第56話 資源循環が可能な社会へ~戦わずして勝つ
リシュンのテクノロジーは、どこまで進化していくのか?
そして、テクノロジーだけで、この事態を乗り切ることが出来るのか?
緊張は高まります!
時は春秋時代、紀元前5世紀頃に、中国の斉国出身で、呉王・闔閭に仕えた軍略家、孫武という偉人がいた。
彼は、中国古代の兵法書『孫子兵法』の著者とされ、またの名を孫子と呼ばれている。
彼の兵法は、戦略重視で力よりも知略で勝つことを重んじ、情報収集や心理戦を好み、個人よりも組織論を重要視するといった特徴を持つ。
そのため、彼の思想は、時の武将や経営者にもいまだに愛読され、現代のビジネス書としても定番の地位を保っている。
孫子の兵法としては、「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」というフレーズが有名であるが、これはまさに、情報収集の大切さを謳ったものだ。
そして、
「百戦百勝は善の善なる者に非ず。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」
というフレーズも有名だ。
つまり、こういうことだ。
何度も戦って勝つことは素晴らしいが、それでも損害は避けられない。
したがって、最も優れた戦略は、戦うことなく敵を屈服させることである。
つまり、力による勝利ではなく、知略・情報・心理戦による勝利が最も望ましいということだ。
今回のリシュンの戦略は、まさにそれに沿ったものだ。
そもそも、力対力で圧倒的に不利な状況であるため、他に選択肢は無いのだが、神風を信じて無謀にも列強各国に力勝負を挑むといった、過去の小国の過ちを繰り返さないためには、力の差を覆す戦略が必要になる。
「でもさ、西・北・中と、3つの大国が揃って攻めて来るんだよね?」
俺のつぶやきを聞いたナーチャンは、難しそうな顔で言った。
「おっしゃる通りです。
さすがのリシュンも、今回ばかりは荷が重いと言わざるを得ません。
彼我の戦力の差は、歴然ですからね。」
それを聞いた俺は、
「毎年、夏になると放送されるアニメ見たことある?
鼻血出して、よろしくお願いしまーす!っていうやつね!
でもってあのアニメの中でさ、圧倒的不利な状況で勝利したご先祖様の話があるじゃない?
あれって、本当のことなの?」
博識なナーチャンは、即座に答えた。
「あー、それですね。
ワタクシも好きで、よく見ます。
確かに、あのアニメにもAIが出てきますが、あれはまあ、フィクションですね。
ただ、その昔、ジャポネ王国が小領主である真田虫家を7000の軍勢で討伐に向かったところ、真田虫家は、わずか1000~2000名の兵力でジャポネ軍を撃退したという史実があります。
その際、ジャポネ王国トクガワ軍は、なんと1300名もの死者を出して敗退。
一方、真田虫家はわずか40名程度の犠牲しか出さなかったとのことです。
まさに、真田虫家の軍略によって、戦わずして勝つを実現した事例と言えましょう。」
なんか、ナーチャンって、歴女なの?
やけに生き生きして話すし、なんなら少し鼻息荒いし…。
ちょっと引きながら、俺は言った。
「ふーん、そうなんだ。
じゃあさ、リシュンもそんな感じで戦わずして勝つ作戦を考えてくれているのかな?」
ナーチャンは、少し考えながら言った。
「いえ、恐らくリシュンさんは、新しい兵器の開発に夢中になっているだけで、あまりそういう戦略的なことは考えていらっしゃらないかと。」
それを聞いた俺は言った。
「ダメじゃん!
これだから頭でっかちとイケメンはダメなんだよ。
女なんて向こうから寄って来るなんて、思いこんじゃってるんだよ。
俺たち普通の男は、苦労して頑張って見え張って、やっと女性とお近づきになる機会をゲットして、それでもなかなかうまくいかないのにさ。
あいつらイケメン連中は、そんな苦労をしたことも無いし、する必要も無いって、心の底から思ってるんだ。
ホント、腹が立つ連中だ。
あんな奴らは、インキンになって水虫になって、口が臭くなったらいいんだ。
マジでそのくらいしないと割に合わないよ!」
興奮して盛り上がった俺に、ナーチャンは言った。
「モテない男の愚痴はそのくらいで結構ですので、話を本題に戻しましょう。
リシュンさんは、基本的に技術者ですから、兵器の開発や情報収集については、比類ない才能をお持ちです。
ただし、それをどう活用するか、については、ワタクシのタレントの出番かと存じます。
つきましては、ワタクシの方で段取りを組んで、今後の方針を纏めますので、少々お時間を頂戴できればと存じます。」
そう言って、去って行こうとしながら、ナーチャンは止まって振り返って言った。
「確かに、リシュンさんはイケメンで魅力的な男性ですが、女性が男性に好意を持つ理由は、それだけでは無いんですよ。
世の中の女性全員が、イケメン好きかと言うと、そうではありません。
そうしないと、種の保存が出来ないという切実な事情もあるのかもしれませんが、蓼食う虫も好き好きという言葉もございます。
ユージさまのように、蓼みたいに苦い方に対しても、魅力を感じる女性は、きっといるんじゃないかと思いますよ。」
そう言い捨てて、ナーチャンは足早に行ってしまった。
後に残された俺は、
「なんだったんだ、今の?」
と言って、周りを見たが、全員から生暖かい視線を送られて、何も言ってはもらえなかったのだった。
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