」
俺は、大きく頷きながら言った。
「うん、そうだね。それでお願い。」
「了解しました。少々お待ちください。
リシュンさん、お願いします。
マイヤン、待機して頂いている国王に、席に着くよう依頼してください。」
リシュンはサムズアップしながら言った。
「わかったぜ。40秒だけ待ってくれ。
各国とのホットラインのみ復旧させる。」
マイヤンも、上品に微笑みながら言った。
「国王はすでにスタンバイしていますよ。
いつでもどうぞ。」
そして、ホットラインは復旧した。
回線が安定し、各国首脳の顔がモニターに映し出された。
その表情は、敗北の色を隠しきれず、沈痛な面持ちで画面越しにこちらを見つめていた。
トクガワ十九世は、ゆっくりと立ち上がり、背筋を伸ばして言葉を発した。
「余は、ジャポネ王国国王、トクガワ十九世である。
此度の無謀なる侵攻、誠に遺憾である。
されど、余は復讐を望まぬ。余が望むは、秩序と未来である。」
一瞬、沈黙が支配した。
その静寂を破ったのは、ユージの低い声だった。
「各国首脳に告ぐ。
我々は、戦闘による勝利ではなく、情報による制圧を選んだ。
それは、無益な殺傷を避けるための選択だった。
だが、次はない。
この作戦は、あくまで警告である。」
ナーチャンが、冷静に続けた。
「現在、各国の主要インフラは最低限の稼働を維持しています。
医療、食料、水、電力。
しかし、通信と軍事は完全に遮断されています。
この状態が続けば、貴国の民は混乱に陥るでしょう。
それを望むか否かは、貴殿らの選択に委ねます。」
モニター越しに、西側大国大統領が口を開いた。
「……我々は、事態の深刻さを理解した。
ジャポネ王国の技術力と戦略に、敬意を表する。
即時停戦を申し出たい。」
続いて、各国首脳が次々に同調の意を示した。
トクガワ十九世は、静かに頷いた。
「よろしい。
余は、貴殿らの民を苦しめることを望まぬ。
ただし、余の国に牙を剥いた罪は、忘れぬ。
多額の賠償金を請求させてもらうことを覚悟して頂きたい。
そして今後、国際秩序の再構築において、その中心はジャポネ王国となる。
それを受け入れるか否かは、貴殿らの覚悟次第である。」
リシュンが、端末を操作しながら言った。
「ホットライン、外交チャンネル、すべて安定。
交渉フェーズ、開始可能です。」
マイヤンが、国王に向かって一礼した。
「陛下、交渉の場は整いました。
どうか、未来を導いてください。」
トクガワ十九世は、ゆっくりと玉座に腰を下ろし、言った。
「余は、剣を収める。
されど、盾を捨てはせぬ。
多額の賠償金を請求させてもらうことを覚悟して頂きたい。
そして今後、国際秩序の再構築において、その中心はジャポネ王国となる。
それを受け入れるか否かは、貴殿らの覚悟次第である。」
この時、世界は大きく動いた。
各国首脳は、無条件降伏を余儀なくされた。
まさに、ゲームチェンジと言って良い圧倒的な成果だった。
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こんにちは、作者のアズマユージです!
『産廃屋のおっさんの異世界奮戦記』を読んでくださりありがとうございます!
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今後も、異世界×環境問題×おっさんの奮闘を描いていきますので、よろしくお願いします!
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圧勝でしたね!
まさに戦争の形が変わる一戦でした。
この後、フェーズは、戦後処理に移ります。
いよいよ、タスクフォースが星全体の環境改善に取り組みます!




